タブラ・スマラグディーナ・Ⅵ
読みづらくてすいません。
(……あのあと、大変だったなあ。今回はああならないようにしないと)
過去から現実に意識を戻しながら、うんうんと頷くサルサディア。
西方の最果ての地以外の大陸が無事だったのは、暴走しかけたアーヴィガイヌとサルサディアの能力を破壊者が抑えたからだ。──そうしなければ、世界は確実に滅んでいただろう、滅ぼすために存在するのだとしても。
レヴィ・エリファスが誕生した時、祝って欲しいと言われ、エリファス家に出向いた。生まれたばかりの彼を見て、自分と同じ錬金術師になるとわかったのを今でも覚えている。
「同じ錬金術師というだけなら、彼に仕えようとは思わなかったんだ、俺は」
自室に戻ったメイザースは、遠い親戚のレヴィのことを思い出して、呟く。
「思い通りに動く駒が欲しかったんだろう……〝世界の主〟よ。そのために予知の能力を与え、レヴィを「破壊者」の「器」にした」
予知能力は本来、アーヴィガイヌとサルサディア。世界の主と「破壊者」だけが持つ能力だ。……もっとも、完璧な予知能力は世界の主しか持っていないが。
「もうすぐだ、レヴィ……もうすぐ、全てが終わる」
その言葉の意味はメイザースにしかわからない。うれしそうに彼はクスクスと笑った。
「破壊者」──アルフォンス・ルイ・コンスタンが誕生したのはテトラグラマトンの世界が誕生したのとほぼ、同じ頃だ。アーヴィガイヌとサルサディアより少しだけ前に創られた存在。今はレヴィの〝内〟にいる彼は暫く、表には出てこないと言ったはずなのに、何故か表に出てきていた。
「……クロウリーの死によって、世界の均衡は保たれる。ほんの、少しの間だけ」
世界が存在し続ける限り、必ず均衡が崩れてくる。それを修正するために生み出された、世界の主と同じ色彩を与えられた、破壊者。