第十三幕 安堵
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銃声に驚き、烏が飛び立つ。
俺の放った弾丸は、スキンヘッドの汚い頭をかすめ、数センチほどの弾痕を残して何処かに消えていた。
スキンヘッドはそれまでの痛みと銃声のショックで、白眼を剥いて、口から泡を吐いていた。
これだけの目に遭えば、二度と俺たちに近付くまい。俺は、男から離れると、イリシアのほうに近付く。
「大丈夫か?」
イリシアは大きく眼を見開いている。
「こ・・・殺しちゃったんです・・・か?」
泣きそうな顔をして男と俺を見比べるイリシア。
・・・こんな目に遇っても他人を心配するのか、この娘は。
「・・・脅しただけだ。今は気を失ってるがな。当分起きんだろう。」
俺の言葉を聞いて、一瞬安堵を洩らす。
だが、次の瞬間、一気に表情が歪む。
「・・・っひぃっ・・・うぁぁ・・・っ!。」
「おい、どうした!?何処か痛むのかっ!?」
イリシアは、ぶんぶんと首を振ると、俺の腕にしがみつき、大声で泣きじゃくっていた。
緊張が取れた安心感からだろう。俺は、背中をさすってやりながら、しばらくの間、腕の中のイリシアを見守っていた。
しばらくすると、安心したのだろう。イリシアは俺の腕の中で、すぅすうと寝息を立て始めた。
「・・・やれやれ・・・。」
俺は、イリシアにコートを着せてやると、背負って、路地裏を後にする。
とりあえずは、戻るしかあるまい。
そう考えた俺はアパートへの岐路についた。