カウントダウン~【レインキス】番外編~
<作者より一言>
同作者の小説【レインキス】の番外編です。
愛読して下さった読者様への感謝を込めて書きました。
本編【レインキス】をご存じない方は内容が解らないかもしれません。
もし宜しければ【レインキス】本編をお読み頂けると大変嬉しく存じます。
拙い文ではありますが、『雨が彩る恋物語』の番外編。
どうぞお楽しみ下さいませ☆
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年の瀬になると思い出す。
彼女と過ごした、一度だけのあの大晦日を――・・・。
・・・【レインキス】番外編・・・
~【カウントダウン】~
―――12月31日。
俺は彼女と一緒に未だ終わらぬ大掃除に追われていた。
「おにいちゃ~ん、そっち終わったぁ?」
さっきまでガスレンジを磨いていた彼女が、何やら達成感に満ちた笑顔で居間へとやって来た。
「あー・・・まだ。押し入れのトコ、手つかずなんだ」
「あ、そこはいいよ!どうせ物いっぱい入ってるし!!」
慌てたように言い、彼女は「手伝うね」と雑巾を片手にこちらへとやって来た。
畳と床の間を手分けして雑巾がけすると、俺達はふぅと息を吐いた。
「これで大体終わりかな。結構かかったな~」
「ううっ、ごめんなさい!あたし、お掃除だけは苦手で・・・・」
洗濯も料理も問題なくこなす彼女だが、唯一掃除だけは絶望的にダメだった。
彼女の『片付け』は正直な話、単に『どかす』だけの一時的な物であり、根本的に『片付ける』事が出来ていない。
一度それを指摘したら、「え!そうなの!?」と本気で分からないという顔をされた。
普段の彼女の部屋の有様も結構酷いのだが、話を聞く限りでは、彼女の実家の様子は更に凄まじいようだ。
「まあ、誰にでも得手不得手はあるから。気にすんな。結婚したら俺が掃除すりゃいい話だし」
すると彼女は途端に頬を赤く染めてうつむき、小さく「ありがと」と呟いた。
(うっわ、もうホント、反則だよ、こういうの!)
思わず抱きしめたい衝動に駆られた。
普段は強気で元気なのに、たまに見せるこういう所が可愛くてたまらない。
これも俺が彼女を好きになった一因かもしれない。
「沙織、ちょっとこっちおいで」
「ん、何?」
トコトコと寄って来た彼女をギュッと抱きしめて唇を塞いだ。
「んっ―――・・・・!」
痺れるような感覚の中、彼女の口から漏れる甘い声を耳にしつつ、歯列を割って奥へと舌を滑り込ませる。
温かい感触が絡み合い、クチュリと淫媚な音をたてると、彼女の身体からガクリと力が抜け、心地よい重みが預けられた。
「んっ、ふっ―――・・・・・!」
首に回された腕がふるふると震えるのを感じながら、その背に回した腕に力を込める。
伝わる熱が一層増し、駆け上って来る甘い痺れに酔いしれていく。
―――ああ、もう・・・・。
「はぁ・・・・・」
腕の中の彼女は、ようやく解放された艶やかな唇から甘い吐息を漏らし、濡れた瞳で俺を見つめた。
「・・・・沙織・・・可愛い・・・・」
微笑みながら言うと、彼女はちょっとだけ恨めしそうな目で俺を見て、小さく「・・・ばか」と呟いた。
それがまた愛おしくて、そのままギュッと強く抱きしめた。
こんなふうにまた誰かを好きになれるなんて、“あの時”には思わなかった。
――――カヨ・・・・・。
久しぶりに思い出した名前に、少しだけ胸が痛む。
けれどそれは、すぐに目の前にある甘く愛しい熱に溶けるように消えた。
今この胸にあるのは、失った過去の痛みじゃなく、狂おしいほどの熱情だけだ。
「・・・・愛してる・・・・」
言葉だけじゃ足りなくて、もう一度彼女の唇を塞いだ。
「・・・・・んっ・・・ふっ・・・・」
甘い吐息が漏れ、熱を帯びた彼女の身体が腕の中でふるふると震えた。
その柔らかく小さな身体をギュッと抱き寄せ、俺は熱に身を任せた。
互いに互いの熱を欲し、与え、与えられ、果ててはまた、熱を増していく。
「・・・・あっ、もう・・・!」
何度目か分からない熱の果てを迎え、俺の腕の中、彼女はビクリと跳ねるように身体を逸らせ、その全てを俺に委ねた――・・・・。
――――・・・・・・。
「・・・・すっかり暗くなっちゃったね」
窓の外を見つめ、彼女は静かに言った。
「ああ。あと少しで今年も終わりだ」
テレビをつけると、ちょうどキャスターが除夜の鐘の聞こえる会場で生中継をしている所だった。
カウントダウンが始まり、やがてゼロの声と共に花火があがった。
「あけましておめでとう」
「うん。おめでとう。今年もよろしくな、奥さん」
見る間に頬を紅く染めた彼女を抱き寄せ、その唇を塞いだ。
来年もこうやって、一緒にカウントダウンを迎えられるよう、願いながら・・・・。
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<作者より一言>
この度は小説【レインキス】番外編【カウントダウン】をお読み頂き誠に有難うございます。
連載終了後も【レインキス】を読んで下さる方、『アルファポリス』に投票して下さる方がお見えになるようで、作者として大変嬉しく存じます。
【レインキス】を愛読して下さる皆様に、この場を借りてあつく御礼申し上げます。
こんな拙い七瀬の作品を読んで下さって、本当に有難うございます!!
皆様のおかげで連載終了後【レインキス】は通算PV28,000、UU5,000を突破という、七瀬作品の中では稀に見る素晴らしい快挙を成し遂げました。
連載最終日の最終回当日に至っては、アルファポリスの恋愛部門100位にランキングインするという名誉まで頂きました!
まさに読者の皆様のおかげであります。
読者の皆様、本当に本当に有難うございました!!!!
この作品【カウントダウン】は、読者の皆様に感謝を込めて、もう一度【レインキス】の世界を楽しんで頂けるよう書き上げました。
拙い文ではありますが、少しでも皆様にお楽しみ頂けれていれば幸いです。
皆様、本当に有難うございました!
今年も本当に後残すところ僅かとなりました。
皆様、どうかお身体に気をつけて、良い年末年始をお過ごし下さいませ。
心より感謝を込めて。
七瀬 夏葵