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タブラ・スマラグディーナ・Ⅴ
「サーディア!」
「……悪い、アーヴィー」
駆け寄ってきたアーヴィガイヌにサルサディアは謝る。彼が何に対して謝っているのか理解しているアーヴィガイヌ。
「……?」
クロウリーも異変に気付く。空気の流れが違うのだ、さっきと。
大気が大きく震えている。そこに存在する〝なにか〟に怯えるように……呼応するかのように。
サルサディアの頭を撫でるように触り、アーヴィガイヌはクロウリーを見た。緑色の髪が風になびく。
「「──お前の望みは叶えられないことを覚えておくといい、クロウリー・アレイスター」」
元々の口調に戻しながら、二人が同時に言う。それと共にドンッという音と光の柱があがる。驚いたのはクロウリーだけ。彼は「何をした」と問うが、二人は何も答えない。かわりに、腕を肩の高さまでもってくる。──そして、紡がれる言葉。
「「恒久の闇を返還。在るべき場所へ還れ」」
瞬間、強大な力が二人から放たれる。
〝─────!!〟
西方の最果ての地全体を覆う力。
クロウリーとメイザースはそこから退却するしかなかった。──己の身の安全のために。