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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第三部 引き継がれし炎
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序章

「大丈夫か、坊主?」


その言葉を聞いたのはまだ小学校に上がったばかりの頃だった。当時は背が低くて細身だったため、体の大きな奴にはどうしても勝てなかった。負けず嫌いだったのは昔から同じで、腕白なやつらとはことあるごとにケンカをしてきたが、体格差で勝つことは出来なかったのだ。


あの日は、学校で絵を描いた日だった。早く母親に見せたくて意気揚々と帰路についていたが、途中で体格の大きなやつらに囲まれてしまった。子供でも、意地の悪い奴はいるものだ。そいつらに囲まれ、体格差の上数まで揃えられてしまったので、折らずに手で持っていた絵はやすやすと取られてしまった。やつらは、それをひどく汚い笑みを浮かべて破り捨てた。拙いながらも一生懸命描いた絵をだ。それを見て、今まで以上に頭にきた。いつもなら、数も揃えられたところでさすがに勝ち目はないと思い、悔しながらも逃げていただろうが、今度ばかりはそんなこと考えずに突っ込んだ。絶対に許せなかった。母親の笑顔が見たくて、必死に悩んで描いたのに、こいつらは笑いながらそれを破った。頭は完全に怒りで埋め尽くされた。


だが、すぐに劣勢になった。子供のケンカでも、大人顔負けのひどさになることもある。何度も倒されて膝は擦り剥け、口の中は血の味がし、ふらふらと意識がもうろうとなる。痛さと苦しさで涙も出てきたが、それでも引こうとは思わなかった。


どうして、体が大きいというだけで、こんなにも身勝手なことが許されるのか。どうして、小さい自分はこんなにも弱いのか。


強くなりたかった。


人の不幸を笑うようなこいつらを、倒せるようにと。


そんな時だった。



「……おいおい、物騒だな」

その人に出会ったのは。



「なんだよ、おっさん」

絵を破り捨てたリーダー的存在の子供が、突然の来訪者をにらみつけて言った。

「おっさんて……まあ、仕方ないかもしれんが。……一応、オイラまだ二十代だからな?」

現れた褐色肌の男は、短く刈った頭をぽりぽりと掻いた。

「それよりもお前ら。よってたかって一人をいじめるたぁ、良い根性してんな」

「なんだよ、おっさんにはカンケーないだろ」

物怖じせずに、リーダーの子供が男に向かって言う。男は腰に手を当てた。

「関係ないことはないぜ。見て口を出した時点で、オイラはもう関係者だ」

「わけわかんねーよ、ばーか!」

周りの子供たちが、挑発的に言った。ぴくぴくと、男は頬をひきつらせた。

「……口の減らねえガキどもだなっ。……の里にはこんなガキどももいるのか。ここにきて最初の出来事がこれだなんて、興ざめだな」

途中なにを言っていたのか聞き取れなかった。小さくつぶやいた後、男ははぁと大きくため息をついて上から悪がきたちを一瞥した。


「まあ、仕方ない。悪がきたちには、お灸をすえる必要があるしな。おいお前ら。げんこつくれてやるからその場に並べ」

「へ、やなこった」

と、男の後ろにいつの間にか一人回り込んでいた。リーダーの子供が口を出しているときに、こっそりと動いていたらしい。その子供はどこからか拾ってきたのか、太い木の棒を持っていて、それを大きく振りかぶっていた。男はそれに気が付いていないように、正面の子供たちに目を向けている。声を上げてそれを教えようと思ったが、うまく口が回らなかった。そのうちに棒を持った子供は、男に背後からそれを振り下ろした。


だが、それは男をとらえることは出来なかった。


「不意打ちとは、ほんと根性のねじまがったガキどもだな」


男は振り下ろされるのを見計らったように、さっと立ち位置をずらしたのだ。振り下ろされた木の棒は、がつんと地面に叩きつけられた。振り下ろした子供は、手首が痛いのか、表情をゆがめた。

「まったく……」

男は木の棒を踏みつける。その力に耐えられず、子供は木の棒を手放した。その子供は、手を離れて行った木の棒を呆然と眺めている途中で、男からげんこつを叩きつけられた。ごつんと痛そうな音がする。

「さぁて、次は誰だ……?」

男が不敵に笑った。ぐっと、先ほど振り下ろしたげんこつを顔元まで持ち上げ、さらに握りしめた。

「……っ」

その様子に、子供たちは恐れをなしたのか、蜘蛛の子を散らすように男の前から逃げ去って行った。中にはバカだの死ねだの、ののしりながらも者もいたが。

「……たく、とんだガキどもだなぁ……」

男は苦々しげにつぶやくと、こっちを見てきた。


「大丈夫か、坊主?」

男はそう言って手を差し伸べてきた。ふらふらで倒れこんでいたが、そのおかげで体を起こし、なんとか座ることができた。

「ぼろぼろじゃねえか。参ったな、オイラ回復魔法持ってないんだよな」

困ったように男は言った。その言葉は、ホントだったら正気を疑うような発言だったが、その時は気にならなかった。他に聞きたいことがあったからだ。


「……おっさん」

「……お前もおっさんって呼ぶのか。……なんだ?」

「おっさんは、つよいの?」

「ん? おお、そりゃ強いぞー。なんてったって、オイラは村一番の――」

「だったらおしえてくれ!」

意気揚々と自慢話をしようとでも思っていたのだろうが、必死な言葉の割り込みを受けて男は口を開いたまま固まった。人の話は最後まで聞くものだって、先生に何度も注意を受けていたが、今回もそれは守れなかった。眼中にもなかった。それほど必死だったのだ。

「どうしたら……どうしたらつよくなれるんだ!?」

腰をかがめた男の顔をじっと見つめる。男はしばし呆然としていたが、何か思い立ったのか、口元に小さく笑みを作った。


「……いい眼をしてやがる。坊主はなかなか根性ありそうだな」

そう言うと、男は笑みを消して真面目な顔を作った。

「坊主がなんで強くなりたいかは聞かねえ。少なくとも、目を見ればひねた理由じゃねえってことはわかるからな。……ただ、言っとくが半端な辛さじゃないぞ、強くなろうとするのは。それでも、坊主は強くなりたいか?」

「ああ、つよくなりたい」

「……即答か。……いいね、気に入った」

男はそうつぶやくとゆっくりと立ち上がった。その後こちらに手を差し伸べてきた。


「いいだろう。オイラがお前を強くしてやろう。そうと決まれば、坊主はオイラの弟子だ。これからは、オイラのことを師匠って呼べ。いいな?」

ニカっと笑って差し出されたその手は、これから先ずっと力となってくれる手だった。



そしてその男……師匠に出会ったその日から、夏目紅汰のこちら側の世界が始まった。


ここから第三章『引き継がれし炎』が始まります。この章は紅汰が活躍する話です。……活躍させる予定です。どう展開させようかは、結構未定だったりしま……;;。大まかな流れは考えてるんですけどね。


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