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白い蜘蛛と赤目の鬼  作者: 木丘柊遠
序章~白髪美人は半人半蜘蛛~
2/12

二章~強くなるため~

あらすじ

白髪美人さん、現る。

     1

見知らぬ天井。けど何故か安心感がある。

ふかふかのベッドは、私を心地よい眠りに付かせていた。

その近くの床でただ毛布にくるんで寝ている黒髪で、左目が赤い少年、白石陽さんは、未だに起きる気配はない。

起こさないように降りてきたあと、柊さんに話を聞いたら、陽さんは朝がとても苦手らしい。

その数分後、陽さんはリビングにやってきていた。

「……おはよう」

「おはようございます」

「おはよ。」

挨拶を交わしたあと、朝食を取った。

「では、なぜ、私がここへ来たのか、それをお話していきますね」

陽さんも、柊さんも真剣な表情になっていた。

     2

――私が住んでいる世界、通称・竜妖人界は、まだ人しか住んでいない遠い昔に、ある科学者が「魔力」を発見した。

科学技術とは違い、環境問題を起こす物質を排出しない、なのに無限に得られる、夢のような物質。

魔力技術はものの1年で、科学技術と肩を並べ、また一年で科学技術を凌駕するまでに成長した。

人は、このまま魔力技術に支えられて生きていく。誰もがそう確信していた。夢のような力で夢のように生きていく。

――しかし、現実は非情で、冷酷で、夢を見た人をただ絶望へと落としていった。

魔力が発見されて3年で、二つの超大国が無くなる。そんな事態が起きてしまった。

科学技術は有限で、環境に悪影響を与えるのと一緒で、魔力技術にも代償はあったのだ。

「魔物」。竜妖人界共通の敵。魔力の残滓から生まれた魔力の塊。

魔物は理性を持たず、ただそこにいただけで襲われる。超大国は、魔物によって無くなった。

そのまま、ほとんどの国はなくなっていき、残ったのはたった3国。未だに魔物の驚異は去るどころか、日に日に増大していく一方だった。

     3

「――そこで私は、次元を超えて戦える人を探し、竜妖人界へ誘って、魔物の驚異をある程度退けよう!と考えているのです!」

要はすごい技術を発見したけどとんでもない代償があるからそれをある程度無くすことができる人を探している。ということになる。

「質問だ。国がなくなったところはどうなった?あと、国がなくなったのだから、難民とかの問題はあったのか?」柊が即座に質問した。

「国がなくなったところは集落が点在している程度になっています。難民などについてですが、ほとんどの人が魔物に襲われて、亡くなっています。」リリィは、あっさりと答えた。

「魔物は戦う力を持っています。人間も対抗して戦う力を作りました。しかし圧倒的に人間は遅かった。真っ向から対抗できるようになった時には、残った国は三つだけになっていました。」

それでも人は生きている。行き場のない世界ではない。戦う力を作り上げるのが遅くても戦って、居場所を勝ち取った人間は、生きているのだ。そう感じるリリィの目には、しっかりとした確信があった。

「それで、本題は?」俺が問いかけた直後、リリィは立ち上がった。

「白石陽さん、橘井柊さん、竜妖人界へ来ていただけませんか?」はっきりとした声で、リリィは告げた。

  ◆      ◆       ◆

「正直、ここへ来た時、落胆していました。魔力の気配が非常に薄く、ほぼないに等しい世界ですから。ですが、陽さん、柊さんはそんな世界では非常に珍しい『魔力持ち』なのです!」

「「魔力持ち?俺らが?」」二人そろって声を上げた。

「ええ。人にはない力があるって気づいていませんか?」柊ははっとしたように目を開いた。

「柊さんは、すごくわかりやすかったです。柊さんには木属性の魔力を持っています。植物の魔力とほぼ同じ感覚の魔力を持っていますから、木属性とすぐわかるんです。」

「……なるほど。じゃあ俺が植物と会話できるのも、その木属性の魔力が元なのか?」

「察しがいいですね。その通りです。魔力が薄い世界だと魔力は発現しやすいのです。柊さんは『異種族対話』という能力で、その中でも、『植物対話』として現れました。」

「――じゃあ、俺は?」そう問うとリリィは目を輝かせて告げた。

「陽さんは、竜妖人界でも非常に珍しい『竜の三力』を持っています!『竜の三力』とは、『視る』力、『込める』力、『貫く』力の三つに分けられます。基本的にこの三つが同時に発現する可能性は非常に低いですが、陽さんはそのすべてが発現しているんです!」

「それって俺がこの世界に生まれている方がおかしいんじゃないのか?」そこまで強い力を持っているのならば、その考え方になるのは当然だろう。

「確かに、生まれている方がおかしいのでは、というのはあながち間違いではないと思います。しかし、先ほど言った通り、魔力が多い世界だと、能力が発現しにくいらしいのです。なので、もしかすると、ここに生まれたからこそ、発現したという可能性がありますね。」

「そちらも気になるが、『竜の三力』についても気になる。詳細な情報はあるのか?」柊は能力について気になるらしい。

「『竜の三力』は、前述の通り、『視る』、『込める』、『貫く』という三つに分かれます。『視る』力は、弱点や動き方が目で見えるようになり、『込める』力は単純に脚力が上昇し、『貫く』力は突くという行動に対しての正確性が極端にまで上昇します。個々の能力は少し弱そうですが、三つ合わさると異常な強さになります。」

「弱点を視、しっかりと踏み込み、その弱点に正確に突きを入れる。確かに恐ろしい能力だな。だが、なんで『竜の三力』持ちってわかったんだ?」

「『視る』力は、発現中目が紅く光ります。陽さんの左眼が常に少し紅いのは力が制御できていないからです。私が初めて陽さんとあった、というか陽さんを見つけた時、左目が強い紅色になっていました。しかし、既に紅が定着している、そう見えるのもあり、もう眼の色は治らないでしょう。」

「……そうか。とくにこの眼を嫌うことはないな。この眼は『俺』である証拠でもある。」……この眼のおかげで、助けられたこともある。俺にはこの眼を、「竜の『視る』力」を嫌う理由はない。

「なあ、もし竜妖人界に行けば、俺らは異世界人となる。俺が読んだ本の中には『異世界人は丁重に扱われる』という場面はよくある。この場合、俺らは賓客とはならないのか?」柊は少し警戒した口調で告げた。

「そうですね。仮に異世界人だと話せば、珍しい顔で見られたりする可能性は高いです。しかし、こちらでの『日本人』はあちらにも存在します。なので、異世界人と滑らさない限り、丁重な扱いや、珍しい目で見られることはないでしょうね。」リリィはまた、あっさりと告げた。

「……柊、俺は竜妖人界に行く。」俺は告げた。はっきりと。

「そうか。何か理由でもあるのか?」柊は優しい声で語りかける。

「ああ。リリィさん、俺が竜妖人界に行けば、強くなれるのか?」それだけが気がかりだった。

「リリィでいいですよ。もちろん、あなたの能力があれば、それを活用することによって、確実に強くなれます。」

     4

陽は確信した目をしていた。願いを叶えられる。約束を果たせる。そう感じさせる、漆黒の眼。

俺は、こいつと長年共にいて、分かることがある。

――あいつは、決して木偶の坊なんかではない。あいつは、人ができないことを平然とやるのだから、木偶の坊ではない。強い個性を持っているだけなのだ。

俺は、陽と共にいて、あいつを支えてやりたい、そう考えていた。

「なあ、柊はどうするんだ?行くのか?」

「ああ、行くよ。俺だって強くなりたい。あいつらを守りたいから。」そう言ってプランターの方を見る。

(気にしなくていいのに)(けど、そんな柊の言葉は嬉しい)(けど、ここからいなくなる。寂しい)(寂しい、けど柊が決めた道。止める気はない)

まったく、お前らは……。だけど、そんなお前らがいてくれて、楽しかったよ。

「さて、柊さんも陽さんも行くって決まったので、早速行きましょう!……と言いたいのですが。」少し、冷や汗のようなものが見える。

(なにか焦っている)(なにか失敗でもしたのかな?)

「実は、空間転移魔法には、略式と正式というものがありまして、正式ならば、すぐにその穴に向かって行けば、大丈夫なんですが……略式でやってしまいまして」

察した。陽も察した。

「もしかしてだが、略式魔法は一方通行とか、か?」

「ええ。しかもここは魔力が希薄なので、その上、荷物を運ぶことを想定して確実に正式でやらなければいけないので、魔力を貯めるには、大体1ヶ月程度かかりますね。」

わかった。リリィは残念美人だ。

「なんで二人共哀れみの目で見ているんですか!?なんで陽さんは目をそらしているんですか!?私は近接戦闘を主軸に戦うので魔法を使うのはほとんどしないので――」

リリィの必死の言い訳は、俺らの耳に届くことはなかった。

このお話は世界観についてのお話です。

また、柊視点での()ないのセリフは植物のセリフです。

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