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白い蜘蛛と赤目の鬼  作者: 木丘柊遠
序章~白髪美人は半人半蜘蛛~
1/12

一章~出会い~

初めまして。木丘柊遠といいます。

視点がよく変わるのは仕様です。

       1

オレが住んでいる街には赤目の鬼という異名を持つ少年がいる。

だが、赤目の鬼の本性は木偶の坊である。

木偶の坊。簡単に言えば使い物いならない人のこと。

オレ、白石陽は木偶の坊だ。勉強も出来やしない。運動もそこまで得意じゃない。

完璧主義の家に生まれたオレは、家族からの嫌われ者だ。

二年前に高校を中退して、もう18歳になる。

高校に入ると同時に連れてこられたこのマンションの一室で、オレは過ごしている。

あまり手入れされていない黒髪は非常に癖が強い。多分まっすぐ伸びる髪の毛はないだろう。

無駄なところに脂肪はついていないが、筋肉は付いていない体。

一番特徴的なのは、オッドアイというところだろう。

瞳孔すら判別できない程の黒い右目、なぜか感情で色が変化する赤い左目。

それが「白石陽」という存在なのかもしれない。

自室にはパソコンが一台あるだけ。それだけでオレは生活できる。

画面に映し出される狙撃銃。いつもの戦場でいつもの位置につき、スコープ画面に切り替える。

集中すれば、何も考えなくていい。

一部が暗転した画面に瞳孔が真紅に染まった左目が映る。

そして、いつものように敵兵の頭を撃ち抜く。

日常的にやっていること、傍からすれば超人的なプレイ、らしい。

俺にはよくわからない。だって俺がやっていることは変わらないのだから。

そうして、戦闘が終わった。

       2

チャットは騒乱としていた。「白陽烈華」の壮絶な活躍に。

神出鬼没で味方に入れば負けることはほとんどない。

超絶技巧のスナイパー、「白陽烈華」。

騒乱するチャットと共にゲームを閉じ、端に映る時刻を見る。

午後7時半。そろそろ飯を買いに行ったほうがいいだろう。

そう思いながら、ネットを開く。

他人が送る日常を見て、何も思うことはないはずだった。

――今日は、どこか違った。

そこにはオレが住んでいいる市内の写真。

内容は「白髪の美人が市内にいる!」

腰まで伸びた純白の髪、少し切れ目で、瞳は灰色をしている。

白い髪に合わせたような、真っ白な肌。

服装は黒いタンクトップと黒く短いスカート。その上に上着替わりか、白無地の和服を羽織っている。

一目見ただけで、美人と断定できるほどである。

しかし、それだけならいいのだが、オレは自然と背中に目がいってしまった。

背中には太刀を提げていた。書いていることから、模造刀らしいが。

まあそんなことを考えている暇なんてない。

オレは財布を持ち自分のいる部屋を出た。

       3

「陽、飯でも買いに行くのか?」

リビングに来た俺に一言。ソファの方から聞こえてきた。

オレは素っ気なく「ああ。」と答える。

緑がかった黒髪。しっかりついた筋肉。

元弓道部員の男、俺をこのマンションに連れてきた男。

幼馴染で腐れ縁。けどあいつにとって俺は唯一の友人。

「橘井柊」。俺とは二歳離れている二十歳である。

「ネットで話題になっている美人さん、見たか?」そう言いながら、スマートフォンを揺らす。

「見たけど、それがどうした?」

「お前、会ってこいよ。あいつらがそう言っている『君と似ている』ってな。」そう言って、プランターの方を指す。

柊は、植物の声が聞けるらしい。小学校低学年の頃は「変わっている」だけで済んでいたが、高学年に上がると、他人は避けるようになっていた。

俺は単純にすごいと思うが、人は普通とかけ離れているものは避けるから、あいつは一人なんだよな。

「この市内にいるだけで、どこにいるかわからないだろ。コンビニ行って帰ってくるだけだし、会える可能性が低すぎやしないか。」

「いや、ここら近辺に居るらしい」即答で返された。

「……会えたら、な。」

「あいあい、んじゃ、コンビニいてくるんだろ、行ってらっしゃい。後ついでに飲みもん買ってきて、オレンジジュース。」

「ついでに頼むな。……買ってくるよ。行ってきます。」

そうしてオレは家を出た。

      4

正直、ここまで失敗するとは思わなかった。

まず、帰り道を考えていなかった。簡略式の空間転移魔法で来てしまった。

簡略式では一方通行だから、また魔法を出さないといけない。

そしてもうひとつ、この世界の魔力の気配がとても希薄であることであった。

こんな世界は、早く出なければいけないのだが、最初に立ち直ってみよう。

簡略式できたために、もう一度魔法を出さないといけない、しかし、マナが希薄で溜めなけらばならない……

友人にそんな話をしたら「残念美人」と笑われるだろう。

さて、とりあえず魔力を貯めている人を探すとしよう。そうでもしないと、この世界から帰れられないかもしれない。

季節は秋。すごしやすかったことはとりあえず利点としてみよう。

そう思いながら、私はこの世界を旅する。

  ◆      ◆       ◆

夕方7時。日は傾ききって、もう暗くなってしまった。

今日は野宿確定。そう諦めて歩いていくと、ひとりの少年が別の少年集団に囲まれていた。

集団で囲んでいじめ。ああ、こちらでも同じことが起きているのか…

私は異世界から来た赤の他人中の赤の他人。私には一切関係はない。

……そのはずだった。

あの少年は、赤の他人じゃない……!

そう思った直後には、私は既に走り出していた。

      5

コンビニの帰り、俺は嫌な奴に囲まれた。

その中心にいたのは、中学時代のクラスメート、山本だった。

「お、白石じゃん。」

「何しに来た山本。オレはお前と話す意味はないぞ。」ただ素っ気なく、オレは答えた。

「何言ってんだよ、お前もあの白髪美人を探しに来たんじゃないのか?」

「なぜそんなことをオレがする理由がある。」

「まあ、そういうと思っていたさ。俺もそこまで気にしていないさ。お前を見つけて倒すためにあいつを探していた!お前はそんなことをいうが、本当は探していたんだろう?」

ああ、コイツはそういう奴だ。勝てもしないのに戦いを挑む。中学の頃からオレのことが気に食わない。仕方がないので一撃で沈めることにした。

――左目が疼く。『何か』が左目に集まる。余った『何か』が手に、足に分散する。

しかし、使われることはなく、『何か』は体全体に溶け込んでいった。

パシィ、と掴む音がした。

山本の腕を、誰かが掴んだ。

さらりとした白い髪、白を基準とした和装。

後ろから見れば、『純白』という言葉しか出てこないほど、白一色だった。

だが、殺気は恐ろしい程強く、山本の腕を握る手はギリギリと音がするように感じる。握力も強いらしい。

山本はおじけづき、手を振りほどいて逃げ出した。周りの奴らも逃げていく。

呆然と立ち尽くすオレを後ろに、『純白』はまっすぐ前を見つめていた、そのあと、後ろを振り向いて

「大丈夫ですか?」一言、そう言った。

オレはただ頷くことしかできなかった。

「えっと…」純白の女性は考えを巡らしていた。数瞬後、

「頼みごとがあるんですけど、聞いてくれますか?」と、オレに聞いてきた。

この出会いが、俺と、柊と、もう一人、今はまだわからない誰かの運命を大きくねじ曲げることになるとは、思いもしなかった。

      6

俺は、驚く他なかった。

陽のことであるから、写真だけ撮って帰って来れば大万歳、そう思っていた。

だが、陽は、本人を連れて帰ってきたのだ。

蛍光灯の光が、その女性の白を引き立たせさせる。

「初めまして、今日から少しの間お世話になります、リリィ・メイナーと申します。」

純白の女性、リリィはそう言った。

とりあえず夕食をとり、その後、話を聞くことにした。

陽がヤンキー共に襲われているのを見て、助けたこと。そのあとリリィの要望で、俺たちの家に来たこと。

陽からの話はこれだけで終わった。

そして、リリィはなぜここへ来たのか、リリィがどんな存在なのか。

これは夜も深かったので、明日聞くことになった。

たった一人、リビングのソファの上で、一通の手紙を見る。

宛名には俺の名前。送り主は、神谷渚。陽にとって、一番大切な人。

あいつは、約束を守るだろうか。まあ、あいつのことだから、守らないことはないだろう。

そう思いながら、ソファに横になり、静かに眠る。

明日を見据えて、俺は生きていく。

――たとえ、見知らぬ世界がすぐ近くにあると気づかなくても。

続きます。

更新は不定期ですが、今後とも宜しくお願いします

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