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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第一部 小さな英雄
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魔力を体験

「……さて、それじゃあ魔力制御の訓練をしようか」


「…………」


オレは何とも言えない表情で黒塚を見る。


服を買って生徒会室に帰ってきたオレは、動きやすい方が良いと思い、さっそく買ってきた短パンスタイルに着がえ、さてやるかと気合を入れた。


一方黒塚の奴は、オレの姿に「ボーイッシュも悪くないねえ!」と興奮しだしたが、水穂に黙らされていた。

さっきの言葉は、頭にでかいこぶを作りながらの発言であった。


「と、いっても最初にできることなんてそんなにないから、付き添いは僕だけでもいいんだけどね。みんなは帰りたかったら帰ってもいいよ」


「お、そうか? んじゃ、お言葉に甘えて」

そう言って紅汰がそそくさとバッグを手に取り始めた。

「堅冶、歩美。どうせオイラ達ができることはないんだ。帰ろうぜ」


言われた山城と歩美はほかの役員たちを眺めたが、やがて各々バッグを取り始めた。

「ごめんねー、お先に失礼しますー。頑張って魔法使えるようになってね~」

「……頑張れ。お疲れ様でした」


「ああ、お疲れ様」

黒塚が返事をすると、二人は先に出た紅汰の後を追って部屋を後にした。


「……瑞希君は帰らないのかい?」

ちらと、水穂を見ながら黒塚は言った。すると水穂は、

「会長がなにか仕出かすのではないかと、心配なので残ります」

「あはは、信用薄いなー」

黒塚は苦笑いを浮かべ、今度はレオンのほうを見た。


「レオンは、弥栄君のとこについて行かなくてもいいのかい?」

「……悪いが、見届けるつもりだ」


「あれ? 弥栄先輩のとこについて行くって……レオンはここから出られないんじゃないのか?」

オレはレオンを見ながら疑問を言った。するとレオンが、

「我は召喚されてここへきた聖獣であり、召喚主は歩美だ。そして、召喚されたものは、おおかた召喚主を守ろうとする。そのために、どこへでも召喚主について行けるよう、姿を消すことができるのだ。正確には、実体をこの世界から消しているのだがな」


「へー。……ん? それじゃあ、なんで守りにいかないんだ?」

自分で守ろうとすると言っておきながら、レオンはここに残ると言った。それはおかしいだろうとオレは思った。


レオンはオレの問いに、

「それはもちろん、行くべきなのだろうが……」

と、そこで皮肉気に鼻を鳴らしてレオンはオレをみつめた。



「どこぞの生意気な小僧に言われたのだ。お主を頼む、とな」



「だから残る」と言った。オレは不審げにレオンを眺めたが、問い詰めても話してくれそうにはなかった。



……なんだ、どこぞの生意気な小僧って?



「ふーん、まあいいけど。じゃあ、日向君はどうする?」

レオンの話が終わったとみて、黒塚は楓を見て言った。楓は一度オレを見て、

「……私も残ります。雷牙が心配なので」

「そう言うと思ったよ」

ため息まじりに黒塚が言った。


「なんだよ、心配って。ガキじゃあるまいし」

「今はガキでしょう」

オレは楓を非難の目で見るが、楓は引く気はないらしい。こうなると楓は頑固だ。

それを知っているオレは、早々に諦めて「……勝手にしろ」とそっぽを向いた。


「……さて、とりあえずはじめようか」

一度咳払いをして、黒塚がオレを見つめてきた。


「まず君には、魔力の波動を感じてもらいたい」


そう言って黒塚は目を閉じ、一度小さく息を吐いた。

そして今までにない、無表情のまま目を見開き――



「……っ!?」



瞬間、オレは一瞬呼吸が止まった。


まるで得体のしれない何かが、体を貫いていったような錯覚を覚えた。



「……どうだった?」

すぐに破顔して、今まで通りのにこやかな表情に戻った黒塚が、逆に表情の硬くなったオレを見つめて言った。


オレは額に冷や汗を浮かべ、顔を青くしながら、ゆっくりと貫かれたかのような感覚を覚えた胸のあたりに手を当てた。



「な、な……んだよ、今の」



「今のが、魔力の波動さ。ちょっと強めだったけどね」


にや、と皮肉気に黒塚は口元を緩めた。

「これでなんとなく分かったでしょ。魔力の波動と……魔力の大きさの脅威が」


「……ああ、そうだな」

オレは少し前傾になりながらも、黒塚をにらみつけた。いきなりなにしやがる、とは思ったが、くやしいことに黒塚の言いたいことがはっきりと分かってしまった。



多すぎる魔力は人体に悪影響、ね。……こういうことか。



「雷牙、大丈夫? 会長! 私の時には最初にこんなことは……」

オレの肩に手をかけながら、楓が会長にもの申した。

しかし会長は気にせず、少し真面目な顔をしてオレを見下ろす。


「言っておくけど、今のは強めといってもたいした大きさではなかったからね。魔封具外したそのブレスレットのほうが、何倍も強い。君には、まずそれを知ってもらいたかったんだ」


何倍も強い、というところでオレは息を飲む。オレの体が消飛ぶかもしれなかった、そう言われいても半信半疑だったが、今のでたいした強さではないと言われたら、疑う余地がなくなってしまった。


「ま、そんなに神経張らなくてもいいよ。さっきのは軽い警告。お遊びみたいなもんさ。今からは、順を追って少しずつ制御に慣れていってもらうから」



そうにこやかに黒塚は言うが、オレはすぐには衝撃から立ち直れなかった。


計り知れないキャラですね、黒塚は。

次回はちょっとした出来事がありそうです。


誤字、脱字、修正の指摘、感想をお待ちしています。

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