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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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これが俗にいうガールズトークなの? 1

紅汰と試合をした翌日から、オレの訓練内容は少し変わった。


今までは、『光速』の制御や木刀の素振り、勠也との模擬戦――といっても、勠也は本当の武器である大剣(実は生徒会室に置いてあった、オレが仮面をつけた黒塚と戦いに行ったときに持って行ったあの大剣は、もともと勠也のものだったらしい。なんでも、この学校を離れる時に黒塚に託していたとか。本人はもう手に取ることはないと思っていたらしいが、やれやれと首をすくめながらも、黒塚から大剣を預かっていた)ではなく木刀で戦っていたのだが――の三つを放課後にこなしていた。


基本的に会議の時以外は自由出席らしいが、オレはなんとなく毎日出ていた。どうせ家に帰っても暇…………。


ああそうそう


このタイミングまで言い忘れていたが、オレはこの姿になっても今までの家を普通に使っている。最初は日向家に、謎の外国の少女として家を使うことを渋られていたが、男のオレが親戚と海外にいった(らしい。……ここにいるんだけどな)ということと、その入れ違いにオレの顔なじみとして留学してきた、ということを話したところ、納得してもらえた。もちろん、真っ赤な嘘なのだが、楓のフォローもあってなんとか了解してくれた。今ではちょっとした支援もしてくれているのだが、……よく信じたなと思う、我ながら。


それはそれとして。


もう一度言う形になるが、基本三つの訓練をしていたオレは、さらなる訓練を要求され、訓練内容が変わった。


あの日以来、オレが火を使えるようになるまでは、模擬戦は紅汰とやることになった。これが紅汰は勠也と違い本気で自分の槍を使ってくる上、こっちは魔法で強化した木刀だけで戦うので、かなりしんどい。身体能力向上や『光速』に魔力を注いでいたら、木刀への魔力供給が疎かになったりして、あやうく木刀が燃えかけることもあったし、逆パターン……つまり木刀への魔力供給にかまけすぎて、『光速』が使えないということもあった。しかし、どうしても二つのことを同時にこなすのは困難を極める。両手で別々の作業をするようなものだ。慣れればそれなりに可能らしいが……まだ、無理。オレはまだどちらかに偏りがある状態だ。


ここで本来の模擬戦の目的を振り返ってみる。確か『オレが火を使えるようになるため』だったはず。……しかし模擬戦では、前述の通りそんな余裕はない。結局模擬戦が終わった後、抽象的すぎて何言っているか分からない、紅汰の火を使う感覚というものを聞いて、自力で模索するという形になってしまった。紅汰曰く『気合を入れる感じなんだよ。こう、燃えるやコラァ! みたいな。かーわかんねぇかなー!?』らしい。



すみませんが、何一つわかりません。



でも一応進歩はある。

やっぱり黒塚の言うように、イメージというものは魔法に強く影響するらしい。ほんの少しではあるが、オレも炎が使える兆し――指先からライターみたいな火が出るくらいだが――見えてきた。まあ、加減が分からなくてしょっちゅう火傷を負いかけるんだけど。


変わったのはそれだけではない。むしろこっちのほうが、堪えるかもしれない。


他に追加された内容は……体の使い方及び身体能力向上の使い方と基礎体力をつけるというものだ。

オレの場合、武器が双剣で、『光速』が使える……つまり速さが一番の売りということもあって、奇襲型の戦略にもっとも適しているタイプらしい。奇襲の型にも様々ある。背後から、横から、物陰から……そして、上から。


最近の体や身体能力の使い方訓練は、その上からの奇襲が出来るように、空中での姿勢矯正や着地のときの能力の使い方を練習している。


……練習なんてきれいなもんじゃないな。……あれは拷問だ。


オレは最近、その訓練で四階建ての校舎の屋上から……落とされている。

文字通り、落とされる。そりゃもう、あっさりと。命綱なんてない。


マジで、怖い。


なにも支えるものがなく、体の向きも変えづらい状況で、ものすごい勢いで地面が迫ってくるのだ。ぶつかったら、決して軽傷では済まない、死のラインというものが。

はっきり言って、正気ではいられない。

いや、最初はいられなかった。


今はと言うと……何と言うべきか。強いて言うなら、慣れた。


だって、落とされたのは一度や二度じゃないもん。『人払い』という魔法があるらしく、一般の眼がないのをいいことに、確信犯である黒塚はやりたい放題だ。一応危ないときは魔法で地面への衝突は防いでくれるが、嬉々として落としてくる。


始めの一回目は……その、泣いてしまった。腰砕けで足も立たなかったし、失禁しかけた。しばらくは立ち直れなかったなぁ。あのときのオレは、黒塚を呪い殺すのも出来そうなほど、黒塚を憎んだものだ。今も落とされるときは大概だが。


次に基礎体力のほうだが、これは今までのと比べると平和そのものだ。

ひたすらグラウンドで走ったりを繰り返すだけ。恐怖の突き落としのあとの、心休まる時間だ。体力的にはつらいけど。こっちは、人払いなし身体能力上げるのもなしでやっているので、他の生徒から普通に見られる。おかげで、グラウンドで練習をするクラブの方々と面識が出来てしまった。




   ††††




「あ、ふーちゃん。こんー」

「こんにちは」

クラブ活動もしだいに後半に差し掛かる時間帯ではあるのだが、未だに色々なところから上がる声で賑やかな放課後の土煙舞うグラウンド。そこにオレはランニングシャツに短パン、さらには髪をポニーテールに括るという、運動スタイルでやってきた。夏目前ということもあり、その格好でも冷えることはない。


グラウンド訓練でグラウンドを走り始めてから二週間ほど経っていた。虹色に輝く金髪で小学生のような背格好という、高校のグラウンドにおいて目立ちすぎる姿をしているオレは、外のクラブの方々から注目を浴びていた。しょっちゅう声をかけられる。そんな中、特に親しくなったのは、陸上部にいる一年生の女子であった。

「今宵も相変わらずカワユイのぅ?」

「……相変わらずどう返したら、いいんでしょうか?」

「んやあ、テキトーでいいよテキトーで」

「はぁ……」


「全く、愛梨はこの時間なのに元気ねえ……」

「ホントにね」

ぞろぞろと、オレの周りに三人の女子が集まった。みな、陸上部の一年生である。

「そりゃ、天下の愛梨ちゃんですから? 元気に決まってるでしょ」

そう言って力こぶをひねり出すのは、元気が取り柄のショートカット娘、瀬川愛梨。オレがグラウンドに顔を出し始めて真っ先に声をかけてきたのがこいつであった。愛梨とはクラスも一緒なので、最近はここだけじゃなく、教室でも一緒にいることが多い。


「……もう練習も後半なのに、そこまで元気なのは羨ましいわ……」

苦笑いを浮かべて、袖で汗をぬぐう長身の女子は、木垣麗菜。暴走する愛梨のストッパー的な役を担うことが多い。割としっかりもので、そういうところは楓に似ているかもしれない。


「ま、愛梨はどうせ授業中にしっかり寝てたからね。元気なんでしょう」

皮肉気に首を振る、オレを除いた女子の中で一番背の低いこいつは、南原小夜。こいつもオレと同じクラスだ。無類のアニメ好きで、黒塚のことを尊敬視してるとか。……やめとけと、心の底から思う。


「なにをー! 小夜だって、授業中は落書きばっかりしてんの、ウチは知ってるんだぞ?」

「でも、愛梨と違って起きてるもん。ちゃんとノートも取ってるし」

「うぐぐ……」

「はいはい、いつもの口論は後でいいから。ルミちゃんもきたことだし、私たちも走りましょう? さっきからコーチがこっちをにらんでるから」

軽くにらみ合う愛梨と小夜の肩を、麗菜がぽんと叩く。すると、ふたりはちらりと同時に背後を振り返る。そして、コーチである細身の女性と遠巻きながら目があって、二人とも高速で視線をオレのところに戻した。



「さ、さあもたもたしてられないよ! ふーちゃん、麗菜、小夜。走るわよ」

「そそ、そうね! 張り切っていきましょう!」



「……やれやれ」

「……あはは」

弾かれたように走り出す愛梨と小夜を見つめながら、麗菜は嘆息しオレは苦笑いした。その後、一度顔を合わせて、オレと麗菜は走りだし、先行していた愛梨と小夜に追いつく。


フルミナの日常パートの象徴と思って登場させた三人の女子生徒たちです。魔法のない、表側の世界は彼女たちが彩ってくれたらいいなと思います。


誤字、脱字、修正の指摘、感想をお待ちしています。

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