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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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飛び道具の申し子 1

「っ、雷牙!?」


生徒会室には、二年生以外のメンバーが残っていた。どうやら、二年生は一足先に帰ったらしい。確かに、時間は六時過ぎ。いつもならもう解散の時間である。いないのは無理もない。その時間に、まだ三年――黒塚と水穂が残っていたのはありがたかった。

「どうしたのその傷!?」

「ああ、……ちょっとな」


勠也に抱えられて生徒会室に入ると、見て真っ先に楓が顔色を変えて近寄ってきた。どうやらオレと勠也の帰りを待っていて、まだ残っていたようだ。オレは楓の不安を少しでも軽くしようと、大したことのない風を装った。だが、効果は薄いようだ。

それもそうだ。


……大したことないのなら、自分で歩いてくるはずなのだから。


「瑞希」

「分かったわ」

勠也は、生徒会室の一番奥の椅子に座っている黒塚――の近くに立っていた水穂に目配せする。するとそれだけで得心したのか、水穂は奥まったところにある毛布――おそらく、以前オレが寝かされていたものだろう――を取り出し、空いたところにそれを敷いた。勠也は「頼む」と言ってオレをゆっくりとそこに寝かしつけた。姿勢が変わって、少し体が痛みを発した。顔が少し痛みにゆがむ。それに楓が敏感に反応して、ひどく顔を不安げにゆがめた。

「まあ、大げさに血を吐くってこともなかったから、大したことはないと思うが、一応な」

「任せて」


短くそう返すと、水穂はオレの体に右手をかざし、小さく詠唱を始めた。すると、水穂の右手から水色の温かい光が生み出し始め、その光がオレの体を包んだ。そうすると、オレは体のなかに温かい水が循環するような、形容しがたい優しい心地よさを感じ始めた。水属性が得意とする治癒魔法だ。


治癒魔法は水属性のものと光属性のものがある。水属性の治癒魔法は、主に体の中の傷――毒や麻痺など、所謂状態異常というやつだ――に強い。……今回の内臓を痛めたというのも、あてはまるらしいが。もちろん体の中だけでなく、外傷もしっかりと治せる。ただ、難点は対象がどうしても個人になってしまう点だ。複数人を同時には治療できない。


対して光属性の治療魔法は、外傷に非常に強い。しかも複数人を対象とした強力な治療が可能だ。ただ燃費が悪いのと、状態異常は一切治療できないというのがネックである。光属性と言えば楓だが、楓は治療魔法をまだあまり使えない。治療魔法は他の攻撃魔法と比べて非常に難しく扱いにくい魔法らしく、完璧に習得するのは相当な経験が必要らしい。まだ魔法を使い始めて半年も経っていない楓にそれを強要するのは、酷というものだ。だが、それでも多少でも使える楓は、かなり珍しい部類に入るようだ。黒塚も少し驚いていた。



「さて、と」



水穂の治療が進んでいるのを確認すると、勠也は屈んでいた体を起こして、未だに椅子に悠然と座っている黒塚に向き直った。

「手前のことだ、少しは事情を理解しているんだろう?」

「…………ふむ」

黒塚は勠也の言葉を受けると、長机に肘をつけ顎に手を当てた。そして勠也の責めるような視線に目を合わせた後、ちらとその足元で治癒魔法を受けているオレを眺めた。オレも一応顔だけ黒塚に向ける。その表情からは、やつの考えは読めない。読めたためしもないが。


「……魔法使いと戦闘になったんだね?」


やがて黒塚から出た言葉は、確認を取るようなものであった。それに勠也は軽く頷く。

「ああ。逃げて行ったがな」

「属性は?」

「風だ。しかも、古宮高校(ここ)の制服を着ていたぜ。女だった」

「そうか」

その情報を聞いても、黒塚は動じた様子はない。そこに勠也は言葉を重ねる。

「……手前、知っていたんだろ。あんなのが身近にいたってことを。気づかない筈がねえもんな」

相変わらず長椅子に肘を乗せ、顎に手を当てていた黒塚だったが、やがて嘆息しながら長机の縁に手をかけ、椅子の背もたれにもたれかかった。


「まあ、答えをいえば……『知ってた』よ。こうなることも、ある程度は予想できてた」


「予想できてた、だって……?」

「だったら、なんで雷牙がこうなる前に手を打たなかったんですか!」

オレは思わずつぶやく。そしてオレ以上に衝撃を受けたようである楓が、黒塚に物申す。

「それについては、申し訳ないと思っているよ。出来ることなら、万全の態勢で迎え撃ちたかった。……これは言い訳になるかもしれないけど、予想外に相手が動くのが早かったんだ。おかげで準備が間に合わなかったよ」

やれやれと黒塚は首をすくめる。


「……準備?」

オレは眉をひそめて聞き返す。すると、黒塚は真っ直ぐオレを見つめてきた。

「そ。その魔法使いを迎え撃つ準備。内容はというと、フルミナ君が火属性……出来ればその他も使えるようになるってことだったんだけどね」

「……オレが? どうして?」

「……フルミナ君は、その魔法使いと戦ったときのこと、どれくらい覚えてる? 武器とか、使った魔法とか」

言われてオレは思いだす。


「……武器は、銃を持っていたな。勠也が言うに魔法用に改造されたとかなんとか。それで光弾を撃ってたのかな? 最初の方は切り落としてたんだけど、一回でかいのを飛ばしてきて、それを切ったらものすごい風が発生したな。後は、普通に風魔法だ。……『エアースラッシュ』だったかな? それくらいか」

「なるほどねぇ」

ふぅと息を吐きながら黒塚はつぶやく。そして、黒塚は背もたれから離れ、軽く長机に乗り出すように両肘を乗せた。



「じゃ、相手はさっぱり本気を出していなかったんだ」

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