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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第一部 小さな英雄
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間話 着せ替え人形ちゃうんですけど……・っ

『もちろん、戦うためだ。魔物と……あるいは魔法使い同士で、な』



なんだよそれ……とも思うし、同時にだろうな、とも思う。


確かに、ゲームやらなんやらで『魔法』と出てきたら、その使用目的は戦いである場合がほとんどだと思う。剣なんて、戦いの道具そのものであろう。……儀礼用とかは省いて。


しかし……しかしだ。


だったら、何故この世の中にまだ魔法は存在するのか。



『もともと便利だったものだ。大衆に忘れ去られていっても、細々と伝えていったところもあるのであろう。だが、理由はそれだけではない。最大の理由は、フルミナ・レーゲンの施した魔界への結界が完璧ではなかったこと、そして魔界だけではない別の世界からの干渉があるということだ』



レオンに聞いたところ、そういう返答がきた。

このことにより、もともと魔法の才能を持っていた人物が、その才能を腐らせてしまう前に、魔法がある裏社会的世界に参加してもらう機会があるという。

現実世界観では、魔法とか、魔物とか、異世界とか……そんなものは見ること、感じることがないのかもしれないが、確かに魔法や魔物や異世界は存在する。

故に魔法や剣が、戦いの道具としていまだに残っている……オレが知らなかっただけで、世界は『そういうもの』だったらしい。



……正直、悪い冗談だと思いたい。



「……ん? どうしたの雷牙?」

オレがなにやら深刻な顔で思案しているのが気になったのか、楓がオレを見下ろしながら言う。

……ああ、そうそう。悪い冗談と言えば……。




「……なんでこうなった……」




オレはがくっと肩を落とした。

オレが今いるのは、洋服店であった。



女性用の。



「だってー、その恰好だけじゃ物足りないでしょ~?」

「それに下着だって必要だろうし」

「女性の嗜み(たしなみ)です」

そう言ってきたのは生徒会の女性陣。順に弥栄歩美、日向楓、水穂瑞希の順だ。歩美の車いすは、楓が押している。

時は放課後、一回生徒会室に集まった役員たちは、オレの魔法制御訓練をする前に、オレの姿を見て暴走し始めた黒塚を黙らして、オレの女性用服を揃えることから始めることにした。

さすがにゴスロリ衣装で出歩くわけにもいかなかったので、とりあえず楓が一度帰って持ってきたお古を着こんで、ここにやってきたというわけだ。


ちなみに、ここに来たのは女性陣(そのなかにオレがしっかり入っているのは、はなはだ遺憾)だけで、あとは生徒会室で待機だ。




「あー、もうなんでもいい。なんでもいいから早くここから出たい……」

辺りは女性だらけ。売ってる服も女性用。雰囲気もファンシーなこの空間は落ち着かない。




だってオレ男だし!!




オレはため息をつきつつそう言うが、周りのテンションはそれを許してくれない。

「そうはいかないわよ。今は私のお古を着てもらってるけど、あんまり残ってないから必要になるわよ。それに、さっきも言ったけど下着だって必要でしょ?」

楓がオレをたしなめるように言う。他の二人も、うんうんと頷く。


「……あー、そうだな。確かにそうかも知れんがな……」

オレはほおをひくひくさせながら言う。

正直、ちょっと迷った。言っていいものか。もしかしたら、オレのためなんだろうかと思ったから。

だけど、もう我慢できん。

オレは口を大きく開いた。




「お前ら、オレを着せ替え人形にして楽しんでいやがるだろっ!!」




そう、さっきからオレは女性陣から着せ替え人形の如き扱いを受けていた。

最初のほうは、まだ普通の服と呼べるものを選ばれていたが、やがてそれは『衣装』と呼べるような手の込んだものになり、あげく今はドレスを着せられていた。


「えー、そんなことないよ~」

朗らかに歩美が笑う。


「あ、でもー」


と歩美は一度水穂のほうを向いた。それでなにか察したのか、水穂は小さく微笑む。

「確かにー、服を選んだのは私たちだけど~」

「実際に着たのは、あなたではないのですか?」

「あ、そうよね」


「ぐっ!?」


先輩二人に、見事にはめられた。オレはぶんぶんと両手を横に振る。

「こ、これはあんたらが持ってくるからで、別にオレは選んできたものを着ないというのは悪いなと思ってし、仕方なくだなぁ……っ」


「……もしかして、こういうの着てみたかったりしたの? 雷牙?」

楓がオレの顔を覗き込むようにながら言ってきた。オレはそっぽを向く。

「だ、だれがっ」


まあ、この姿には似合うかなー、なんて思ったりはしたが断じてオレは着たかったわけではない。……はず。

オレのその様子に、楓はしばらくいたづらを楽しんでいるかのような表情をしていたが、やがて顔を上げ近くの掛け時計を見た。


「あ、結構経ってますね。そろそろ戻りませんか?」

そう先輩方に言った。その二人も各々時計を確認(歩美は確認できているかわからないが)して、頷いた。


「え、戻るって……着てばっかりで、まともに選んでないんじゃないのか?」

オレは疑問に思って明後日のほうを向いていた顔を戻してそう尋ねた。すると楓がにこやかに、どこからか紙袋を取り出した。

「大丈夫。ちゃんと選んでよかったやつは、もう買ってあるのよ」

ぱんぱんと紙袋を軽くたたく。




……それじゃあ、なにか?




「と、いうことは。……その後のこれらは、みんな着せて遊んでたんじゃねえか!」


ばん、とオレはドレスの胸のあたりを叩いた。

「あはは、まあいいじゃない。着たかったんでしょ?」

「よくねぇし、着たいわけじゃないっての!!」

あはは、と女性陣が笑う中、オレは不機嫌そうに顔をゆがませ、再びそっぽを向いた。


「ごめん雷牙。このあとはちゃんと訓練を手伝ってあげるから、ね?」

笑いをやめてそう言ってきた楓を横目で眺めた後、オレは、




「……着替えてくる」

試着室のカーテンを乱暴にひいた。


改めて見て、すごく間話な雰囲気がしたので、間話とさせていただきました。

少しだけでも、雷牙にフルミナっぽさを出したくて入れたのですが……どう、でしょうかね?

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