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世界同時席替えの日

作者: せきひらく
掲載日:2014/11/20

 おとといは世界同時席替えの日でした。


 世界同時席替えの日は、世界同時革命を記念して、世界同時政府が革命の一年後にはじめた行事です。


 世界同時席替えの日には、世界中のひとびとに世界同時政府から手紙が届きます。内容は、受取人の話すことばで書かれたかんたんなお祝い文と、新しい住所、そしてお引越しをするのに十分なお金に、引越し先でのごあいさつに使うため配給されるボルシェビク製菓の高級板チョコが一枚です。


 世界同時席替えの日、ひとびとは一斉にお引越しします。一四歳までの子どもはどちらかの親に同行することができますが、それより年が上の子は、だめです。みんなばらばらで、新しいところに向かいます。だから、制度上、一四歳の世界同時席替えの日が、世界同時成人式となっています。


 世界同時成人式でわたしは成人しました。昨日のことです。今年の二月で一四歳になっていたからです。わたしは一四年間ずっとおかあさんについて来ましたので、一一人のおとうさんとひとりのおかあさんを知っています。おとうさんの数があわないのは、引越し先におとうさんが割りあてられていなかったのが二回と、割りあてられてはいたけれどなぜか現れなかったのが一回あるからです。一一人のおとうさんのうちいまのおとうさんを除く六人とはまだ連絡を取りあっています。 あとの四人はあんまり好きじゃないのと、影が薄くて忘れてしまったのとで、どうしているかは知りません。でも、おかあさんと別れるのは今年が初めてです。いまは三回目の日本地区で、関東区の武蔵野市にポルトガル地区生まれのおとうさんといっしょに住んでいますが、今年の世界同時席替えで、おとうさんはグリーンランド地区へ、そしておかあさんはカザフスタン地区へお引越しすることになったそうです。かなしいけれど、お別れです。おかあさんとはずっと連絡をとりつづけるでしょう。ポルトガル地区生まれのおとうさんも、毎年年賀状くらいなら送ってあげていいと思っています。


 世界的にみて珍しいことに、わたしはおんなじ地区のおんなじ市にとどまることになりました。くわえて、引越し先の住所はいまの家から筋一つ越えたところという、世界稀にみる短距離引越しです。封筒に入った引越し資金は、だから、スズメの涙もいいところで、封を切ったときにはすこし残念な気がしました。家財道具(といってもわたし個人のものといえば、洋服にCDに漫画に教科書に……ぐらいですが)をかついで引越し先まで歩いてゆくと、まだもとの住人の方が出てゆく準備をしているところでした。もとの住人の方も、どうしてこんなに早く次の入居者が着いたのかと、目をまんまるにして驚いていました。ともあれ、最終的にはぶじ、あたらしいお家に入り、荷解きも済んで、何日か経つとあたらしいおとうさんとおかあさんにも会えて、今年一年の生活が始まりました。あたらしいおとうさんとおかあさんは、それぞれジンバブウェ地区生まれのスポーツマンと、ミャンマー地区生まれの裁縫上手なひとでした。いいひとたちだけれど、ふたりともチョコレートは好まないそうで、わたしがもらうばかりになってしまいました。


 世界同時席替えは世界同時には終わりませんが、とりあえずということで、学校は席替えからちょうど一週間後、世界同時始業式を執り行います。はじめて二年間通うことになった学校の、まだ人影もまばらな教室で見覚えのある横顔をみつけたときは、だから、それはびっくりしてしまい自分の目を疑ったものです。席替えの前までとなりの席に座っていたその男の子は、席替えの後もわたしのとなりに座ることになっていました。べつにそれほど興味はないけれど、せっかくだし余ったチョコレートをあげてみようかと思います。


 世界同時に恋の季節は来たりしないものですから。


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