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13話

ひとしきり泣いた。

泣いて泣いて泣いた。

でも思ったよりも泣くのって体力使うみたいだ。

一日中でも泣ける気持ちはあるのに、結局10分も経っていない。

結局私の覚悟は宙ぶらりんなのだ。

仕事も家も自分のことも、全て優先度をつけて選んでいたつもりでも結局何にも成せてない。


はぁーーーーーーー。

と、長い溜息をついてないとやってられない。

でもひとしきり泣いて気力も体力も使った空っぽの身体は、無情にも食事を要求してきた。


何か腹に入れるか。

ベッドから起き上がり、電気をつける。

その時、緑のランプがこちらを見つめているのに気づく。

これで、遊んだら少しは気が楽になるかな。


手を伸ばして起動させてみる。

ホーム画面はダウンロードが完了したようで新品とは思えないくらい、たくさんのゲームが並んでいた。

右に右に過去にやってみてるだけやってクリアできていないゲームタイトルを眺める。


結局私は何も変わっていない。

クリア出来てないゲーム達が恨めしそうにこちらを凝視している。


ハッと、1つのゲームタイトルで手が止まった。

それは私が愛してやまない、Switch2を買うきっかけの「あつまれどうぶつの森」。


またあの島で暮らしたい。

前のデータも引き継がれているSwitch2。

過去の島も上手く作れた自信はある。でも、いつの間にか満足して、つまらないと感じるようになって、起動する日が日に日に減って引き出しにしまわれてしまっていた前のSwitch。


私は、このままゲームしていいのか?

それは本当に、楽しいのか?

ワクワクできる……?

泣ききった今の私にならわかる。


答えは、違う。

何故かは分からないけど違うのだけは分かってた。


そうだ、Switch2のあつ森の移植したデータを消そう。

何時間もダウンロードを待って楽しみにしてたけど、一から、これから、また自分の手で作り上げていきたい。


だから、消そう。

Aボタンを押す手には迷いはなかった。

本当に消しますか?

親切に聞いてくれるSwitch2へ、私の迷いは無いよ。

答えは、はいだ。

Aボタンを押せた時。私の中で何かがカチリと入れ替わったのを感じた。


前に使っていたSwitchを手に持ち、街に繰り出す。

目指すのはあのレンタルショップ。

もう今の私には必要ないの。だって、お陰で新しい子に出会えたから。

前のあなたは今の私の中にしっかりいる。

そして、私はあの新しいゲーム機で、新しい住民ライフを始めたいのだ。


買取価格は思ってたよりも安かった。

でも価格なんてどうでも良かった。

少し温かくなった財布をカバンにしまい。

さっきよりも暗くなった空とキラキラと光る街の中に溶けていく。


帰りにラーメン屋によった。

豚骨ラーメンのお店。

泣き腫らした顔かもしれない、メイクも崩れてるかもしれない。

でもそんなの関係なく目の前のとんこつを食べた。

夢中で食べた。

味は思ってたよりもしょっぱくてそんなだったけど、なぜだか分からないけど凄く元気になっていくのを感じた。

テーブルの上の紅しょうがを少しつまんで追加する。

スープを飲み、麺をすすり、お冷をゴクゴク飲む。

いつもはスープを少し残すけど、今日は全部飲んでやった。

しょっぱい味が私を生きてると感じさせる。

「ごちそうさまでした」と立ち上がり帰宅する。


全部やるんだ。

店が閉まるのは嫌だ。

だからといって仕事も辞めたくない。


視界の端でSwitch2のランプがチラッと一瞬緑を強くした気がした。

それを見てゲーム機の電源を切った。


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