三章~蟷螂と灼星~
いやあ、ですね?アハハハハ……
日が経った朝、俺たちと蜘蛛族の屈強な戦士らしい人たちは広場に集まった。
「皆さん、作戦決行の時間です。生きて帰ってきてください。最優先事項です。無事に帰ってくること、そしてまたみんなで笑顔で暮らしていくのですよ。」
蜘蛛族の人たちは歓声を上げる。リリィの人望の厚さが伺える一面を見た。
すぐに三日分の食料を持ち、それぞれの方角へ向かっていった。
「さて、陽さん、柊さん、咲奈ちゃん。私たちは作戦通り蟷螂が多いとされる南方へ向かいますよ。」
俺たちも三日分の食料を持ち、広場から南へ向かった。
作戦は、それぞれ北方、西方、東方、南方に分かれて魔物を殲滅していくとのことだ。
酷い負傷者が出次第撤退、食料が尽きたら撤退、殲滅し終えたら撤退。三つを守れ。ということらしい。
蟷螂型と呼ばれる魔物軍は糸を切り、協力の要を断ちながら戦うので、天敵とされている。
そんなことをリリィから聞きながら、俺たちは森の深部につく。
南方には森を貫く街道が走っており、その街道から砂漠地帯――「死の砂漠」からに最も近い地域。
そこには、人の丈の5倍もあろうかという、蟷螂がいた。
その下には人の丈の二倍ほどの、色鮮やかな蟷螂群。
「なるほど。人造ですか……鬱陶しいですね。」
「人造……」リリィの言葉に、俺の心に炎が灯る。
炎……焔……いや、これはそんな生温いものではないな……。
爆発、爆炎、こんなものを人間が作ったというのか。
俺はひたすらに怒りを燃やし、エネルギーとする。
「……陽さん……」リリィの声が聞こえるが、俺の心の少し先で砕ける。
左目の赤は紅くなり、緋色となり、友を赤く染めた時のように、目が何かで覆われる。
そして、右目も赤くなる。
有無も言わず俺は走り出した。
そしてそのまま最大火力を打ち込む。
魔力そのものを、叩き込む。
蜘蛛族の大きな建物で読んだ本にはこう書いてあった。
「一般人が持つ魔力をそのままエネルギーとして変換したとき、そのエネルギーは核に匹敵する。」
その爆発力をそのまま叩き込む。
そうすれば一撃て粉微塵にできるはずだった。
……なのに変化はない。傷一つはいらない。
俺が驚愕している隙に、リリィが俺の体を抱え、跳ぶ。
「ダメです!人造魔物は魔力そのものに強い耐性を持っています!対抗するには物理で戦わなくてはいけません!」
高い魔力を持つ俺だが、魔力以外は大して強いわけではない……
いや、ひとつ、ひとつだけ、そのたった一つに賭けるとしよう。
「リリィ!俺を上げろ!」
「……はい!」
リリィは答えるとともに全力で俺を高く上げる。反動でリリィの落下が加速するほどに。
蜘蛛糸でネットが作られる。確認すると同時に最高点に達する感覚。
そして、対物ライフルを構える。
「ぶち抜け……鬼すら哭かせる悪魔の軍勢の筆頭、その一撃!」
銃口に魔力を。銃弾にも魔力を。紅い、朱い。灼赤の……流星。
「照射……ブラッドハレー!!」
引き金を引くと、銃口から光線が発射された。
それは、まるで攻撃衛星の照射攻撃か、彗星か。
巨大蟷螂はもろに光線を、頭から受ける。
魔力のコーティングは弾かれる。しかし本命の弾丸は、正確に頭から一本の孔を作り上げる。
魔力のコーティングは散開し……強烈な爆風と共に森を灼き尽くす。
糸の防壁で囲まれた私、柊さん、咲奈ちゃんも衝撃波に耐える姿勢でいる。
爆風が、衝撃波が、終わりを迎えた時には、蟷螂の姿はなく、大量のクレーターが点在していた。
落ちてくる陽さんは、意識が飛んでいるような状態で落下している。
私はすぐさま糸でクッションを、作り、落ちたところを包むように保護する。
すぐに陽さんは目を覚ました。
「……うっわあ、何これ。森の跡形もねーじゃん」陽さんは呆れ返っていた。
「これ、兄さんがやったんだよ?」
「マジか……ここまで火力あるのか……」
「陽、まさかあれ……新ネタか?」
「ネタ言うな。」陽さんは睨みつける。
「あれは……そうだな、ブラッドハレーって名付けるか。」
「血の彗星……?」
「赤い、朱い、紅い、緋い彗星。まあ、彗星クラスの破壊力だろう?0か1かのデジタル・ブラスト。」
「……魔力量を調整する気は?」
「微塵もない。が、頻度は抑える。」私は内心頭を抱えた。
「……とりあえず陽さん一番の課題は調節ですね。ブラッドハレーを調整する気はないのは別にいいですが、ゲイボルグ。あれだけでも調整はしましょうね。」
私はとりあえずみんなの課題を考えながら、里に戻ることを提案した。
みんなが賛成したので、里に帰ると、
「とりあえず近況報告!被害はありませんか?」
「南方から異常な魔力放出反応を確認!その魔力に反応したのか、他の魔物が撤退を確認!一応作戦は終了です!」
「彗星を見た!?本当ですか!?」
「南方部隊帰還を確認!損傷軽微!」
と、慌ただしかった。
「あの、どうかしましたか?」私は情報をかき集めているラケニーに質問した
「あ、リリィ姉様。南方からの異常魔力放出反応により、西方、北方、東方全ての魔物が撤退を確認しました。南方の皆様が無事で良かったです。」
「偵察隊からの報告には、『南方に彗星を見た』という情報が確認されましたが、どういうことですか?」
「……。」私たちは、黙り込んだ。
つまるところ、「ブラッドハレーの異常量の魔力反応に魔物が恐怖し、撤退をした」ということらしい。
とりあえず、正確な情報を言った。
「灼星の射手。彗星の力の持ち主。……これは、三代目の現れ、と言っても過言ではないですね」
「ラケニー、ひとつ間違いがありますよ。」私は続けて
「彼は彗星の力の持ち主ありません。彼が持つのはたった一つの『万能の魔力』のみ。竜の三力を最初から持っていたわけではなく、無意識に彼は屍竜の力を模倣していた。それだけのことです。」
「幻士が持っていた『究極の魔力』と対をなす……そう解釈しても?」
「『究極の魔力』が魔法に特化したのならば、『万能の魔力』はそれこそ何もかもが可能になる。対をなすとは言えませんが、対極のようなもの、でしょうね。」
とりあえず、危機は去ったのだろう。ブラッドハレーは最凶の魔術弾丸とも取れる、秘術になるだろう。
翌日、俺たちは里に出るとすぐ、誰かが空から来た。
そう、空から。烏のような暗い翼を持った男が。
「この少年が白石陽。『万能の魔力』持ち、彗星の射手。そして赤眼の鬼と謳われる人物。と、いう割にはなかなか貧弱そうな顔ですね。」
「は?」俺は睨みつけた。
「おおう……これが赤眼の覇気……というか殺意がこもってない?」
「陽さん。落ち着きましょう。」
俺は舌打ちして、一歩後ろに下がる。
「じゃあ、自己紹介。俺の名前は汐宮加瑠来。翼人族長。世界を飛び回りながら、だけどね。」
「何の用だい?」
「戦いぶりを見て思ったんだ。ウォーリアギルドに入らないか?」
「ウォーリアギルド?」
「魔物と戦い、商人の護衛などを行う人たちを集め依頼を斡旋するギルド。入っていて損はないよ。まあ、試験はあるんだけど。」
「試験はいつだ?」
「三ヶ月に一回ですね。えっと、次の試験は……は……」
リリィが固まった。嫌な予感しかしない。
「昨日がちょうど試験日だったようです……つまり次は三ヶ月後……」
黙っていた咲奈がついにキレた。
「こっっの、ポンコツ女ああああああああ!!!!」
「ひぃ!?ごめんなさい!?」
三人は呆れていた。
次回は早めに……!




