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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第一部 小さな英雄
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え、オンナノコ? 魔法? チョット待て! 2

「……魔力の流れって……なに? どう制御するの?」



「ま、そういうことだね」

分かりきっていた質問だったのだろう、黒塚が肩をひそめた。

「魔力制御なんて一般の人が知るわけないよね。……こればっかりは感覚的なことだから、なんとも言えないし。慣れるのが一番早いよ」


「……慣れるのにどれくらいかかるんだ?」

恐る恐るオレは尋ねる。すると黒塚は少し考える素振りを見せた。

「うーん、どうかなぁ……。瑞希君、君は慣れるのにどのくらいかかった?」

「……二日くらいかと」

と、三年生の長髪の女生徒が答えた。


「夏目君は?」

「えー、どうだったかな。……知らね。一週間くらいじゃねーか? オイラ魔力制御は得意じゃねーし」

紅汰が少し考えた後、投げやりに答えた。

「弥栄君は?」

「え~、そうですね~。わたしは半日で慣れましたけど」


「え、マジで!? 早くねお前?」

「うん、『あの頃は』ね~」

あはは~、と歩美は困ったように笑った。その言葉に紅汰は「うっ」と言葉を詰まらせた。

「……すまねぇ」

そして紅汰は申し訳なさそうに歩美に謝った。歩美は気にしていないという風に朗らかに笑った。


「うーん、じゃあ山城君は?」

そう言って黒塚は今まで一言も発していない、大柄の男子生徒に声をかけた。

大柄の生徒は思案するように身をよじらせた後、

「五日、ほど」

重みのある声で言った。


「なるほどねー。そして確か日向君は三日だったよね?」

「あ、はい。そのくらいです」

「……だってさ宝条君。平均すると三,四日くらいかな?」

実に軽い口調で黒塚は言った。しかしそれはオレにとっては死刑宣告とも同然であり……、


「……嘘、だろ……。……じゃあ、その間ずっとオレはこの格好なのか?」

わなわなと震えながらオレは黒塚にすがる思いで問いただす。黒塚は苦笑いしながら、


「うーん、まあ自由に制御できるように慣れるまでってことだから、ずっとその姿でいる必要はないけど。……不完全な状態で魔力制御しても、かえって危険だからねー。『その姿のままのほうが望ましい』……てとこかな?」

「……まじかよ……」

再び、がくっとオレは肩を落とした。その肩にぽんと黒塚が手を置いてきた。


「慣れたらすぐだから。それに、君に魔力の才能があったら、弥栄君みたく半日で慣れることができるかもしれないよ?」

「……ほんとか?」

「…………ウン、キットネ!」

「……てめえ、絶対無理とか思ってるだろ」

恨めしそうにオレは呻いた。あははー、と白々しい笑いを黒塚は返してきた。


するとそこでなにか閃いたのか、黒塚はにやりと小さく口元をゆがめた。

「あー、そういえばもっと手っ取り早い方法があるかなー」

「っ、ホントか!?」

残念ながらオレは黒塚の『にやり』に気付かずに話に食いつく。黒塚は一度うなづいて、


「当たり前のことだけどね、今君が魔力をブレスレットに流してる……まあ、君の場合無意識だからブレスレットに吸われてるって言ってもいいかな? とにかく、そうやって魔力は循環してる。そういうことなら、一度ブレスレットに干渉されないように取っちゃえばいいよね」

「おお、確かに」


そう言ってオレはさっそくブレスレットに手をかける。……なにかブレスレットを覆うように変な装飾がいつの間にか付けられているが、それごとオレは取り外そうとしたところ、


「……ただし」


黒塚がオレの行動を遮るように言葉を発した。

「取り外すには、まずそのブレスレットを覆っている魔封具を取らないといけないんだよね。さっきブレスレットが反応した時に慌てて僕が付けたんだけど、魔封具ってどんなものだと思う?」

黒塚が質問してくる。オレは一度ブレスレットから軽く手を離して、少し思案。


「……『魔封具』、だろ? 聞いた感じだと、魔力を封じる、みたいな感じか?」

「そんな感じだね。正確には、魔力の流れを制限するものなんだけど。……さて、じゃあその魔封具。どうして僕は『慌てて』それを付けたと思う?」

「そりゃー……魔力の流れが強かったから……?」

「何で魔力の流れが強いといけないのかな?」

「……知らねえよ。分かるわけないだろ。オレは今まで魔力なんてかけらも――」


「答えは、君の体が持たないからだよ」


オレの声を遮って、やや真剣に黒塚は言った。


「おそらくそのブレスレットには、膨大な魔力が溜め込まれてる。その魔力が制御できないまま一気に君に流れようとしたんだよ。多すぎる魔力は人体には害だからね、そうだなー」

そう言って黒塚は宙を眺めた後、さらっと言った。


「……魔封具取っちゃったら、今の君じゃ消し飛んじゃってたね!」


「消し飛ぶって……そんなアホな……」

「冗談じゃないよ? 現にそこの山城君は、一回それで死の淵まで行ったんだから」

黒塚の言葉に、山城は小さくうなづいた。ついでに、歩美の顔を少し苦しげにゆがむ。

「……嘘は言ってないぜ一年。詳しくは言わねえが、堅冶のやつは膨大な魔力にやられて死にかけたことがある。なんとか今は生きてるけどな。……代償はでかいんだよ」

黒塚に賛同するように紅汰が言った。その表情には、一切の冗談は含まれていないようだった。


上級生たちが真面目に、黒塚の言葉は真実であると物語っていた。



……じゃあ、本当にこいつを取ったら、オレは消し飛ぶのか……?



「……まあ、消し飛ぶかどうかやってみたければ、どうぞお試しあれ。取れるものなら、取ってみるといい。……でも、生きてたらかなりの魔力を得ることができるだろうけどね。……『生きてたら』の話だけど」

オレの迷いを読み取ったのか、とどめとばかりに黒塚が皮肉たっぷりに言い放った。


オレはちらと魔封具を横目で見たが、やがて視線を外し、ついでに近づけていた手も離した。

「……そんなこと言われたら、取れないだろうが……」


オレはため息をついてブレスレットを取ることを断念した。

「あはは、分かってくれて助かるよ」

「……てか、そうと分かってたんなら、変に期待させるなよ」

「後学のためだよ」

恨めしそうにオレは黒塚をにらむが、彼は全く気にしていないようにあっけらかんと言った。



と、そこで昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。


変に伏線張ろうとするから、後々厳しくなるんですよね。わかります。


……わかっている、つもりなん…です……けどね。

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