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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第一部 小さな英雄
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『光速』習得 3

「……くくく、時間だ」


男は急に動かなくなった雷牙から目を離し、肩に担いだ大剣を握りなおして、楓のほうを向いた。

「……いくぞ」

そう言って男は大きく大剣を振りかぶった。

そして、


「……っせいやっ!」


振り下ろした。

だが――


ザクッ



振り下ろされた大剣は、楓をとらえることができず、地面を深く削った。

「……さすがに、速いな」

男の目の前から、楓は消えていたのだ。


楓は――


「……おせぇよ、てめえ」


遥かに離れたところで、

雷牙に抱えられていた。




   ††††




不思議な感覚だった。


頭の中に声が響いたと思ったら、ブレスレットから魔力が流れ出した。

その直後には動き出していて、次の瞬間には楓を助け出して、男から離れていたのだ。


ありえない速さだった。


下手をすれば、オレの金髪と相まって光の軌跡に見えたかもしれない。


だが、


そのなかでオレは鮮明に感知することができた。

風を切る音や流れる風景を、この耳でしっかり聞き、この目でしっかりととらえることができた。


オレはなんとなく、悟った。


オレはこの瞬間、『光速の世界』の住人になったのだ、と。





「くくく……ようやっと本気を出したか」

「ああ、遅くなって悪かったな」

オレはゆっくりと、楓を近くの壁に寄り掛からせた後、男のほうを向いた。男を軽くひと睨みする。

小さく詠唱。


「……っ」

そして男の顔めがけて電撃を放った。

「……なんの、つもりだ……っ!?」

男は首を動かしただけで雷撃を避けた。


しかし、息を飲む。


いつの間にか手に持った大剣が消え失せていたのだ。

ついでにオレもいない。

それはそうだ。


だって――


「これを取り返したかっただけだ」



オレは、大剣片手に男の背後に回っていたからだ。


「……この短時間で習得したか。器用だな」

「器用が取り柄らしいからな」

軽口を言いつつ、オレは両手に大剣を持ち、最初と同じ体勢になった。


「……はぁっ!!」


オレは気合の声とともに一歩踏み出す。

そして、


一瞬で姿が霞んだ。


「……む」

と思ったら、男の黒いコートの腕の部分がスッパリと切れて、男の腕があらわになっていた。


「……うまく避けるもんだな」


オレはその一瞬で、楓のいる位置まで移動していた。


「……でも次は、外さねえっ」

オレは再び大剣を構える。

その時バチバチ、とオレの周りで電気が弾けた。


男はその様子を見て、ひどく落ち着いた様子で、片手を顎に当てながら言った。


「……さしずめ、虹色の電撃姫、というところか?」


それにオレは、むっと眉を寄せる。


「姫じゃねえ、オレは男だっ」


この男に言っても意味はないのだろうが、オレは力説した。

男はオレの様子に、男はしばしオレのほうを、まじまじと見つめた。


そして――




「っははははは! あーはははは!」




盛大に笑い始めた。


「な、えあ……え?」

オレは突然の男の豹変ぶりに、かなり戸惑う。

「え、なんだよ一体……」


「ったく、馬鹿なことをするからだ」


と、不意に後ろから新たな声が聞こえた。

「っ!?」

慌ててオレは、その声の主を確認すべく振り返った。


そして、


驚愕。


「まったく、悪趣味な呼ばれを受けたと思ったら、どういうつもりだこれは?」



「お前、氷室勠也っ!?」



オレは声の主を指さしながら、大声を出した。

なんと、オレの後ろに立っていたのは、病院で会ってそれっきりであった、氷室勠也であった。


「ん? なんで俺の名前を知ってるんだ?」

勠也はオレを見下ろしつつ不審げに言った。

「なんでって、それは――」

とそこでオレは、ふと気が付く。


あ、そうか。こいつは知らないんだ。オレが――


「そりゃ、知ってるよ。その子は先日、君に直々に名乗られた、宝条雷牙君だからね」

「えっ!?」

突然、男が声変えをやめ、地声で話し始めた。その声を聴き、オレは耳を疑う。


え……てか、その声その口調は……。


「……よく分からんが、とりあえず先にその悪趣味な仮面をとれ」

「はいはい、君ならそう言うと思った」

勠也が言うと、男は意気揚々と仮面を取り始めた。


……おいおいおい。仮面の怪しげな男って、まさか……。


「いやー、仮面って結構蒸れるね」




「か、会長っ!?」




驚くべきことに、仮面の下は、にこやかな顔をした会長こと黒塚鎌、その人であった。


久しぶりな勠也の登場です。

そしてびっくり展開、のはず?


誤字、脱字、修正の指摘、感想をお待ちしています。

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