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虹色の電撃姫~いやだからオレは……~  作者: 芦田貴彦
第一部 小さな英雄
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序章

自分の処女作であります。生でもいいので(と書いておいてなんですが、出来れば、生は……)温かい目で見ていただいたら幸いです。

 とあるおとぎ話に、こんな話がある。

はるか昔、突然世界に魔物と呼ばれる人外の凶悪な生き物たちが現れた。人々は魔物たちの強さに圧倒され、なす術なく滅びの一途をたどっていた。

 

 しかし、人類は生き残った。魔物たちに対抗する力、『魔法』を手に入れたのである。魔法は、人類存続の切り札としてただちに体系化された。魔法を操るもの、『魔法使い』が世の中に当たり前のように現れ始めてから、人類の魔物への反攻が始まった。


人類は徐々に魔物を圧倒し始め、少しずつ自分たちの土地を取り戻していった。

だがあと少しというところで、人類は再び足を止めることになる。


魔物たちの王たる存在、『魔王』と呼ばれるものが現れたのだ。


魔王は自らが君臨する世界、魔界から次々と強力な魔物たちを呼び寄せ、自らも人間たちの世界を支配せんと殺戮を繰り返した。瞬く間に人類は危機に陥り、もはや絶滅も時間の問題であった。

しかし人類は、その危機をも乗り越えた。


『英雄』と称される一人の少女が、悪辣な魔王を滅ぼしたのである。


少女は、稀代の魔法使いであり、天才的な剣士でもあった。

その魔法は、異界の扉をも操り、

その両手の剣は、嵐のように敵を切り刻んだ。

魔王と互角に渡り合えたのは、彼女くらいなものであった。

彼女は別世界の王と死闘を繰り広げ、ついに打ち破ったのである。

……しかし魔王と激戦を繰り広げた彼女は、皆のところへ戻る間もなく、決戦の場で命を落とした。最後に魔界への扉を封印するという大魔法を行使して…。


最後にその英雄の名をお教えしよう。


彼女の名は、フルミナ・レーゲンという――


   ††††


「グガァァァーーー!!」

民家ほどもある異形の生物が大音量で吠える。

「っ、うるせぇな!」

その足元で、一人の赤髪の少年が舌打ちしつつ、手に持った細身の槍を異形な生物の足元に突き刺す。すると異形な生物は悲鳴らしき雄叫びを上げ、後ろに退く。

「へへん、どんなもんだって―」


「悪いが踏むぞ」

赤髪の少年が自慢げに声を上げようとした後ろから、銀髪の青年が少年の背を踏み台にして高く飛翔する。

「っ~、いってーな!」

赤髪の少年は下から抗議の声を上げるが、青年は何事もなかったかのように少年の声を聞き流す。

「……さすがに頭には届かないか…」

青年は冷静に異形の生物を眺め、持っていた人の背ほどもある大剣を構える。

「はぁっ!」

そして掛け声とともに大剣を振り下ろす。大剣は深々と異形の生物の腹部を切り裂き、そこから黒っぽい体液が噴き出した。青年は大剣を振り下ろした反動をうまく使いもう一太刀浴びせた後、異形の生物を踏み台にし、少年の元まで戻ってきた。


「なにすんだよ!」

帰ってきたところで、少年は青年に責め寄る。青年は素知らぬ顔で、

「そう怒るなって。ほらみろ、お前のおかげで大きな傷を負わせることができたぞ?」

「そーいう問題じゃねぇよ!」

即座に少年が言い返す。と、そこで二人は異形の生物の様子がおかしいことに気が付いた。


「さて、きたぞ」

青年が小さく笑みで口元をゆがめる。少年はあたりを見回し、岩のような大柄の少年を見つけると、手招きした。

「よし来い、出番だぜ!」

大柄の少年は一度うなずき、片手に壁のような重厚な盾を持ちながら少年たちの前に躍り出て、盾を構えた。

「グガァァァァーーーー!!」

異形の生物は口を開け一度上を向いた。すると口の端から炎が漏れる。どうやらブレスを吐くつもりのようだ。


そして彼らはそれを待っていた。

「頼むぜ旦那」

「…まか、せろ」

青年が盾の陰に隠れる。赤髪の少年もそれに続く。青年は小さく息を吐くと、近くの建物を見上げた。

「…さぁて、おいしいところを持っていくんだ。ちゃんと決めてくれよ」


   ††††


「会長、敵がブレスの体勢になりました」

「そのようだね」

グラウンドで暴れる異形の生物を見下ろす校舎の屋上。そこには四人の人が戦況を見守っていた。そのなかで会長と呼ばれた全身黒一色の青年が「さて」と言って空を見上げる。時間的には深夜をまわっているので、月と星がきれいに見えた。


「うーん。今回はなかなかかかったね。もうちょっと早めに終わると思って、アニメの録画してないのになぁー」

ふう、とため息をつく。すると会長の横にいる、彼女らが通う高校の制服を着た青色の長い髪を持つ女性が、

「大丈夫です。別に見なくても死んだりしませんから」

若干とげを感じる口調で言った。会長は心外とばかりに肩をすくめて、


「いやー、わかってないね我らが副会長さん。アニメにはね、男のロマンが詰まっているのだよ。そして僕みたいなコアなファンは独自にMPなるものを持ってる。それがなくなると、生命の危機を迎えちゃうのさ」

「MPとは?」

「萌えポイント」

「……」

「……っあ、ちょっ、それで殴られると、い、いい痛い、かな~?」

会長は彼女の手から(いつの間にか)出てきた白い剣(ハリセンとも言いますな。……でも、普通のハリセンには金属光沢なんて、ないよなぁ)を見て、冷や汗を出し始めた。

副会長の女性は小さくため息をついて、さっとハリセンをしまう。……というか消した。


「ふう……。まあそれはさておき。…ここが勝負どころだ。ここで確実に仕留めたい」

一度大きく息を吐いたが、その後会長はさっきとは違うまじめな表情で言う。

「先ほども言ったように、あれはブレスの後、体内の熱を放出するために首のあたりにあるえらを開く。そこがやつの弱点部位なんだ。かなり弱っている今なら、そこを的確に切り付ければ一撃で倒すことも可能だと思う。かなり高い位置にあるから、こうして上から奇襲をかける形になっているけど、君なら成功すると思うよ」


会長は屋上のへり近くに立っている、見た目小学生に見える――副会長と同じデザインの制服を着ているが――小柄な少女に向かっていった。その少女は、月の光を受けその光の加減で虹色に輝く不思議な金髪をしていた。その髪を肩甲骨のあたりで揺らしている少女は、レモン色の瞳で屋上から異形の生物を見下ろしながら、両手に持った二振りの剣を握りしめた。


…そのほおに、汗が一滴流れ落ちる。


「……大丈夫?」

と、小柄な少女のすぐ後ろから不安そうな声がもれる。小柄な少女がちらと背後を見ると、そこには淡い亜麻色の髪を長いポニーテイルしている少女がいた。ポニーテイルの少女は、小柄な少女がやろうとしていることを、本心ではやめさせたいと思っているのか、中途半端に片手を小柄な少女のほうにのばしている。しかしその様子を見て小柄な少女は逆に決心がついたようだ。小さく息を吐いて、


「……大丈夫だ。心配すんな」

小さな見た目同様に幼い声で、可憐な見た目に反し男勝りな口調で話す。そのときグラウンドで異形の生物が熱線にも似たブレスを、大柄の少年が構える盾に向かって勢いよく放った。思わず顔をしかめたくなる熱風が校舎の屋上までふぶく。

だがブレスはすぐに止み、首元のえらが大きく開いた。


「今だ、フルミナ君!!」


会長が言い放つ。

「言われなくてもっ!」

小柄な少女―フルミナは言うや否や屋上のへりを力強く踏み切る。

「!?」

突然の上から奇襲に、異形の生物は慌てえらを閉じようとする。

だが、遅い。


「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


小さな英雄が、闇夜に輝く双剣の高速の二連撃で、的確に異形の生物の首をえらの口から切り落とした。異形の生物は、声を上げる暇もないまま首から上がずれ、頭が落下し始める。

同時に頭は、端から小さな粒子になり消えつつあった。残された胴体も同様に切られたところから光の粒子に変わる。


「よし、決まった!」

フルミナは、空中で勝ち鬨をあげる。

だが、ふと気づくことがあった。


いま、彼女は異形の生物の正面で自由落下している。彼女にとっては校舎ほどの高さから落下しても、彼女の持つ力のおかげ(あと、地獄のような理不尽な訓練のおかげ)で体勢を立て直し、着地することが可能なのでたいしたことはない。


問題は落下している場所だった。


異形の生物は決定的な傷を負い、消滅しつつあった。だが、その消滅は一瞬のことではない。早いペースではあるが、一瞬ではないのだ。

グラと、異形の生物が前のめりになり、力なく倒れ始めた。

他ならぬフルミナのほうに向かって。


「……え?」

言わせてもらえば、絶好のタイミングであった。

これならちょうどフルミナが着地したのと同時くらいに、地面に倒れ伏すことになりそうだ。


……もう一度言おう。彼らの消滅は一瞬ではない。

そして、消えるまではちゃんとした質量があるわけで。

それはつまり――


「って、やべぇつぶされる!?」

フルミナの額に冷や汗がうまれる。

「どど、どうしよ――」

その瞬間、フルミナは横から風のように割り込んできた何かに吹き飛ばされた。


「全く、お主は相変わらず詰めが甘いというか、間抜けであるな」

……と、思ったらなにかふさふさしたものの背に乗せられていた。フルミナは、それがよく知ったものであることに気がつくと、ふて腐れたような顔をして、

「……なんだよ、今回は運が悪かっただけだろあれは」

「運なものか。何も考えず切り付けたお主が悪いわ」

「なにを――」とフルミナは、自分を背負っているものに文句を言おうとしたところ、そいつは背負った時と同じように、無遠慮にフルミナを異形の生物から離れたところにおろした。……というか落とした。


「ひぐっ。っつ~、……おい!」

フルミナはしりもちをついたような体勢で、そばにいる落とした当人を見上げた。

「ん、ああ悪いな。なにぶん我も急には止まれぬのだ」

悪びれた様子なしにそいつはしらっと答え、大きな振動を立てながら倒れ伏す異形の生物を眺めた。

フルミナの視線の先にいたのは、かなり大きな獅子であった。白と黒の美しい毛並みをしたその獅子が、フルミナを眺めながら口を開く。

「まあ、せっかく助けてやったのだ。礼を言え、とまでは言わぬ代わりに許せ」

獅子の口から流暢な人語が吐き出される。フルミナはそれに驚きもせず、うぅう……とうなりながら獅子をにらむ。


「おーい、大丈夫ぅー?」

とそこで、場違いなほどのんびりとした声が一人と一匹にかかる。フルミナと獅子は同時に声のしたほうを振り返った。

「ああはい、大丈夫ですよ。……この白黒に振り落とされた以外は」

「あれくらい受け身が取れて当然だ」

「……あのなぁー」

「あははー、だいじょうぶそうだねぇー」

声の主はフルミナと同じ制服を着た少女だった。だが、彼女で目が行くのはそこではない。

彼女は車いすに乗っていた。そしてまぶたは優しく閉じられているが、まるで見えているかのように迷いなくフルミナたちのところへ向かっている。


「さっきね、かいちょーさんから『今日はお疲れ様。僕は一足先に帰らせてもらうよ。アニメの時間が迫ってて厳しめだからね。みんなも消滅を確認したら帰っていいよ。話は明日の放課後にしよう』って言われたんだよー」

「かー、マジかよそれ。テキトーすぎじゃね?」

車いすの少女の後ろから、いつの間にか集まっていた赤髪の少年が頭をぼりぼりかきながら不満そうに言う。

「ま、それがあのダメ男だ」

赤髪の少年の言葉に、ため息半分に銀髪の青年が答える。


「……さて、消滅は確認したんだしよ、オイラ達も帰ろうぜ?」

そう言って、一足先に赤髪の少年が踵を返し、グラウンドの先にある正門へと歩き始める。

それを皮切りに、皆ぞろぞろと正門を目指す。

「私たちも帰ろう?」

ポニーテイルの少女がフルミナに言う。

「……ああ、そうだな」

フルミナはふと夜空を見ながらつぶやいた。

「……こんなことがしょっちゅう起きているのに、普通の奴は気が付かないんだよな」


いつからだろうか。

こんな普通の奴が気付かないことに、気付くようになったのは。

そんなに昔の話ではない。むしろつい最近の話だ。

フルミナはグラウンドの先にある建物――自分たちが通っている古宮高校を眺めた。


……まだ、ここに入学して一学期たってないんだよな。

「? どうしたの?」

立ち止まって動こうとしないフルミナにポニーテイルの少女が不審げに声をかける。フルミナは小さく首を振って言う。

「いや、なんでもない。さあ、帰るか」


フルミナ……いや、 宝条雷牙(ほうじょうらいが)がこの世界に入り込んだきっかけは、今からほんの二か月前のことだ――


誤字、脱字、修正が必要であろうところは、是非指摘してくださいな。


11/19 最後の文を一か月から二か月に変更。

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