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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第二部 ガンスリンガー
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新たな日常風景 3

「さて、みんな集まったみたいだから会議を始めるね」


そう言って黒塚は一度部屋にいる役員たちを見回した。


基本的に話の内容は、日々の学校のことであった。「一応僕たちはこの学校の生徒会……生徒たちの代表だからね。魔法云々だけじゃなくて、こういう『それらしい』活動もばっちりあるのさ」というのは黒塚の言い分である。

「……と、まあ細々したことはこんなもんかな。さて次が呼んだ理由でもあるんだけど。みんな、明後日の日曜日は空いてるよね?」


「日曜日ぃー? なんでや?」

そう嫌そうに聞いたのは、夏目紅汰だった。黒塚はそんな紅汰に苦笑いを浮かべながら言った。

「うーん、実はとある先生からの頼まれごとでね。この日曜日、僕たち生徒会はちょっとしたボランティア活動に参加しなくちゃいけなくなったんだよねー」

「はぁー? なんの?」

「ま、簡単に言うと駅前で募金活動」

「うわ、面倒くさいな! そんなんで休みがつぶれるんかい」

「確かに面倒だけど、そう不謹慎なことをいうべきじゃないよ?」

渋る紅汰を黒塚がなだめる。だが、面倒だなと思ったのはオレも同じだったので、紅汰が渋るのもよく分かった。


「えっと、一体なんの募金なんですか?」

おずおずと楓が質問する。すると黒塚は紅汰から楓に視線を移した。

「ああ。みんなもニュースとかで見たでしょ。とある国の森で、猟奇的な事件が起こったって」

それならオレもよく知っていた。最近のニュースはそれの話でもちきりだからだ。


確か、ヨーロッパのほうだったか。とにかく名前もよく知らない小さな国の、これまた小さな町の付近の森で、数日前に人間や動物の数百もの死体が見つかるという、悲惨な事件が起こった。死因も様々で、銃殺されたものもいれば、体を真っ二つに切断されたものいた。なかには、窒息死したものもいたらしい。


現場を目撃したという動物学者は町の知人に、犯人を『人間の皮をかぶった悪魔』と語ったらしいが、その後は恐怖におびえ、とても情報を聞き出せる状態ではなかったそうだ。数日経って、ようやく学者はその時の様子を語りだした。犯人は十五,六歳程度の細身の少女で、髪が緑色、武器は二丁拳銃……。


しかし、この情報は定かではない。月光の中であったので、実際に緑色の髪なのか、ということもあるし、武器が二丁拳銃では、切断死体や窒息死体の説明がつかないという意見もある。そうするとグループによる犯行なのか。

……様々な憶測が飛ぶが、それ以上の犯人の有力な手がかりもなく、捜査は難航中とのことであった。


「まあ、その事件のせいで、森の土壌が血を吸って著しく汚染されたらしいんだ。それをきれいにするには、膨大なお金がいるんだって。それの募金らしいね」

よっこらせ、と黒塚は長机の下から小さな募金箱を引っ張り出した。

「ちゃんと人数分あるからねー」

ぽんぽんと募金箱を叩きながら黒塚は言った。紅汰が露骨に嫌そうな顔をする。


「……あーオイラ、日曜日は……」

「なにも予定はないはずだよね?」

「……実はダチと約束が……」

「ああ、あのバスケ部の子とサッカー部の子だよね? ちゃんと断っておいたから大丈夫だよ」

「はぁ!? 何勝手に……てか、以前になんであいつらのこと知ってんだよ!」

「僕の情報網を甘く見ないでほしいね」

自慢げに黒塚が威張る。くっ、と紅汰は唇をかむ。


「んー、まあいいんだよ参加しなくても。代わりに別のことやってもらうから」

「んだよ、別のことって?」

「そうだねぇ……」

そう言って黒塚は紅汰に歩み寄り、ひそひそと紅汰だけに聞こえるように何かを言い始めた。みるみる紅汰の顔が青ざめる。


「わ、わかった行く行く行かせていただきます!!」


「うん、その言葉を待っていたよ」


……いったい何を言われたんだ……。いや、聞く気にはなれないが。


「ともかく、みんなもいいね。明後日の日曜日、時間は朝の九時、駅前の広場に集合。昼以降もやるけど、昼ご飯は先生のおごりらしいから、心配しないでね。ああ、あとこれは課外活動の一環だから、制服で来るように」

黒塚が紅汰から目を離し、役員全体を見回しながら言った。


「うわー、昼以降もやるのかよ……」

紅汰ではないが、オレもその言葉を聞いて若干嫌そうな顔をした。その様子を見て、黒塚はあははと笑った。

「大丈夫だよ、そんなつらい仕事じゃないから。この箱を持って、声出して目立つようにしてればいいから」



「……目立つように、ね」



と、そこで黙っていた勠也がぼそっとつぶやいた。

「話はそれで終わりか、鎌?」

「うん、そうだね。言うことは言ったからね。今日は解散かな」

「……そうか」

そう言って勠也は、ふっと小さく息を吐いた。


「だ、そうだぜ。帰るか、雷牙、楓?」

「あ、おお……」

突然の勠也の提案に驚くオレと楓。確かに、勠也と帰るのはいつものことなんだけど。それにしては、急というかなんというか……。






「ということだ。お先に帰らしてもらうぜ先輩方?」

オレらを先に部屋の外へ出して、最後に勠也がそう言って部屋を後にしようと――



「ああ、そうそう」



ふと、勠也は立ち止まった。そうして背中越しに黒塚のほうを見た。



「『詳しい話』は後で聞く。……じゃあな」



そう言い残して、勠也は生徒会室を出てオレらのほうにやってきた。

「なんだよ、詳しい話って?」

「なにか会長さん、すごく苦笑いだったんだけど?」

オレと楓は、勠也の隣を歩きながら勠也を問い詰めた。勠也は「だろうな」と意地の悪そうに笑った。


「「?」」


勠也が何を納得しているのかが分からない。オレと楓は顔を向き合わせて、同時に首をかしげた。


「まあ、あいつのことはそれなりに知っているつもりだからな。なんとなく分かったのさ」

「分かったって……なにがだよ?」

肩を竦めつつそう言った勠也に、オレは勠也を見上げた。


「気を付けろよ、雷牙、楓?」

勠也は一度オレらのほうを振り向いた後、正面に向き直りながら言った。





「鎌のやつ、なにか隠してるぜ」


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