二章~測定と陽の能力~
「おい!また一ヶ月空いたぞ!!どうなってんだ!!」
「申し訳ありません!本当に申し訳ありません!」
主に内容についてむちゃくちゃ悩んでました。
リリィは案山子を置き、説明を始めた。
「いまから三人には、この案山子に向かって、全力で攻撃してください。」
「どういうことなの?案山子に向かって全力攻撃とか……明日に響くかも知れないじゃない。」
「そこは大丈夫です。魔力の回復薬も、ちゃんと用意しています。」
咲奈は何故か安心している。
「つーかなんだよ。何を測定するものだよ。」
「これはですね、受けた攻撃を即時回復し、記録していくものです。短い時間で全力で攻撃し、どれほどの被害を出せるかを測る道具です。この結果から、平均攻撃力などを見ることができます。」
「そうか……よくわからん!」柊は叫ぶ。
「大丈夫です。私もよくわかりません。」おい、そんなものでいいのか。
「わかんないって致命的じゃないのか?」
「ただ『強い奴が現れたらコイツ使って出た数値を記録しておけ』って言われているので……」あはは、と笑う。
大してよくわからないが、まあ、いいのだろう。
「あ、行っておきますが私は手本でやりませんよ。一回これ壊してしまった頃もあるので……」
「自然回復能力があるこのかかしを壊すって……リリィ力だけはあるのね。」
「力だけって何ですか力だけって。」リリィは咲奈のつぶやきにつっこみを入れた。
「まずは私でしょう?手本を見せてあげるわ。」
そう言って、咲奈は槌を左手に騎槍を右手に構えて案山子の前に立つ。
「準備はいいですか?用意……始めっ!」
「はああああああっ!!」
リリィの掛け声と同時に咲奈はすぐさま騎槍の一撃を加える。
風を纏った一撃は案山子の周囲ごと喰らい尽くすように刻み込む。
騎槍を振り回せばその遠心力を載せて槌が暴れまわり、吹き荒れる風は魔力のよって空気の刃や見えない爆弾と化し、並大抵の生物では既に木っ端微塵に吹き飛んでいるであろう連撃を案山子は受け止め、大地から魔力を吸い上げ回復する。
「暴れ回れええっ!!」
騎槍に風が集まり、その余った風ですら槌に集まる。
「もうすぐ時間です。」
「この一撃で、決めるっ!」咲奈を中心に一気に風が吹く。
「風よ、この槍に集え!!」まるで空気の動きが見えるかのように騎槍に風が集まる。
「喰い荒らせ、黒誇の暴風!!風穿……風衝っ!!」
騎槍に集まった風は案山子をまるで喰い荒らすかのように切り刻む。
しかし、やはり案山子は無傷のまま立っている。
咲奈は落胆せず、「どうだった?」とリリィに結果を見にいっている。
「私もどれぐらいの数値が良いのかなんてわかりませんよ。蜘蛛族よりも2,3倍はありますね。優秀じゃないですか?」
咲奈はあまりいい反応をせず、休憩に入った。
「次は柊さんお願いします。」
「俺かー……まあ、がんばるわ。」
柊は案山子の前に立ち双剣を抜き、逆手に持ち、構える。
「先に準備は済まして構いません。」
「オッケー。」
柊の周りの植物がざわめくように音を出す。大地に柊の魔力が展開され、まるで脈動するように、動き始める。
「では、始めっ!」リリィの合図とともに柊は一瞬で詰め寄る。
柊の剣技は舞踏に近い。全身すべてを使い、剣が宙を舞う。
しかし舞踏のリズムとリズムの間に植物の、樹木の根が、竹が案山子に突き刺さる。また根がトランポリンの代わりになり、空からの強襲、着地も全てこなす。
「植物に愛された少年」と昔誰かに言われていた気がする。霊能者だったか、それとも破軍の誰かだったか。植物の声は、俺は聴けない。俺からすれば聴きたくはない。どこにでもいるから、ずっと耳鳴りのように声が聞こえてしまうのだろう、と考えてしまう。
柊は「聴くことに意識しなければあまり声は聴こえない」と言っているが。
そんなことを考えているうちに、時間は終わっていた。
終始自分のペースで舞い踊り、そのペースに呼応する植物が補佐する形は、まさに完成形であった。
「流石に咲奈ちゃんには劣りますね。まあ、あの子は少々特殊ですので、元一般人からすると相当な腕前ですね。自信を持ってもいいですよ」
「よっしゃ!」柊は大きくガッツポーズをする。喜びすぎだお前。
少しの休憩の後、リリィは俺を見て、
「最後は貴方の番ですよ。陽さん。」
と笑いかける。
「……あまり期待はするなよ。俺だって柊と同じ元一般人だ。」
「ええ、思いっきり期待してますよ」
リリィ人の話聞いていたか?俺は期待するなといったぞ?
「では、準備してください。」
俺はその一言て、二本の短剣を構える。構え方は柊と同じ逆手だ。
「へえ、俺と同じ構え方か。どう戦うのかな?」
「お前とは全く違うよ。」
「では……始め!」
その一言でナイフを投げる。手が空くので右手に手斧、左手に槍を持ち、手斧を素早く投げる。
槍は左で切り裂きながら、右に持ち替えたり、上に投げ上げる。
投げ上げると同時に短剣が戻ってくる。これが俺の戦い方である。武器を投げ、その間に別の武器で攻撃する。
手が空けば別の武器を持つ。次は対物ライフル。轟音と共に銃弾は案山子を貫く。対物ライフルは一撃は重いが連写には向かない。だからこそ二丁拳銃を持っている。二丁拳銃による弾丸は、魔力によって静止する。
あとは流れだ。槍と、短剣と、手斧と、対物ライフルと、二丁拳銃を連続して、切り刻み、投げ、打ち込むだけ。
……そんなわけがない。その流れ作業の裏で、静かに魔力を練る。そして、展開する。
「…皆さん!離れてください!!」
「おいリリィ!あれはなんだ!?」
「魔力そのものを展開しています。本来なら探知に使うものですが……」
「他人の魔力は有害なの。色がつくほどの濃さで魔力を、いや、鮮やかなまでに紫色の領域……あんな中には入りたくはないよ。」
「基本的には気分が悪くなるだけなんだけどね。あの濃さじゃあもう立っていられるかわからないよ。長時間いたら死ぬ可能性もあるかもしれないねえ」
それよりも……この魔力量にはもう一つの利点がある。
掌底から魔力を注ぎ込む内部で魔力の爆発を起こさせるのだが
――領域内で誘爆を起こす。爆風が更なる追撃となる。
俺は昨日、本を読んだ。
「一般人が持つ魔力をそのままエネルギーとして利用する場合、そのエネルギーは核に等しいものである」そう書かれていた。
もし俺の使える魔力すべてをつぎ込んだら――
残り時間も少ない。試すとしよう。
体内の魔力を、領域内の魔力を全て左腕に凝縮する。
そして、左腕にもつ、槍に、『神器創造』として注ぎ込む。
「名を刻め。『雷の投擲』。30の棘を持ってして、彼方を殺せ!!」
槍は、案山子の内部に突き刺さる。そして――
魔力が暴発した。30の棘となり、人間で言う五臓六腑に当たる位置が、ズタズタになるような感覚。
人であっても、人ではない、謎の生命体であっても、その一撃には叶わない。
不死ではない限り、心臓を、内蔵すべてが穴だらけになってしまった以上、助かることはない。
『雷の投擲』。日本からはるか北東に位置する島で、英雄が持ちし魔槍。
一閃すれば、案山子のように内部をズタズタにされ、投げれば30の棘が降り注ぐ槍。
謎の轟音と共に、案山子に突き刺さる槍が粉状になり意味を成さなくなる。
そして、案山子もヒビが入り、割れる
「……あー……」
「うわ、ついに二人目がやっちゃったかー……」
「リリィ……」
俺は真っ青になってしまった。
「ど、どうするんだよこれ……」
「えーっとですね……私が壊したときは作り直すことになりましたね。まあ大丈夫ですよ!術式が難しいだけですので!そこは私がやりますよ!」
「ごめん……本当にごめん……」
「まあ、いいですよ。私が何とかしますよ。今日はお休みください。あと槍も準備しときます。」
「助かる……」
俺たち三人はリリィが使っていいと言っていた屋敷に帰り、休息を取ることにした
「あいつは本当に異世界人なのか?リリィさん」
「ええ、もちろんですよ。私が異世界に行ってきたのですから。」
「そうかい。まあいいよ。あいつは『三代目』にあたる人物かどうか、ちゃんと見極めてな。」
「ええ。まかせて下さい。」
後ろで話していた男は飛んでいった。
「さて、私もしっかりしないとですね。新しいもう一口の刀が欲しいですね……」
私はゆっくりと歩きながら、考える。
この先の考える。三代目の存在による、人類の再度の繁栄が実現可能なのか……
次回、本格的な作戦が決行される……
補足説明
ゲイボルグはゲイボルクでもいいらしいです。というかボルクの方が正式名称らしいですが、このお話ではゲイボルグで統一します。




