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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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訓練――なにも考えずがむしゃらにっ 11

『!?』


それに黒塚と紅汰は気づき、口論を止め驚いた表情でオレを見てきた。


「な、なんだよ……」

「い、いや……」

オレは慌てて笑みを消して……少し恥ずかしげに黒塚たちをにらみつけた。それに黒塚は驚きを隠せない様子でつぶやいた。


「……まさかいつもお転婆なフルミナ君が、こんな可憐で儚げな笑顔を見せるとは思わなくて」

「オイラもびびったぞ……。まさかお前、女に目覚めたのか?」

「お、マジで?」

「う、うるせえ違う! んなこと絶対ねえ!! さっきのはちょっとした……おいてめえっ、そんなうれしそうな顔すんなっ!」


オレは顔を真っ赤にして、黒塚のうれしそうな顔を指さして怒鳴った。黒塚はそんなオレを希望の満ち溢れた目で見つめてきた。


「うむー。これはますます攻略し甲斐があるなぁー」

「誰がてめえなんぞに攻略されるかっ!」

「そう言って、最終的には僕なしでは生きられなくなるんでしょ?」

「平然とキモイ台詞を吐くな!!」

「『お兄ちゃんっ。私、お兄ちゃんと結婚したいの!!』」

「二次元に帰れっ!!」

「っ。……帰れたら、帰っているさ……っ」

「そこで心底くやしそうな顔すんのかよ!」


完全に話の矛先はオレへと変わり、いつものような言い争いに戻ってしまった。

こういう会話が『いつものこと』と言うのは、はなはだ不愉快なことではあるのだが。



と、そこで下校時刻十分前のチャイムが、地下空間に鳴り響いた。どこから取り入れてるのか、ここまで聞こえるんだよな。



「おっと、時間か。今日はこれでお開きだね」

大体こういう場合いつも、最後にみんなで黒塚のところに集まってから解散する。だが今日は、黒塚は集合をかける前に、オレの頭をぽんと叩いて、言った。

「ほら、今日は夏目君に相手をしてもらったんだから、お礼をしないと」

「はぁ?」

ばしっと黒塚の手を払いのけながら、オレは何気に黒塚に続いてオレの近くに立っていた紅汰に視線を向けた。


……さっきまで、結構腹の立つことを言われていたせいもあって、オレは少し不機嫌な顔になる。だが、確かに時間を割いて相手をしてくれたのは事実なので、しぶしぶオレはお礼を言おうと――




「さっきは済まなかったな、フルミナ」

「な……っ」




オレが礼を言おうとする前に、なんと紅汰のほうが頭を下げたのだ。

「さっきはオイラが言い過ぎたわ」

「え、あ。……いや、別にそっちの方が正論だったわけだし……」

思いもよらない行動に、オレの顔から不機嫌さが吹き飛んで、代わりに困惑が表に出てきた。


「……どういうことだ?」

思わずオレは横にいる黒塚に小声で聞く。すると黒塚は意外な答えを出してきた。


「ああ。時々聞くから知ってるかもしれないけど、夏目君には槍術や魔法を教えてくれた『師匠』がいるんだ。この生徒会に入る前から、『師匠』から直に教えてもらってたんだよ。そういう経緯を持ってるのって、生徒会のなかでは夏目君だけなんだよね。で、今日はその『師匠』のやり方ってのを夏目君は実行したんだ。『わざと相手を怒らして、何も考えず自然体で戦うようにさせる』。実はね、夏目君もフルミナ君と一緒で、槍を使い始めた時同じように考えながら振ってたんだって。きっと夏目君、フルミナ君の戦い方に昔の自分を垣間見たんだろうね」


「……」

オレは未だに頭を下げる紅汰を眺めた。


要は紅汰は、昔自分が受けてきた教えを、同じ間違いを犯していたオレに対してしてくれたということか。『弟子』としてうけた教えを、今度は『師匠』となってオレに示してくれたと。

「夏目君、言ってたよ。この教えは、最後しっかり謝ることが重要なんだ、って」

「……だからか」

あまり謝るということをしない紅汰が、突然こうして頭を下げている。それも『師匠』の教えというやつらしい。どれほど紅汰がその『師匠』とやらを尊敬しているかが、よく分かった。



「……顔を上げてください」

オレは小さくため息をつきながら腰に手を当てて、頭を下げる紅汰に言う。それに紅汰はゆっくりと顔を上げ、うかがうような目線をオレに向けてきた。

「事情は分かりました。まったく、らしくないことをするから驚きましたよ」

「……らしくねえとは心外だな。オイラだって考えるときは考えるよ」

オレがそう言うと、むっと、顔をひきつらせながら紅汰は口を三角にして言った。


「……とにかくっ。今日はありがとうございました」

ぺこりとオレは頭を下げる。すると今度は紅汰のほうが困惑気に顔をゆがめた。

「いや、別にいいけどよ……。てかお前、なんで急に敬語なんか……?」

「先輩がそうしろって言ったんでしょ? それにオレの気が変わっただけです」

そう。ほんのちょっと気が変わっただけだ。やはりいくら無鉄砲でがさつな紅汰でも、オレよりもはるかに経験豊富な『先輩』なのだ。ちゃんとそれには敬意を払おうと思った次第である。


「確かに言ったけどよ……なんか調子狂うな。……ま、いいか。本来求めていたものなんだろうし」

がりがりと頭をかいていた紅汰だったが、さっさと開き直り、大きくうなづいた。

「うっし。今日は終わりだな。まだ炎は使えてねーみたいだから、明日も似たようにすっぞ。明日以降、今日の最初みたいな戦い方は認めねーからな」

「おーい、お前ら早く集まれよー」オレへの話は終わったとばかりに、紅汰はまだ集まっていなかった面々に声をかける。


「なんだかんだ言って、夏目君は部下に慕われるタイプだよねー」

ぞろぞろと生徒会の役員が集まってくる中、黒塚はオレにだけ聞こえるような声でつぶやいた。

「まあ、確かにそんな感じだな」

落ち着きなく、早く早くと声をかける紅汰を眺めながら、オレは黒塚の言葉にそう返した。

改めてみると、紅汰先輩の特性が火属性っていうのは、なんかしっくりくるよな。こう、熱血というかさ。



「……ところでさフルミナ君」

「ん?」

改まった様子で口を開いた黒塚を、オレは横目で見上げた。



「僕も一応上級生なんだけどなー。夏目君に……いや、他の上級生には敬語を使うのに、なんで僕にはないのかなー? まさか、やっぱり僕にだけ特別にツンデ……」

「そういうお前には、絶対敬語なんて使ってやらねえよ!」




いろいろと終わってすっきりした気分に、ものの見事に暗雲をたちこめさせる黒塚の言葉であった。

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