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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第三部 引き継がれし炎
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夏休みの計画 1

「おらっ!」

「せやぁぁ!!」


がぁん、と金属のものがぶつかり合う音と、魔力がぶつかりあったことにより発生するエフェクトが目の前で弾ける。そのまま一瞬均衡を見せるが、すぐに力の差で押し込められてしまう。だが、押し込められるということは、相手はそれなりに力を込めているということだ。


「……っ」

オレはぶつけている右の剣を振り払うように力を込めながら、小さく左前に踏み出す。そうすると、相手の武器が若干外に流れ横を取ることができた。

「もらったっ!」

オレはぎりっと左足の向きを変え、左足で蹴りこむようにして左の剣を横に薙いだ。


「甘いぜ!」

だが、それはあまり得策ではなかった。相手は払われた武器を弧を描くように動かし、オレの左手の剣を下からかちあげてきたのだ。

「おわぁ!?」

その力に押され、オレの左手は大きく上に弾かれてしまった。肩が外れるかと思うくらいの衝撃が、左手を支配する。

「終わりだなっ」


相手はそう言いつつ武器の持ち方を変えた。上に上がっていた刃を、そのまま振り下ろすのに適した構えになる。それに加え、武器が彼の声に呼応するかのように炎をまとい始めた。魔力の圧力も一層増す。オレは痛みに顔をしかめながらも、歯を食いしばり残った右手の剣に力を込める。


「っああぁ!」


気合の声を上げる。すると、魔力が一気に右手に流れ込む感覚を覚えた。いや、オレ自らが流したのだ。

さらにいっそう、右手の剣を握りしめる。すると、オレの右手の剣が炎をまとい始めた。

「はぁっ!」

無造作に揺らめく炎とともにオレは右手の剣を、振り下ろされつつある武器に下から叩きつけた。先ほどと同じく、がぁんっ、と派手な音がしたが、先ほどとは違い、今度は赤い光が大きく弾けた。

「……っ」

「……!」

今度はお互いの武器の動きが止まる。普通の力に加え、魔力の影響も加わっているからだ。力では、こんな小さなオレじゃ勝てない。だが、オレには相当量の魔力がある。その魔力で、オレは相手の力を押していた。

ぎりぎりと、危うい様子で均衡が保たれる。だが、その均衡は長くは持たなかった。


『……っ』


次の瞬間には、オレたちが同時に後ろに下がったのだ。目的は同じだろう。もう一度仕切りなおすためだ。

小さく剣を鳴らしながら、オレは再び構えを取る。相手もいつでも飛びこめる、あるいは応戦できるように武器――槍を構えた。二人の武器にまとわれている炎だけが、この緊迫した空間の中で気ままに揺らめいている。


……どちらも動かず、沈黙の間が続く。


不意に、オレに突き付けられている槍の炎が大きく揺らめいた。その瞬間、オレの体が反応した。それは相手も同じらしい。



今だ!



オレたちは一気に距離を詰めようと足に力をこめ――



「やほー」



『ぎゃあぁぁぁぁっ!?』


――ようとしたところで、目の前に現れた黒い物体からした声に思わず悲鳴を上げてしまった。オレはしりもちをつき、相手は勢い余って、がつんと槍の先を地面に突き刺してしまう。そして、その黒い物体に心当たりのあるオレたちは、同時に一方向を向いて怒鳴る。


『なにすんだよ、会長!!』


オレたちの目線の先には、笑いながら首をすくめている黒塚が立っていた。


今オレたちは、放課後の訓練の真っ最中だった。訓練は生徒会室の地下に位置する、どんな魔法にも耐えられる作りらしいアリーナで行われる。オレたち生徒会役員は、全員ここで思い思いの訓練をしていた。思い思いと言いつつも、黒塚や水穂、勠也以外は大体黒塚の言った訓練をしているが。

「いやー、おもしろい試合を見せてもらったよ」

そう言いつつ、黒塚は小さく拍手をする。その様子に、オレはこもっていた力を抜き、はぁと大きくため息をついた。そして黒塚から目線を外して、今まで手合せしていた相手、紅汰を眺めた。紅汰も顔をひきつらせて、先ほどまでの緊迫感はなくなっていた。

「……や、やってくれるぜ会長はよ……」

はぁ、と紅汰は大きくため息をついた。その後紅汰は地面に刺さった槍を抜き、その槍を消した。腰に手を当てて、首をこきこきならす。

「ま、いい試合だったのは確かだな。おもしろかったぜ」

紅汰はオレを見下ろして言った。オレは気恥ずかしさに頭を掻きつつ、よっこらせと立ち上がった。ぽんぽんと尻を払う。


「しかしまあ、もうそこまで覚えるなんてな」

紅汰が、多少驚きを含んだ様子でつぶやく。その視線は、オレの方を向いている。

「そうだね。早いだろうなとは思っていたけど、実際見ると驚きだよね」

黒塚もオレの方を向いて感心そうに言う。

「……そんなこと言われてもな」

オレは言いつつ、頭を掻く。実際、オレ個人としても『そう言われても困る』なのだ。


黒塚や紅汰の言っていることは、先ほどの手合せでも見せた、オレが剣に炎をまとわせたことについてだ。ソロナの一件があってから二週間ほど。一学期の期末試験も終わり夏休みも間近に迫っている。……ちなみにオレの期末試験の結果だが、赤点は回避できなかった。だが追試でなんとかお情けをもらったという結果だった。多少夏の宿題が増えたが、なんとかなった。……と思う。宿題をしなかったら、水の泡らしいが。……余談だったな。


とにかく、ソロナの一件があった後、オレはひたすら紅汰とこうして手合せをしてきた。紅汰の炎を体感していると、だんだんとこう……なんとなくイメージが出来た感じがして、ためしにそのイメージに沿って魔力を練ってみると、似たようなことができたという次第だ。だが出来たと言っても、炎を質が紅汰と比べると雑な印象を受けてしまう。具体的には、オレのまとった炎は揺らぎが大きいのだ。紅汰の炎は、基本槍の刃に沿ってその大きさをあまり変えない。対してオレの炎は、大きくなったり小さくなったり安定しない。火を重ねるごとにその揺らぎは小さくなっていっているが、まだまだな感じだ。


ただ、そういう細かい調整に移れる分だけ、オレは炎をまとうことに関しては慣れ、失敗することはなくなった。今は思い通りに炎を出せる。早いというのは、このあたりのことを言っているのかもしれない。


「……ま、とりあえずだ。今日は早いけどここで訓練は終了したい。代わりに、上で話したいことがあるんだ」

ぱんぱんと、黒塚が手を叩いてみんなの目を集めて行った。

「……話したいこと?」

オレはつぶやいて思わず一番近くにいた紅汰の方を向いた。紅汰も見当がつかないのか、首をすくめた。「オイラが聞きたいくらいだよ」と逆に言われてしまう。

オレは黒塚のことだから、ロクなことないんだろうなと思いつつ、先ほどまでの戦闘で出た汗をぬぐいながら、上に上がる黒塚に続いた。


書いといてあれですが、追試の上に宿題も増えたりするなんて、いやだな…


誤字、脱字、修正の指摘、感想をお待ちしています。

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