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2話、おパンツ

 まず俺に与えられた仕事は洗濯だ。井戸へ向かう。


「はぁ〜、なんだってこんなことに……」


 洗濯といっても洗濯機のない文明だ。洗濯とは手洗いなのである。慣れない事に時間を掛けて、やっと終わりそうになってきた。すると、


「おや?」


 正体は、おパンツだ。

 良い布使ってんじゃねぇか。たしかシルクとか言うんだっけか。これをアイリスは着けていたんだよな。

 その絹の布を顔に近づけていく。ゆっくりと、もう少しというところで声を掛けられる。


「やぁ、これはさっきの平民ではないか」


 急いで布を顔から剥がして、声のした方へ振り返る。そこには金髪のイケメンがいた。まさにイケメンオブイケメンといった感じだ。

 へぇ、こんな絵に描いたような奴もいたもんだ。

 詩音の想像してるのは絵本である。王子様が出てくるようなジャンルだろうか。


「うっす……」


「……おい平民、いつまで顔を上げている?」


 足を振かぶり、詩音に向けて足を振り抜いた。

 当然詩音はごろごろと転がり蹲る。


「ぐほっ、でめぇ、ごろじでやる゛」


「はぁ!? 聞こえねぇよ。そもそも平民のくせに生意気な奴だな。……よし、決めた」


 決めた? 何を決めたというのだ?

 王子様らしくらい王子様はニヤニヤと笑いながら詩音を見る。


「フラシア王国王位継承第二位リオン・フラシア、貴様に決闘を申し込む!」


 王子様もといリオンは、手袋を懐から取り出して詩音に投げつける。手袋は綺麗に詩音のお腹あたりに当たる。

 決闘? なんだそれは。こっちはまじ蹴りされてんだぞ、お遊びだろうが本気でやってやるよ。


「おい、殿下が決闘だってよ!」


「まじか!?」


「なになに」


 ギャラリーが集まってくる。

 そもそも、なんでこんな所に来たんだ? 他の奴らも暇か!


「上等だ。逃げんじゃねーぞ」


「君こそな。明日の昼、学院の広場に来い」


 詩音はまだ知らない。なぜ支配層が支配層なのかをーー魔法が使えるのは王族や貴族だけだという事をーーそれゆえの力の差も。



 ○



「こんのバカ犬ぅ! なんでリオン様と決闘する事になってんのよ!」


 アイリスはご立腹だ。貴族にとって血や爵位というのは大きい。


「だってあいつが突っかかってきたんだよ」


「はぁ〜、よりにもよってリオン様とーー」


「なんなあんのか?」


 アイリスは深刻そうな顔で俯向く。完全に詩音が負けると思っていて、詩音が怪我したらどうしようなどと考えていた。


「……リオン様はね、強いの。今代の生徒の中ではトップよ。リオン様の事だから手加減してくれるとは思うけどーー」


「はぁ!? あいつが手加減なんてする訳ねぇだろ! あいつの態度知ってるか?」


 なぜあのリオンが手加減なぞすると思っている? あいつ腹の中真っ黒だぞ。いや、それは平民に対してだけなのかもな。


「今からでも遅くないわ、早く謝ってきなさい。勝てる訳ないんだから」


「それは嫌だ。あいつに下げる頭なんてない」


 詩音も引き下がる事はしないらしい。まぁそれも、詩音が魔法の使える者と使えない者の差を知らなあからなのだが。


「あんたは私の使い魔なんだから怪我されちゃこまるのよ」


 それは悪いと思っている。だけど、俺とあんまり体型の変わらない奴相手に大怪我なんてするもんか。

 その思い込みのために慢心している。


「へいへい」


 油断してところでアイリスからの鞭が入る。パチーンと綺麗な音を立てる。

 痛い。これもとある性癖を持っている奴ならご褒美なんだけどな。あいにくおれはそうじゃない。


「……はぁ、言っても仕方ないみたいね。今日はそろそろ休みましょ。ほら! 脱がせて!」


 う、やっぱりこんな美少女を着替えさせてるなんてシチュエーション、興奮するわ。

 ひとまず脱がせる。そして、寝間着のネグリジェのようなものを着せる。そこで、詩音はひとつ気になった事があり、聞いてみることにした。


「なぁ、なんでガキのアイリスなんて呼ばれてるんだ?」


 ピキッ。詩音にはたしかにアイリスのキレる音が聞こえた気がした。


「……ねる」


 鞭を振るう事も無かった。それだけ気にしている事を突かれたのだろう。

 ガキのアイリス、このガキには二重の意味がある。まずは幼児体型。そしてもうひとつは、魔法の腕だ。

 魔法が下手な者でも初級魔法というのは、普通は出来る。そこから派生する属性魔法が魔法学の本命だ。本来は専攻属性を決めるのだが、アイリスだけが未だに専攻属性が決まっていない。

 要するに魔法がガキレベルというわけだ。


「あ、あんたは床だからね」


 アイリスが指差す方向へ目を向けるとそこには板張りの床が見える。硬そうだ。日本で生活していた詩音にとっては硬いなどよりも、土足で過ごしている部屋の床で寝ろと? と思っているだろう。


「なんで私だけ、もうやだ……」


 消灯してから睡眠に入ろうかというタイミングで詩音の耳に弱音が入ってくる。

 ……。

 詩音は無言だ。




*挿絵?です。

挿絵(By みてみん)


どうも!


盛り上がるのは次話ですねヾ(@⌒ー⌒@)ノ

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