4話
お風呂上がり。
ダウンロードまで「あと1時間21分」長風呂は成功した。
ホカホカと湯気が立つ私の体と、丁寧に乾かしたツヤツヤな髪。
いつもはしない高級パックも今日は使っちゃおう。
後1時間で私はゲームをする。
決意が固まる自分とまだ浮き足立つ自分が同居する。
思わず身体を左右に振ってしまう。本当は小躍りしたいくらいだ。
プルルルルルルルル……
そんな気分上々の私の元へ、いつもはならないスマホの電話がなった。
こんな時間になんの電話だろう。
画面には母の文字、迷わずスライドして応答する。
「もしも〜し」
「あんた、ちょっと、どうしよ。お父さんがさっき事故にあって救急車で運ばれたんよ」
沸き立っていた血が一瞬でサーっと引いて行くのがわかった。
母のいつになく切迫する声に現実に引き戻される。
「あんた、1回こっち帰ってこれん?」
「わかった。ちょっと会社に連絡入れて有給取れるか聞いてみる」
Switchの画面には「あと1時間12分」の表示。
これは今日は出来んなぁ……。
そのままスマホを操作して会社の共有Slackを開いてとりあえず連絡を入れる。
直属の上司にはLINEで一報を入れたところすぐさま既読がついて有難いことに対応してくれた。
今からなら当日の夜行バスもまだ間に合うか……。
さっきまでゲームの段取りで浮き足立っていた頭は、意外と冷静に帰省の段取りを取っていた。
電話で問い合わせ
チケット購入
荷造り
仕事の引き継ぎ
母に一報
やることが一気に出来たというのに頭は嫌に静かだった。
パッキングを手早く始める。出張がこんな時の役に立つだなんて思いもしなかった。
念の為にスーツと期待を込めてSwitch2も入れておく。
最悪よ起きるな。
父よ、起きて。
外は、もう暗かった。
さっきまでの鮮やかな正方形の赤は、急に子供じみたおもちゃに見えてしまった。




