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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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訓練――なにも考えずがむしゃらにっ 2

「あはは……またぶつかっちゃったね」

「そ、そうですね」

少女は苦笑いを浮かべながら、オレの手を取って身軽な様子で立ち上がった。


「……」

少女は黙りこみ、頭一つ分小さいオレをまじまじと眺めた。オレは居心地悪く身をよじらせる。



「な、なんですか?」

「……君、ここの生徒さん?」

「そうですけど」

「じゃあ……高校生?」

「そう、ですね……」


なるほど、そういうことですか。オレは少女がオレをまじまじと眺めた理由を理解した。



ようは、オレが高校生だと思ってなかったということだろう。



「……ごめん、私てっきり小学生の子かと思ってた」

「……だろうと思った」


その証拠に、少女はそう口にした。オレは肩をすくめてため息をついた。


そりゃあ、今のオレは誰が見ても小学生くらいの女の子にしか見えない。それはオレも納得している。だってオレ自身、毎日鏡で見ててそうとしか見えないもんな。


「ごめん、気にしてた?」

「……いや、別に。それより、ここの生徒だったんですね」

オレは少女の服装を見ていった。


「いやいや、正式にはまだ違うんだ。私、来週からここに通う予定なの」

少女は真新しいブラウスの胸部分を、軽く引っ張りながら答えた。

「今日は時間があいたから、ちょっとそれっぽく歩いてみてたの」

「そうだったんですか」

「そうなの。……ところで今更なんだけど、君まさか上級生とかじゃ……ないよね? 一応聞いとくけど、何年生?」


不意に心配そうに少女が聞いてきた。どうやら、急に不安になったらしい。オレはこの姿で高校生だ。この時点で、正確な学年判断は出来ないからな。


「一年生ですけど」

「あ、そうなんだ。実は私も一年生なの」


オレが言うと、少女はふう、と安堵した後、うれしそうに自らを指さして言った。

「同じクラスになれるか分からないけど、来週からよろしくね!」


と、少女がふわりと両手でオレの手を取って、ぶんぶんと振ってきた。オレはなすがまま振り回されながら、「ど、どうも……」と若干頬を赤らめながら答えた。

はたから見たら、女の子二人が仲良く手を取って遊んでいるように見えるかもしれないが、オレにとっては、異性からがっちりと手をつながれた形になる。すごく気恥ずかしさを覚えるわけだ。


「そうだ、まだ名前を聞いてなかったね。私の名前はソロナ。ソロナ・フライハイトっていうの。君は?」

はたと立ち止まって、少女――ソロナはにこやかに言ってきた。オレは、いまだにソロナに取られている左手を――ソロナの温かさ感じながら――なんとなく見ながら、ぼそぼそと答えた。


「……ほうじょ……、ふ、フルミナ・レーゲンってイイマス」

「おおー。フルミナ・レーゲンって、確かおとぎ話の英雄様の名前だよね? すごいね君、英雄様と同じ名前なんだ!」


「え……? ああ! うん、そうなの。……お、お母さんがその話、好きらしくて……」

おとぎ話と聞いて一瞬オレは疑問に思ったが、すぐにこくこくと頷いた。

そうだ、前のオレもそう思っていたじゃないか。あれは『おとぎ話だ』……て。

今でこそこんな状況になって、あれはおとぎ話じゃないって認識してるけど、普通の人はそうじゃないんだ。


「へえー、そうなんだ」

幸い、オレの逡巡には気が付かなかった様子で、ソロナは気さくな感じでそう言った。


と、そこでソロナが、自分の右腕にはめている腕時計を見つめて、あっと顔を驚かせた。

「もう迎えが来る時間だ。じゃあ、また来週に会おうね!」

「あ。……うん。そう、だね」

「じゃあねー!」と言い残し、ソロナは近くにある階段を下って行きすぐに姿が見えなくなった。


「……あー、女言葉は慣れん。疲れるわ」

完全に足音も聞こえなくなったところで、オレははぁとため息をついた。


黒塚をはじめ生徒会のメンバーは、オレの『元の』姿……つまり、オレが男で、今の姿はフルミナ・レーゲンの体を借りている――黒塚は転生に近いと言っていたが――ということを知っている。だから別にオレが男の口調で話そうが、ごく自然に受け入れてくれていた。


しかし、元の姿が男だから男の口調で話すというのは、オレがこの姿に変わったあの瞬間を見ていない者、さらには魔法の存在を知らない一般人には通用しない。男口調で話そうものなら、ひどく不審な目で見られるということは、実は体験済みなのであった。


それからは、生徒会メンバー以外の人と話すとき、または話を聞かれるときなどは、意識して女口調で話している。気持ち敬語を多めにして、それ以外は概ね楓をまねている。


これが慣れないうちはひどく違和感を覚えるのだ。最初のうちは、口にするだけで真っ赤になっていた。今はそこまでではないが、やはり自由自在にとまではいかないというところか。


「……さぁーって、オレもそろそろ帰ろ――」

ぐぐぐ、と両手をバッグごと大きく天に揚げ、その場で伸びをした姿勢のままで、オレは一瞬固まった。




「……ってやべぇ! 会議!!」




そして呻くように言いながら、ばっと一気に両手を下ろした。虹色に輝く金髪が軽やかに揺れる。



「急がねえと!!」

オレは一気に床を蹴って、北校舎に移るための連絡通路に飛び出した。


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