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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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光の矢 2

「……なんて威力だよ」

まばゆい光はそれほど長くは続かなかった。だが、その短時間目を瞑っていただけで、オレの見える景色は変わっていた。

光の矢は、強固な結界を跡形もなく消滅させていた。光の矢の魔力の残滓がきらきらと空から降ってきているが、先ほどまで色褪せた世界だったものが、目を閉じていた数秒でいつもの中庭の景色に戻っていたのだ。


……いつもの?


「……っておい、やばいだろ!」

オレは急に我に返って慌てだした。真っ先に持っていた双剣を魔力の粒子に変える。

中庭には、相変わらず光の網は健在であった。その大きさは校舎に匹敵し、とても人目につきやすい。窓の外をなんとなく振り向くだけで、どの階からもばっちり見えてしまう。


「おいおい、人目がっ…………、あれ?」

忙しなく視線を泳がせたが、どこの教室を眺め見ても人影がない。オレは首をかしげた。

「……なんでだ?」


「そりゃお前、一応簡易だが結界の中だからだ」


オレがつぶやくと、返答がオレのすぐ後ろから返ってきた。さっきまで戦闘をしていたこともあって気が立っていたのか、オレは反射的にその場から距離を置いた。飛び退ってから、ばっと声のした方を向いた。そうすると、臨戦態勢で強張っていた身体から、すっと力が抜けた。

「り、勠也!?」

「よう。良い反応だな。気づくのが遅かった時点で致命的だが。まあ、その感じじゃ、仕方ないか」

オレは驚きの声を上げると、さっきまでオレの背後にいた人物、勠也が皮肉気な笑みを浮かべた。オレは相手が勠也だと分かると、勠也の方に近寄った。


「どうしてここに?」

「どうしたもこうしたも、お前らがこんなところで戦ってるのに気が付いたから、来たに決まってるだろ。まあ、実際出来たのは瑞希が作ったこの結界くらいだがな。……で、これはどういう状況だ?」

「どういう状況って……」

オレは自身もうまく状況がつかめないまま、きらきらと降り注ぐ魔力の残滓の中に広がる光の網を見上げた。その中に捕らわれているソロナは、目を閉じて動いていない。光の矢はソロナ自身ではなく左手の銃に当たったし、遠目で見たところだが外傷もなさそうなので、意識を失っているだけのようだ。


……一応、勝った……んだろうか?


「……見たところ、勝負は決まっているみたいだが。これは、楓の魔法か?」

「ああ。光の網もこの落ちてくる魔力の残滓も、全部楓の……」

そう言いつつ楓のいる方向を向いたオレは、血相を変えることになった。

なんと、楓が今まさに膝が折れ倒れこもうとしている最中だったからだ。

「か、楓っ!?」

オレは自身もへろへろなのにもかかわらず、『光速』を使った。なんとか楓が倒れこむ前に、その身体を支える。

「だ、大丈夫か!?」

声をかけてみたが、楓は意識がないのか目を瞑ったまま反応がない。そのままだらりと全体重をオレに掛けてきた。

「ちょ……っ」

こちらもとっさのことで姿勢が悪かったので、楓の体重を支え切れなかった。オレ自身も倒れこみそうになる。

「や、やべ……あ――」

それでも必死に踏ん張っていると、オレの横からふわりと腕がのびてきて、オレでは支えきれなかった楓を支えてくれた。


「大丈夫ですよ、眠っているだけです。魔力を一気に消費しすぎたことによる反動ですね」

横から手を差し伸べてきたのは、水穂であった。水穂は楓を抱えてゆっくりとしゃがみこんだ。楓の膝が芝生の上につき、そのまま水穂はゆっくりと横たえさせた。

「そ、そうか……」

オレはそれを聞いて、はぁと大きな安堵の息を吐いた。

「たく、無茶しやがって……」

「おい、大丈夫かお前ら!?」

腰に手を当てて、やれやれと眠った楓を眺めていると、オレたちの元に紅汰が走り寄って――


「……って、うお!」


「あ、はい大丈夫で……?」

……来たかと思ったら、急に驚いた顔をして立ち止まった。オレは不思議に思い、紅汰が向いている方に視線を向けた。

「あ」

そこで見えたのは、光の網が楓からの魔力が断ち切られたため消えてしまい、それに捕まっていたソロナが、結構高いところから落ちようとしているところあった。

「うわ、あの高さから落ちたらただじゃすまないぞ!?」

「なんだあいつ、なんで捕まってんだ!? 敵か?」

「話はあと! とにかく今は助けないと……」

オレは再び『光速』を使いかけたが、その前にがくっと片膝が折れた。そして言いようのない脱力感を覚える。魔力不足の兆候であった。とっさに体が動かない。

「助ける!? やべ、オイラでも間に合わ――」

紅汰が走り出したが、ソロナは全く間に合いそうにない距離にまで、地面に肉薄していた。


くっ、間に合わないか!


オレはとっさに顔をそむけた。そしてすぐ聞こえるであろう、高所から人が落ちる無残な音を恐れた。絶対トラウマものだ、と内心恐れおののいていた。


……だが、いくら経っても、予想していた音は聞こえてこない。代わりになにかぱちぱちと叩く音が聞こえてきた。

「……っ?」

オレはびくびくしながら、ゆっくりと片目を開き落下点を見た。その後呆けたように両目で眺めることになった。

「……おおお……」

思わず口から声が漏れた。驚嘆の声だ。


オレが見たのは、上から降ってきたソロナを山城ががっしりと抱えている光景だったのだ。横では車いすに乗った歩美が嬉しそうに拍手をしている。ぱちぱちという音の元は、これだったらしい。

「な、ナイスキャッチ……堅治」

近くでは、紅汰も驚きに目を見開きながらそう漏らしていた。山城は気恥ずかしそうに首を竦めた後、水穂のところまで来てゆっくりとソロナを楓の隣に横たえさせた。水穂はさっそくソロナの方に目を向ける。そして軽くソロナの額に手をやってから、

「……とても衰弱してるけど、一応問題はなさそう。しばらく安静にしていたら元気になると思います」

「そっか」

それを聞いて安心し、オレはどさっとその場に腰を下ろした。思わす苦笑いを浮かべて「もう動けない」とつぶやく。


「ところで、一体何があったんだ?」

紅汰がオレの元に近づいてきた。それに続いて、生徒会のみんながオレの元に集まってくる。オレはそれを待って口を開いた。

「えっとですね……あら? 会長はどこ行った?」

みんなを見上げていると、ふと会長の姿が見当たらないことに気が付いた。

「……あいつは『後片付けに行ってくる』だとさ。あいつには俺が説明しといてやるよ」

すると、勠也が面倒臭げに言った。

「後片付け? なんの?」

オレがそう聞いても、勠也は「さあな」と言うだけで、話す気はないらしい。オレは仕方なく、黒塚以外のその場にいるメンバーに、先ほどまでのことを話し始めた。


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