表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

入学式の朝

ちなみに、天花は、メガネとメイク(少し魅力を押さえるため)をしています。髪色と目はいつも通りです。変装ですね。

◈◈◈◈◈◈◈(天花視点)


「はい、制服とか荷物持った?」


お姉ちゃんが玄関から顔をのぞかせる。

今日は魔法学園への入学日。

普通なら胸が高鳴る…らしいけど、私には正直ピンとこない。


「持ったよ。行ってきます。」


最低限の返事だけして、私はドアを開けて外に出た。


『この家、すごいよね。どこへでもつながってるじゃん。』


天音がふわりと浮きながら言う。


ここは、地球じゃない。

魔法を使える者たちが暮らす惑星で、しかも国は“王政”。

当然、貴族が存在していて、身分差も厳然としてある。


(貴族って、権力持ってるよね…。面倒なこと、巻き込まれなきゃいいけど。)


そんな考えが頭をよぎる。ワクワクより、警戒心が勝っていた。


私は歩みを進め、魔法学園へ向かった。


◈◈◈◈◈◈◈(???視点)


「もう準備はできた? ついたら連絡頂戴ね?」


玄関先で、おばあちゃんが心配そうに何度も言ってくる。


「うん、わかったよ。ついたら連絡するから、心配しないで。」


荷物を抱えながら俺は笑った。


今日から俺は、魔法学園の寮で暮らす。

魔力量の値が“そこそこ良かった”らしく、推薦で受かったらしい。

地球から向かうには距離がありすぎて、寮生活じゃないと通えない。

でも、そのおかげで学費が全部無料になったのは、本当に助かった。


おばあちゃんとおじいちゃんに、これ以上負担をかけたくなかったから。


「そうね。でも……心配よ。毎日連絡してね?」


「大丈夫だって。ちゃんとするよ。」


そう言って手を振った。

スーツケースの取っ手を握ると、不思議と胸が高鳴る。


(……楽しみだなあ。)


その気持ちを押し殺せず、自然と笑みがこぼれた。

ふと、見上げた空は、きれいに澄んでいた。


◈◈◈◈◈◈◈(???視点)


「もう行っちゃうの?」

「バイバーイ!」

「えー、やだー!」


小さい子たちが一斉に俺に抱きついてくる。


「大丈夫。休みになったら絶対帰ってくるし、手紙も書くよ。」


そう言って、一番泣きそうな子の頭をそっと撫でる。


「じゃあな!」


孤児院の門を出ると、少し冷たい風が吹いた。

でも胸の中は、それを吹き飛ばすくらいあったかい。


(魔法学園かぁ…)

空を見上げる。


正直、助かった。里親はいなかったし、このままじゃ学校にも通えなくなるところだった。

でも、学費無料の推薦のおかげで、道が開けた。


(よし、がんばろう!)


弾む気持ちを隠しきれない俺を祝福するみたいに、太陽が優しく光っていた。


◈◈◈◈◈◈◈(???視点)


(ああ、寒い…。今日の仕事、多すぎない?)


ぼろぼろの服を見下ろし、ため息をこらえていると——


「何か文句でも?」

侍女が冷たい声で睨みつけてきた。


「い、いえ…」


震える声をなんとか押し殺す。


「ならいいわ。」


侍女は踵を返し、去っていく。


(……がんばろ。)


かじかむ手を息で温めながら、自分に言い聞かせる。


「終わったら、休めるから。」


その“終わったら”が来たことなんてないけれど、それでも前に進まなきゃいけない。


曇り空をひと目だけ見上げて、


(よし、急がないと…今日こそは──)


小さな希望を握りしめ、再び動き出した。


◈◈◈◈◈◈◈(???視点)


「姫様、こちらはいかがなさいますか?」

「……あ、それでお願いします。」


(あっ!また丁寧すぎた!)


侍女が眉を寄せる。


「姫様、もっと毅然とお話しくださいませ。」

「……はい。気をつけます。」


“高飛車な話し方を覚えなさい”と言われているけれど、そんなの急にできるはずもない。


(難しいよ…)


そっと窓の外を見る。空は今日も綺麗で、現実の堅苦しさを忘れさせてくれた。


「姫様、勉強のお時間です。」

「……うん。」


窓から目を離しながら思う。


(一日が、また始まるなぁ…)


最後にもう一度だけ空を見つめ、部屋を出た。


◈◈◈◈◈◈◈(???視点)


ピ、ピ、ピ……

静かな部屋に、機械の一定の音だけが響いている。


僕は椅子に座り、何もない壁をぼんやりと見つめていた。

窓も、家具も、外の匂いもない。あるのは、機械だけ。


「…………」


声は出せる。

でも、出す理由がない。


(外の世界って、どんなところなんだろう。)


それだけを、永遠みたいな時間の中で考え続けていた。


◈◈◈◈◈◈◈(理沙視点)


「行ってきます!」

「いってらっしゃい。」


玄関で元気に挨拶して、私は勢いよく外へ飛び出した。


(あー、ほんと楽しみ!まさか自分に魔力があるなんて…まだ夢みたい。)


胸の奥がずっとぽかぽかしていて、気づくとスキップしながら歩いていた。

私が向かうのは、“魔法学園”。地球とは別世界だから、通学にはワープホールを使うらしい。でも、ワープホールってとんでもなくお金がかかるから、みんな寮に入るんだって。


(友達できるといいな♪)


思い浮かべるだけで、自然と笑顔が広がる。

新しい世界、新しい出会い、新しい魔法。


――だって今日は、ずっと夢見ていた“始まりの日”だから。

???視点は全て別人です。後々全員出てくる予定です。何人かはもうでてますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ