第二十幕 序章
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男は言った。
「それでも・・・俺は、識らなくてはならない。」
裁定者である彼もまた問い直す。
「それを識ることは君を、そして彼女をも危険に陥れることになるかもしれない。・・・本当に、それでもいいのかい?」
碧眼の彼は、真っ直ぐに男のことを見つめていた。
「・・・俺は、これと同じようなことを以前も、そして何度も繰り返してきたような気がする。・・・そして答えは『YES』だ。あいつにもし危険が訪れることになるというのなら・・・。」
男は、然とした態度で彼を見据え返す。
「今度は、絶対に俺が守る!・・・もう二度と、同じことを繰り返したりはしない!・・・何故だかそう思う。・・・俺は変か?」
彼は、少し戸惑った様子の男を見つめる。そして、軽く微笑むと、答えた。
「・・・いや。何がおかしいんだい?そもそも僕は言ったよね?『君も男なら、覚悟を決めなよ』と。・・・それでいいんだ。さすが僕が、そして大いなる母『クゥルトゥス』が産んだ『始まりの子』だ。・・・僕の眼に狂いはなかったようだね。」
彼は終始嬉しそうだった。そして、更に続ける。
「君は。そして君達は識らなくてはならない。大いなる、永きに渡り繰り返されてきた、『旧きものども』と、我等『新しき希望』との因縁―――。」
彼は一瞬、表情を変える。
「―――『ルルイェの審判』の忌まわしき記憶を―――!」
突然、辺りが暗闇に沈む。次に男の眼に映ったのは、鮮明なる破壊、そして、神々しきほどの恐怖―――。
『旧きものども』の絶望的な恐怖。そして、その絶対的な力のもたらした、戦慄なる破壊の全てを。
これは大いなる戦い。
そして、全ての終わりであり、『新たなる始まりの序章』であることを。