第一幕 暗闇
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・・・浅い眠りは嫌いではない。
薄い暗闇の淵に身を寄せている間は、心を落ち着かせていられる。
ほんの一時の安らぎ。現実と非現実の狭間に身を委ねられる瞬間。
しかし、やがて暗闇は深くなる。宙に浮く、むしろそれは地に堕ちゆく感覚。
全身の力は思うように入らず、脱力した躰と四肢は拠を求め、何かに取り憑かれたかの如く、必死であがく。
永久に続くかと思うほどの暗闇。それは恐ろしいほどの静寂か、雑音か、虚無、いや、その全てであろうか。
ひたすらに堕ちゆきながら、尚も果ては在らず。
やがて、暗闇は一つに、雑音は言の葉に、虚無はその姿を留めながら絶望へと変える。
「死ね!」
言の葉は酷く乱雑にまとまり、精神を一瞬湾曲させる。
死ね、と。死にたいはずはない。だからこそ、永久の暗闇の中を堕ちながらも、救いの手を求めてあがいている。なのに、死ねと?
「死ね!死んでしまえ!お前なんて要らない!死ね!死ね!」
暗闇に響く声。正しくは声ですら、いや音ですらない。それは、精神へと直接注ぎ込まれる言の葉。
力の入らない両の腕を、更に捻らせ、尚も救いを求める。
「お前など産まれてこなければよかったんだ!」
乱雑に紡がれるその言の葉はやがて、救いを求める行為を諦めへと促す。
あぁ、もういい。それならば、いっそのこと殺してくれ―――。
「死ね!死んでしまえ!」
諦めたにも関わらず、何度も繰り返されるそれ。
死ね―――殺してくれ
死んでしまえ―――これ以上苦しませるな
産まれてこなければ―――早く楽にしてくれ――――――