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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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飛び道具の申し子 2

「……どういうことだよ?」


オレが不審げに尋ねると、黒塚はゆっくりと立ち上がった。

「さっき、僕はその魔法使いの彼女のことを知ってた、て言ったでしょ。そこには彼女の戦い方も含まれているのさ」

そしてオレのそばまで近寄ってきて、不意に腰をかがめる。オレの顔を覗き込むような格好だ。


「改めて近くで見ると、ひどくやられたみたいだね。大丈夫かい?」

「……こんなん、大したことないし。覗いてくんなよ」

オレは嫌そうに横に視線をずらす。「あらあら、嫌われたもんだなー」黒塚の苦笑が聞こえた。


「それよりも、お前の知っているあいつの戦い方ってなんだ?」

上から勠也の声が降りかかる。黒塚はオレから視線を外し、位置的に上にある勠也の顔を見上げた。その後、すっくと立ち上がる。

「といっても、僕も実際に見たわけじゃないから詳しくは言えないけど――」

と、黒塚は一旦そう前置きを置いて、語り始めた。


「彼女は、それなりな風魔法使いでもあるけど、それ以上に優秀なスナイパー……まあ、汚れ役も買った過去もあるらしいから、ガンスリンガーて言うかな……の家系なのさ。彼女の家系はかなり大昔まで遡れるみたいでね、その大昔から飛び道具と魔法を合わせた攻撃を得意としていたらしい。その特徴は、魔法が廃れ気味な今でもしっかりと引き継がれてる。彼女は所謂飛び道具の申し子さ。武器も……もちろん魔法も、ね。

今は彼女らの一族は、汚れ仕事をやめて、田舎でひっそりと猟師生活をしているらしいけど、根本の強さは変わってない。……彼女の強さは、自身の家系の恩恵を十二分に受け継いでいるところだね」

そう言って黒塚は、背後の壁の端に立て掛けてあったボードを引っ張り出した。そのボードには、見たことのある丸の並びと文字が描いてある。以前属性について説明した時に使用したボードだ。


「彼女の武器は基本二丁拳銃。実弾も魔法弾も撃てるカスタム銃だね。その二丁拳銃から放たれる精確な射撃と風属性の機動力が、彼女の持ち味。……でも、彼女の持ち味はそれだけじゃあないんだなこれが」

黒塚はそこでボードをぽんと叩いた。



「彼女のもうひとつの持ち味……それは、ずばり『属性弾』だ」



「……属性、弾?」

オレはつぶやいて、その意味を推し量る。するとオレの考えがまとまる前に、勠也が先に口を開いた。

「……聞いた限りじゃ、普通に属性を付加した光弾のことに思えるんだが」

「うん、その解釈で間違ってないよ。まあ、君たちが武器に属性を付加させるのとあまり変わらない技術だから、出来ること自体は別になんの特徴でもないね」


「それじゃ――……一体何が問題なんだよ?」

そろそろ痛みが軽くなり始めたので体を起こそうとしたところ、水穂と楓に丁重に押しとどめられた。まだ治療は終わってない、とばかりに二人の視線がきついので、オレは仕方なく体を起こすのを断念して、横になったまま会話を続ける。


「ぶっちゃけて言うと、これがあるからフルミナ君の準備が必要だったんだ」

「……?」

含んだように言う黒塚に、オレは首をかしげる。が、すぐに不機嫌そうに眉を寄せる。勿体ぶる黒塚に不信感がわいたのだ。オレは、勿体ぶらずにサッサと言えよ、と言おうと口を開きかけたところで――




「……なるほど。そういうわけか」




……鼻を鳴らして得心したようにつぶやく勠也の声に、その勢いを削がれてしまった。ぐっ……とのどを詰まらせたように呻きつつ、オレは勠也のほうを見上げる。当の勠也は毛布の上に横になっているオレを見下ろしながら、やれやれと首をひそめた。

「……え?」

「そ。そういうわけさ」

その声に今度は黒塚のほうを眺め見ると、こちらもなにやら若干困ったような表情を浮かべながら、オレを見下ろしていた。

「え……え?」


オレは交互に二人の顔に視線を泳がせて、頭に盛大にハテナマークをまき散らした。

「つまりは、だ」

オレのその様子を見かねたのか、勠也はオレから視線を外して黒塚を見た。そして確認を取るような言葉を言った。


「そのガンスリンガーのカノジョとやらは、複数の属性を使える。……そうだよな?」

「その通り。おそらく、風はもちろん、火、水、地は使えるものと考えた方がいいね。その他はわからないけど」

「……最低四色か、すごいな。……だ、そうだ。風の機動力を持ち、且つそんなマルチに属性を使えるやつに対抗できるのは、同じく機動力重視で、マルチに属性を使える素質のあるお前だけしかいない、ってことだな」

「……なるほど」

オレは思わず他人事のようにつぶやいてしまった。それを目聡く黒塚が察知する。


「他人事じゃないんだよ? 君に頑張ってもらわないといけないんだから」

「あ、いやでも……」

分かっていながらも、オレは言葉を濁す。


今のオレは、雷と火の二色……どころか、そのどちらも完成とは言えない。というか火にいたってはもはや戦力外通告クラスだ。実質『多少慣れた』雷一色でしかない。そのオレが、四色どうのこうの言われても、夢のまた夢。はるか先の話のように聞こえてしまう。


「雷牙だけに負担を負わせなくても、私たちが協力してなんとかすることは出来ないんですか?」

気持ちオレをかばうような素振りを見せながら、楓が黒塚に物申した。

「んー。出来なくもないんじゃないかな。……風属性の機動性を持つ相手……例えばフルミナ君のような速さで動く彼女に、魔法を当てられる自信があるなら、ね」

苦笑いを浮かべながらも、黒塚は現実的な問題をさりげなく挙げた。痛いところをつかれて、楓は不満げに口をつぐんだ。


「……まあ、要はこいつが『モノ』になれば万事解決ってわけだ」


そうすると、勠也が皮肉気にそう言った。そのオレ以上にひどく他人事――実際他人事なんだろうが――な言葉に、オレは声を荒げる。

「ちょい待てっ、それはあんまりだろ!」

オレのその言葉に、勠也は小さく首をひそめた。


「それはもちろん、俺たちだってフォローくらいはする。出来ることなら、俺自身があいつを潰してやりたいくらいだ。易々と魔法を避けられて逃げられたままだからな。だが、あいつの戦闘スタイルは、俺とはとことん噛みあわない。もちろん負ける気なんてサラサラないが、機動力のある遠距離タイプのあいつは、俺にとってかなりの負担だ。他の前で戦うやつも同じようなもんだろ。近づけなきゃ、なにもできないからな」

「だけどお前は――」と勠也が腰を下ろして、オレの額に手を伸ばし、額にかかった髪を耳元へと流した。


「あいつと同じ土俵……どころか、さらに上に立つことができるんだ。これを利用しない手はないだろう?」


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