10/22
タブラ・スマラグディーナ・Ⅹ
アーヴィガイヌとサルサディアが世界で最初に目にしたのは〝世界の主〟──ヘルメス・トリスメギストス。
「──お前たちの名前は〝タブラ・スマラグディーナ〟……個人名は、アーヴィガイヌ・リーティノアとサルサディア・フィリアーラだよ」
「────……」
まだ、意識が混濁しているのだろう、二人は返事をしない。そんな様子に、ヘルメスはクスリと笑みをこぼす。
「お前たちはテトラグラマトンを支える存在として誕生したことを覚えておくんだよ。──少しずつ、この世界を知るといい。時間はたくさんある。世界が存在する限り、お前たちも存在し続ける。〝そうである限り〟、自由を与えてあげよう」
声が届いているのか微妙な状態の二人に彼は言葉を投げかけていく。
「これだけは言っておく。──いつでも、どこでも、お前たちを見守っているよ。お前たちは世界の宝。世界そのものと言っていい存在なのだから。──愛しているよ……アーヴィガイヌ・リーティノア、そしてサルサディア・フィリアーラ。我が子供たちよ──……」
謳うように、ヘルメスはアーヴィガイヌとサルサディアにそう言うのだった。