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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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訓練――なにも考えずがむしゃらにっ 4

「……さて、今日集まってもらった理由を説明しようか」

生徒会室地下室。ただっ広く、きれいに整備されつつも強固な印象を受けるその空間に、役員たちは移動していた。


「今日の主役は、フルミナ君。君だよ」

右頬に、先ほどオレがかましたビンタの跡をくっきりと残した黒塚が、周りに集まっていた役員たちを見回した後、最終的にオレのほうに視線を投げかけてきた。


「…………」


オレは不機嫌そうに腕を組みながら、横目でその視線を受ける。その頬は、ようやっと元の白い肌に戻ったが、先ほどまではほんのりと上気していた。


「ごめんごめん。謝るから、機嫌治してよ。じゃないとこっちも説明しづらいからさ」

にこやかに言うその言葉には、あんまり誠意というものは感じられなかった。……だが、黒塚がまともに謝ったら、それはそれでなにか恐ろしい……そう思ったオレは、大きなため息をはいた後、横方向に少しずれていた体を、黒塚の方へと向けた。


「……で、オレが主役ってのはどういうことだ?」

「そのままの意味だよ」

すると黒塚は、右手の人差し指を立てた。


「今まで君は、雷属性だけに特化してきた。一番特性が高いし、なにより最初の魔法。覚えたてだったから、それ以上の器用なことはできなかったしね。まあ普通前で戦うなら、その一色特化でもなんら問題はないんだけど、君にはそれをさせるのは、あまりにもったいない」

「そこで、だ」と黒塚は人差し指に続いて、中指を立てた。


「これからフルミナ君には、雷に続いて他の属性も習得してもらう」


「……他の、属性を習得する、のか?」

「そうさ。まあ、まだ雷も満足には扱えていないから、どうしても片手間になるかもしれないけど、後々に延ばして習得そのものを遅らすよりはいいと思うんだ」

「その方が戦闘の幅も広がるしね」と黒塚は言った。それを聞いて、オレはさっきの不機嫌な気分が吹き飛んだ。


雷以外が使えるようになったら、すごいんだろうな……っ。


言いようのない高揚感が、オレの中に起こった。


「一体どの属性を習得するんだ?」

「お、やる気になってくれたね?」

黒塚はオレの反応に満足そうに微笑んだ。


「でも、その前に属性の関係について見ておこうか」

そう言った黒塚は、水穂に目配せをする。すると水穂は、手に持っていた割と大きなボードを、オレのほうに見せてきた。


そこには、風、地、水、火と中に書かれた丸が四角の四隅にあたるようにして描かれ、少し離れた場所に、同じく光、闇と中に書かれた丸が、こっちは上下に描かれていた。


「基本的には、この六つが属性の種類なんだ。それ以外の属性……たとえばフルミナ君の雷や勠也の氷は、この六属性の派生属性にあたるんだよ」

と、水穂がボードを掲げると、黒塚がいつの間にか手に持っていたさし棒で、とんとんとボードを叩いた。



あんな感じに属性を並べると、なんだか……。

「……なんか、ほんとゲームみたいだな」



「そうだね。だから補習常連のフルミ……雷牙君でも、覚えるのは簡単でしょ?」

「……なんかひっかかる言い方だが、ん……まあ、そうだな」

眉をひそめつつ、オレは同意した。……補習常連も間違ってはいないし……。


重くなる気分を、軽く頭を振り退散させる。すると虹色に輝く金髪が、舞うように揺れるのが目に付いた。


……本物のフルミナ・レーゲンは、頭良かったのかな?




「次に各属性の特徴について言おうかな」



自分の髪を一房つまんで、そう思いながら眺めていると、黒塚がさっさと話を始めた。オレは慌ててつまんでいた髪を放し、ボードを眺める。

「えっと、まずはこれかな。火属性」

そう言って、黒塚は火を大きくさし棒で囲った。


「火属性は、攻撃面に特化した属性だね。補助魔法が少ないけど、それに頼らなくてもやっていけるほどの破壊力を秘めた属性でもあるね。うちの生徒会で火の特性が一番高いのは、夏目君だね」

「まあ、オイラは身体能力上げたり技で使うくらいで、魔法らしい使い方は滅多にしないけどな」

黒塚の言葉に補足するように、紅汰は言った。


「次に水属性にいこうか。水は、瑞希君の特性だね」

そう言って、黒塚は水穂のほうに手を差し出す。水穂は「ありがとうございます」と、差し出された手に、持っていたボードを差し出した。


「……水は基本的に支援、補助色が強い属性です。もちろん身体能力も上げられるのですが、前衛として扱うのは、あまりおすすめできません。後衛特化の属性とも言えますね。……ちなみに、勠也の使う氷は水の派生属性となります。もともとの水の特徴とは違い、こちらは出来るだけ攻撃面に特化させたものです。火属性を少し支援、補助寄りにしたような立ち位置ですね。威力は火に劣りますが、攻撃魔法を絡めた多彩な攻撃が可能です」

淡々と水穂が説明する。オレはちらと隣の勠也を見上げたが、勠也は肩をすくめただけで、何も言わなかった。


「ありがとう、瑞希君。教科書通りって感じの説明でよく分かったよ。それじゃあ、次に地にいこうか。これは、山城君の特性だね」

ボードを水穂に返しつつ、黒塚は山城を見た。山城は小さくうなづくだけで、無言。あはは……、と黒塚は苦笑いすると、小さく咳払いした。


「えっと。地属性は防御特化の属性というべきかな? 強力な防御魔法や、身を硬くする身体能力向上が特徴さ。ずっと前で戦うことも出来るし、強固な守りで後ろを守る盾にもなれる。いやはや頼りになるよ」

そう黒塚が言うと、少し照れくさいのか、山城は肩をすくめてうつむいた。その様子を、隣にいる歩美が実に微笑ましそうに――両目は相変わらず閉じられているが――見つめた。


「さーて、次は風属性だね。残念ながら、もっとも風を得意とする人っていうのが、この生徒会にはいないんだよね。風属性の魔法は瑞希君が使えるんだけどね。ちなみに、フルミナ君の雷は風の派生属性なんだよ」

「ん……」

急に話が振られて、オレは一瞬たじろいた。


「……そういえばあんた、仮面付けてたあのとき言ってたな。風属性は機動力重視……なんだっけ?」

「おお、覚えてたんだ。偉いねー」

「ムカつく反応ヤメロ!」

あははと黒塚は笑った。それにオレは少し不機嫌に逆戻りし、じとっと黒塚をにらんだ。


「そう。風属性の特徴はその機動力、それに万能性さ。攻撃も出来て、遠距離魔法も、補助も出来る。戦闘の幅が一番広い、オールマイティーな属性だね。その分、特化ってほどの強さを得るのは難しい属性でもあるんだけど。ただどの役割も可能な分、弱点も少ないね。雷は、風を少し攻撃側に傾けた属性だよ。稲妻のような力強さ、それが雷の特性だね」

「ふーん。なんか、俗にいう序盤強いけど、後々お荷物になっていく……みたいな属性だな」

「君の特性だよ? 基本派生だから根っこの部分は同じだからね」

「う、ぐっ……」

なんとなく思ったことを口にするべきではなかった。いたく傷ついたっ!



「いやー、ちゃんと対策はあるよ?」

「……ほんとか?」

「うん。用は全部特化属性に負けないくらいの性能にすればいいのさ☆」

「それを人はチートと言うんだよっ!!」



「いいじゃない、チート。カッコいいよー? 主人公補正だよー?」とわけのわからないことを黒塚はほざく。確かにチートがあれば楽だろうけど。

「要は使いようってことだよ。どこでも戦えるってことは、それだけ前後両方の戦略に参加することができるってことさ。いるといないのとでは、結構変わるもんだよ?」

「……そういうもんか?」

「そういうもんさ」

黒塚の補足説明に、オレは釈然としないながらも一応納得はした。風って、一番難しい属性なのかもしれない。


「ま、次に行こう。あとふたつ。次は光属性かな。これは日向君の特性だけど、実は光が特性って、結構珍しいんだよね」

「あ、そうなんですか?」

楓が驚いたように言うと、黒塚は頷いた。


「そうさ。光属性っていうのは独特な魔法で、範囲がやたら広いんだ。それに、支援・補助も優秀だし、攻撃魔法も威力が高い。後衛のスペシャリストってとこかな。まあ、そのぶん水属性に比べて燃費は非常に悪いけどね。それと光属性が特性って子は、大体他の属性は使いにくいんだよね。よく理由は分かってないんだけど。現に日向君も、光属性以外はからっきしでしょ?」

「そう、ですね」

少し考える素振りを見せた楓だったが、やがてこくんと頷いた。



「……とまあ、こんな感じでー。次は属性の関係に――」



「っておいおい、まだ闇が残ってるだろうが!」



さりげなく話を先に進めようとした黒塚に、慌ててオレはボードを指さしながら言った。それに黒塚は露骨に嫌そうな顔をする。


「えー、いーじゃん。どうせ闇なんて興味ないでしょ?」

「あんたの属性だろうが。一番説明しやすいんじゃないのかよ?」

「自分の属性だから渋ってるのにー」

「別にあんたに『恥ずかしい』なんてまともな感情ないだろうか」

「失礼だなフルミナ君。これでも僕はかなりのシャイボーイなんだよ?」

「……どの面下げてそんなことを……」




「……闇属性――」




と、オレと黒塚が問答を繰り返していると、不意に勠也が口を開いた。


「……主に相手の動きを奪う魔法を得意とする。また『呪い』という、全属性の中で最強の間接攻撃を有する属性でもある。攻撃魔法に秀で、機動力も風の次点にくる。ただ、その他の身体能力向上の恩恵は、同じ闇属性でも個人差が出る特異な性質を持つ……だったか?」

最終的に皮肉気に口元をゆがめながら、勠也はじっと黒塚を眺めた。黒塚は、珍しく困った顔をした。


「……さすが勠也、よく分かってるね」

「俺は馬鹿じゃないからな」

ふん、と勠也が鼻を鳴らすと、黒塚は口元を悔しそうにゆがめた。


……それにしても、闇属性ってその名の通りだな……、呪いって。


その上、拘束魔法ねぇ……。



「ほら、勠也がそんなこと言うから、フルミナ君が僕を冷たい目で見てきてるじゃないか」

「知らん」

「よく見てよ、あの眼。『あー、なんかこいつらしいわ』的な眼だよ!」

「さりげなくひとの心を読むんじゃないっ」


一字一句同じことを考えていた。これも闇属性の魔法の一種なんだろうか? もう怖いんだけど。


「あー、大丈夫だよフルミナ君」

そう言って、黒塚はにこやかな顔に戻り、軽く手を振った。


「僕が拘束するのは、基本的に可愛い幼女だけだから」

「それのどこが大丈夫なのか、オレは激しく問いただしたいっ!!」

「そんな激しくなんて……フルミナ君大胆だね」

「お巡りさーん! ここの変態をなんとかしてしてください!!」

オレは生徒会役員しかいないことを分かっていながら、それでもそう叫ぶことを抑えられなかった。


てかよく考えると、一度拘束されたオレは……つまりは可愛い『幼女』に分類されてるのかっ。

くっ、ナリ的に地味に否定できない!



「……とまあ、冗談はこれくらいにして」

「冗談がすぎるわっ」

「……本音はこれくらいにして」

「その言い直しっ!? 余計たち悪くなったし!!」

「しがない僕の願望さっ」

「そんな犯罪願望持つんじゃねえ!」




「……いちいち反応すると、疲れるだろ」



ぜーはーぜーはーと肩で息をするオレを見下ろしながら、勠也がさりげなくつぶやいた。


長かったり短かったり、安定しなくて申し訳ないです。


この話は、基本的に魔法についての説明になりましたね。各属性の特徴は、私個人のイメージなので、違和感を覚えるところもあるかもしれません。


誤字、脱字、修正の指摘、感想をお待ちしています。

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