いあ、オレはこういう収束の仕方は望んでないぞ! 2
「……と、言うわけで今日からこのクラスで一緒に学ぶことになった、氷室勠也君と、留学生のフルミナ・レーゲン君だ」
『よろしくお願いします……』
黒塚の騒動が解決した翌日。オレと勠也は、真新しい制服を着こなして、一年二組の教室の前に立っていた。
「(どうしてこうなったんだよ!?)」
「(知らん。生徒会に入るには、ここの生徒である必要があるんだとよ。文句は鎌のやつに言ってくれ)」
「(もう大いに文句は言ってきたよ! でもなんか無駄に準備はいいし、口車に乗せられて引くに引けなく……て言うか、お前あいつと同期って聞いたぞ! なんで一年なんだよ!)」
「(一年の時に一度ここを去ったからだ)」
「(じゃあ、前はここの生徒だったのかよ! ……の割には、先生は誰もお前のこと知ってなさそうだったぞ?)」
「(……どうせ鎌のやつがなにかしやがったんだろうさ)」
「あー、君たち。君たちの席はあっちだ。ほれ、行きなさい」
ひそひそと話し合うオレたちの背中を、担任がせっせと押した。オレたちはしぶしぶ後ろの方の席に座る。
「えー、もうひとつ連絡だ。今まで一緒に……といってもそれほどいなかったが、宝条雷牙君は、親戚の関係上海外に行くことになったそうだ」
「は、はぁっ!?」
オレは思わず大声を出して立ち上がった。すると、一気に視線が集まってきたので、「ぁ……」と小さく呻いて、真っ赤になって座った。
「あー、いいかね? しかし、本人や親戚たっての希望で、一応この学校に籍は置いておいてほしいとのことだそうだ。だから宝条はしばらく休学状態になるということを知っておいてくれ」
「……なん、だって……?」
オレは今知った情報に驚愕した。
いや、宝条雷牙はここにいますよー!! て感じだ。
「……鎌の野郎、また適当なことをしたな」
ぼそっと、オレの後ろの席から勠也が言った。
「……やはり犯人はあいつか」
オレは頬を怒りでぴくぴくさせる。
あの野郎……すぐにでも張り倒しにいってやろうか……っ!
「……そいうえばお前、足は届いてるのか?」
不意に勠也が面白半分な様子で聞いてきた。
それにオレは小声だが、堂々と言った。
「……届いてないよ、悪いかっ!!」
はっきり言って、小学生以上には見えない背格好だ。高校生用のいすが合うわけがない。
「よくもまあ、そんなナリで入学できたもんだな」
「……自分のことだが、オレも不思議で仕方ないわ」
ため息交じりにオレはつぶやく。
合わない、といえば、この制服もそうだ。
黒塚からもらったこの古宮高校の女子用制服は、市販のサイズの一番小さいものよりさらに一回りほど小さい特注品らしい。それでもすがすがしいほどに袖は余っている。ハンガーに掛けて拝んだ時には、こんな小さいの入るかよとか思った過去の自分が羨ましい……。
「しかしまあ、やはりこういうことになったか」
オレが沈んだ顔で制服の袖を眺めていると、やれやれと言った感じに勠也が言った。
「……どういうことだ?」
「うすうす予感はしていたんだ。初めてお前を見た日からな。お前には魔法の素質があると気づいた時に、もしかしたら鎌のやつ、俺ごと生徒会に引き入れるんじゃないかってな。だからあの時病院で言っただろ? またな、て」
そうか、あのときの『またな』はそのためのものだったのか……。
「……同期だけにしては、やたらあいつのこと分かってるみたいだな?」
オレが勠也の話ぶりに疑問を呈すると、「そりゃあな」と勠也は言った。
「あいつとは、昔からの付き合いだからな。腐れ縁ってやつか。ついでに言うと、瑞希のやつも俺のことは知ってるぜ」
「へえ、そうだったのか。道理で親しげだと思った」
「あいつはホント、底知れないやつだよ」
「……分かる気がする」
オレは苦笑いを浮かべながら同意する。
「ま、なんにせよ、だ」
と、勠也は拳をオレのほうへ突き出す。
「これからよろしくな、『フルミナ』?」
それにオレは、口元に笑みを浮かべながらその拳に自らの拳を合わせる。
「……いやだからオレは男だっての!」
第一部完です。
ということなので、これの投稿と同時に章を付け足しました。
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