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私たちの家

◈◈◈◈◈◈◈


荷物をまとめ、翌朝、私たちは家を出ることにした。


「お母さん、今まで本当にありがとうございました。記憶が戻ったら、また必ず来ます!」


私は深く頭を下げて言った。本当の家族ではなかったとしても、長い間、お母さんは私にとって“お母さん”だったから。


「もう、“お母さん”って呼ばなくてもいいのよ。」


お母さんは、少し困ったように笑いながら言った。


「それでも、私にとってはお母さんです。何年間も、ずっとお母さんだったから。」


私はそう返して、にっこりと笑った。心からの笑顔だった。


「引き取っていただき、本当にありがとうございました。これからは、必ず1ヶ月ごとにご連絡します。」


琴音さんも、丁寧にお礼を言いながら、お母さんに手を振った。


◈◈◈◈◈◈◈


「わあ、ここが私たちの家?」


目の前にある一軒家を見上げながら、私は琴音さんに聞いた。見た感じは、どこにでもある普通の家にしか見えないんだけどな…。


「そうよ。いくつか“入り口”があるの。そのうちの一つね。」


琴音さんはそう言いながら、鍵を差し込んでドアを開けた。


中に入ると、驚くほど広い玄関が広がっていた。まるで教室の半分くらいはあるんじゃないかと思うほど。


「なんで?家の外から見た形じゃ、こんなの入るわけないじゃん!」


え、なにこれ、どうなってるの…?


「ふふっ、魔法で、別の場所につなげてるの。他の人が入っても、ただの普通の家につながるようになってるわ。だから、“入り口がいくつかある”って言ったのよ。」


ぽかんとして立ち尽くす私に説明しながら、琴音さんは靴を脱いで、リビングの方へ歩いていった。


「わ、わっ、待って〜!」


私も慌てて靴を脱ぎ、琴音さんのあとを追いかけた。


リビングは決して豪華ではなかったけれど、広々としていて、どこか落ち着く雰囲気を持っていた。

窓の外には一面の花畑が広がり、その奥には深い森が見える。


明らかに現実とは違う、不思議な景色。なのに、なぜだろう。どこか懐かしさを感じている自分がいた。


「すごっ! きれい!」


私は思わず声を上げて、はしゃいでしまった。


「あなたの部屋もあるわよ。行きましょう」


琴音さんに誘われて階段を上がると、二階の廊下にはドアが6つほど並んでいた。


「これがあなたの部屋よ」


一番手前のドアを指差しながら、琴音さんが言った。


中へ入ると、思わず息をのんだ。想像以上に広くて、整った部屋だった。

壁際には本棚と机があり、中央にはテーブルと椅子が置かれていて、まるで小さなリビングのようだ。


さらに部屋の中にはいくつかドアがあった。

一つはトイレ、もう一つは寝室、そしてもう一つは……実験室のようだった。


「すごい…。私、こんなところに住んでたんだ。」


私が思わずつぶやくと、


「そうね。簡単に片付けと掃除の魔法をかけておいたから、もう住めるわよ。」


琴音さんが穏やかに返してくれた。

――もう、私の家はここなんだ。胸の奥で、はっきりとそう感じた。


◈◈◈◈◈◈◈


「あー、おいしかった。琴音さん、料理うまいね。」


夕飯を食べ終え、私は笑顔で話しかける。


「ありがとう。料理には自信があるの。」


琴音さんは嬉しそうに微笑んだ。けれど、次の言葉には重みがあった。


「――どうする? もう記憶を戻す?」


「うん。思い出したい。」


私の気持ちは、やっぱり変わらなかった。


「そう…。わかったわ。あなたが記憶を取り戻している間に、私は他の兄弟たちを連れ戻してくる。」


ほんの少しだけ悲しそうな表情を見せながら、琴音さんはそう言った。


「じゃあ、部屋に行きましょう。急に倒れられても困るし、力も一部封印してあるからね。」


説明を受けながら、私は部屋へ向かった。

ベッドに腰を下ろすと、琴音さんがこちらを見つめて、


「――じゃあ、いくね。」


そう言って、何かを小さくつぶやきはじめた。

……聞き取れない、不思議な言葉。


次の瞬間、呪文が終わったのだとわかったとき――

私の体に、鋭い激痛が走った。

二千文字いけなかった…。

次は、天花の、過去の話です。


面白ければ、感想もよろしくお願いします!

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