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天使と誓い  作者: 秋野原梨衣
始まり
7/25

第七話

璃亜奈の、過去のことです。3歳ぐらいの頃です。なので、出てくる、「お母さん」は、一話などに出てくる人とは別人です。

過激な言葉が含まれているので、苦手な人は、とばしてください。

◈◈◈◈◈◈◈


ああ、これは、夢だな。過去のことを、夢見てるんだ。

すぐに、そう感じた。いつもみたいに、自分の体が自分の意志で動かせないからだ。


「ねえ、みい、あきらとそうと遊びに行こ!」


私が、絵本を読んでいる美璃衣(みりい)に近づいて、顔をのぞき込みながら言った。

美璃衣は、私と同じ黒の髪に、紫色の瞳をしている。私は、みい、といつも呼んでいる。


「んー、いいよ。」


「やった!」


みいが答えた瞬間、私はみいの手を引いて走り出した。


「わっ、びっくりした〜。」


みいはそう言いながら、私ののあとを走りながらついてきている。


玄関に着き、ドアを開けると、二人の男の子が待っていた。


「あ、りあ、みい、おはよう!」


そう声をかけたのは、黒髪の男の子・(あきら)だった。


「久しぶり! 何してたの?」


と聞いてきたのは、茶色の髪の男の子・(そう)だ。


「ふふん、お父さんとお母さんと遊びに行ってたのだ!」


私はそう言って、得意げに胸を張った。


「私は、新しい本を買ってもらったよ。」


みいは、おとなしくそう答えた。

私たちは、いつも一緒に遊んでいる仲良しの仲間だ。


「今日は何して遊ぶ?」


公園へ向かう途中、彰が聞いた。


「色鬼!」

「鬼ごっこ!」

「かくれんぼ!」


みんなが、それぞれ別の遊びを口にした。


「じゃあ、色鬼にしよう!」


彰がそう言って、遊びが決まった。


◈◈◈◈◈◈◈


「楽しかった! また明日ね!」


遊び疲れて座っている彰と颯に、私は声をかける。

空は紅く染まり、ちょうど五時の鐘が鳴っている。


「ばいばい!」

「また明日ね!」


誰もいない公園に、四人の声が元気よく響いた。


家は近いけれど、方向が違うため、私とみいは、彰と颯に手を振って別れ、それぞれの帰り道を歩き出した。


「みい、楽しかったね! 明日はなにして遊ぼう?」


ほんとに楽しかった。明日は、かくれんぼがしたいな――そう思いながら、私は言った。


「そうだね。かくれんぼは?」


「私もそう思ってた!」


そんなふうに、いつも通りおしゃべりしながら帰っていた。


……けど、途中で――私たちは突然、意識を失った。

気がつくと、知らない部屋の中にいた。


「みい、ここ……どこ? 知ってる?」


私は恐怖でみいにしがみつきながら、声を震わせて聞いた。


「……ううん、知らない。」


みいは私の手をぎゅっと握り、不安そうに答えた。


「なんか怖いから、動かないでいよう。」


みいはそう言って、立ち上がろうとした私を止めた。


そのまま、じっとしていると――

ガチャリ、と扉の開く音がして、変な男の人が部屋に入ってきた。


「わあ、すごいね。そこから少しも動かないなんて。やっぱり警戒心が強いんだね。マレナって、やっぱり特別なんだ」


少し興奮したように、その男は言った。


「だれですか? なんで私たちがここにいるんですか? 元の場所に返してください!」


みいが私の前に出て、声を張った。

いつもは、おとなしいのに、私が怖がっていると助けてくれる。いつものみいがそこにいた。


「別に、私が誰がなんて、気にしなくていいよ。どうせ君は、すぐに死ぬんだし。でも、返せないな。君たちは重要な人質なんだ——君たちのお母さんをおびき寄せるための」


ちらりとみいを見て、興味なさげに言いながら、男は何かを取り出した。


「だから、一人だけでいいね!」


明るくそう言うと、男はナイフを取り、みいの胸あたりへと突き立てた。


「え……? みい……?」


みいはドサリと倒れ、赤が床に広がっていく。

その後のことは、よく覚えていない。


ただ――とても痛かったこと。

そして目を覚ましたときには、少しだけ楽になっていたことだけは、覚えている。


「みいは? お母さん、みいは……?」


起きたとき、体中が痛む中、そう聞いたときの、お母さんの顔は、きっと一生忘れない。

悲しそうに顔をゆがめ、苦しげに、こう言った。


「……ごめんね」


たった一言。それだけで、すべてがわかってしまった。

私はただ、声を上げて泣いた。泣きながら、そのまま眠ってしまった。


――そのあと、私は生きる気力をなくし、ずっとベッドの中で過ごしていた。

家族もみいのことを忘れたわけじゃない。でも、少しずつ、みんな日常に戻っていった。


私は、それがつらかった。

自分だけ置いてけぼりにされている感じがして。

みんながみいのことを忘れちゃうんじゃないかって。


みいは、私の、唯一の双子の姉だ。大切な家族だ。忘れてほしくない。


もう、いやだ。……みいのいる場所に、行きたい。そう思っていた、そんなときだった。


『だーめ! なにしてんの? 私は死んじゃったけど、りあのために、来てあげました!』


ふいに、頭の上から声がした。


見上げると、そこにはみいがいた。


しかも、髪が、一部、赤色になっている。


「な、なんで……。え、ていうか……浮いてる?髪の毛…なんで赤?」


みいがいることはうれしい。けど、本当なら、これは幽霊だ。しかも、性格が変わっている。

混乱して、私は泣き出してしまった。


みいは、私が泣きやむまで、ずっと隣にいてくれた。

そのことが、とても嬉しかった。


「みい、これ……夢じゃないよね? 私の精神が壊れて、幻覚を見ているだけじゃないよね?」


私は、みいにそう尋ねた。

けど、自分の夢ならば、いるよ、って答えるし、本当でもいるよ、って答える。どうすればいいんだろう?


「そうだね。私は、幽霊として、生きているよ。あ、髪は…血で染まっちゃったのかな?あと、まあ、天国あたりに、性格落としてきちゃったと思う。

私がいるかどうか心配なら、お母さんに聞いてごらん」


天音は、私の不信感を感じたのか、そう言った。

お母さんを呼び、恐る恐るお母さんに聞いてみた。すると――本当だった。


「私も、うっすらといる、って感じるよ。よかったね。けど、ほかのみんなには言わないでね。」


お母さんも、最初は戸惑っていたけど、集中して、何かを感じ取ると、どこか嬉しそうにそう言ってくれた。


それから、天音は私の周りか、あるいは私の体の奥に、いることになった。

他の家族には話せなかったけれど、だんだん私は、みいを失った心の傷から回復していった。

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