入学式の朝
ちなみに、天花は、メガネとメイク(少し魅力を押さえるため)をしています。髪色と目はいつも通りです。変装ですね。
◈◈◈◈◈◈◈(天花視点)
「はい、制服とか荷物持った?」
お姉ちゃんが玄関から顔をのぞかせる。
今日は魔法学園への入学日。
普通なら胸が高鳴る…らしいけど、私には正直ピンとこない。
「持ったよ。行ってきます。」
最低限の返事だけして、私はドアを開けて外に出た。
『この家、すごいよね。どこへでもつながってるじゃん。』
天音がふわりと浮きながら言う。
ここは、地球じゃない。
魔法を使える者たちが暮らす惑星で、しかも国は“王政”。
当然、貴族が存在していて、身分差も厳然としてある。
(貴族って、権力持ってるよね…。面倒なこと、巻き込まれなきゃいいけど。)
そんな考えが頭をよぎる。ワクワクより、警戒心が勝っていた。
私は歩みを進め、魔法学園へ向かった。
◈◈◈◈◈◈◈(???視点)
「もう準備はできた? ついたら連絡頂戴ね?」
玄関先で、おばあちゃんが心配そうに何度も言ってくる。
「うん、わかったよ。ついたら連絡するから、心配しないで。」
荷物を抱えながら俺は笑った。
今日から俺は、魔法学園の寮で暮らす。
魔力量の値が“そこそこ良かった”らしく、推薦で受かったらしい。
地球から向かうには距離がありすぎて、寮生活じゃないと通えない。
でも、そのおかげで学費が全部無料になったのは、本当に助かった。
おばあちゃんとおじいちゃんに、これ以上負担をかけたくなかったから。
「そうね。でも……心配よ。毎日連絡してね?」
「大丈夫だって。ちゃんとするよ。」
そう言って手を振った。
スーツケースの取っ手を握ると、不思議と胸が高鳴る。
(……楽しみだなあ。)
その気持ちを押し殺せず、自然と笑みがこぼれた。
ふと、見上げた空は、きれいに澄んでいた。
◈◈◈◈◈◈◈(???視点)
「もう行っちゃうの?」
「バイバーイ!」
「えー、やだー!」
小さい子たちが一斉に俺に抱きついてくる。
「大丈夫。休みになったら絶対帰ってくるし、手紙も書くよ。」
そう言って、一番泣きそうな子の頭をそっと撫でる。
「じゃあな!」
孤児院の門を出ると、少し冷たい風が吹いた。
でも胸の中は、それを吹き飛ばすくらいあったかい。
(魔法学園かぁ…)
空を見上げる。
正直、助かった。里親はいなかったし、このままじゃ学校にも通えなくなるところだった。
でも、学費無料の推薦のおかげで、道が開けた。
(よし、がんばろう!)
弾む気持ちを隠しきれない俺を祝福するみたいに、太陽が優しく光っていた。
◈◈◈◈◈◈◈(???視点)
(ああ、寒い…。今日の仕事、多すぎない?)
ぼろぼろの服を見下ろし、ため息をこらえていると——
「何か文句でも?」
侍女が冷たい声で睨みつけてきた。
「い、いえ…」
震える声をなんとか押し殺す。
「ならいいわ。」
侍女は踵を返し、去っていく。
(……がんばろ。)
かじかむ手を息で温めながら、自分に言い聞かせる。
「終わったら、休めるから。」
その“終わったら”が来たことなんてないけれど、それでも前に進まなきゃいけない。
曇り空をひと目だけ見上げて、
(よし、急がないと…今日こそは──)
小さな希望を握りしめ、再び動き出した。
◈◈◈◈◈◈◈(???視点)
「姫様、こちらはいかがなさいますか?」
「……あ、それでお願いします。」
(あっ!また丁寧すぎた!)
侍女が眉を寄せる。
「姫様、もっと毅然とお話しくださいませ。」
「……はい。気をつけます。」
“高飛車な話し方を覚えなさい”と言われているけれど、そんなの急にできるはずもない。
(難しいよ…)
そっと窓の外を見る。空は今日も綺麗で、現実の堅苦しさを忘れさせてくれた。
「姫様、勉強のお時間です。」
「……うん。」
窓から目を離しながら思う。
(一日が、また始まるなぁ…)
最後にもう一度だけ空を見つめ、部屋を出た。
◈◈◈◈◈◈◈(???視点)
ピ、ピ、ピ……
静かな部屋に、機械の一定の音だけが響いている。
僕は椅子に座り、何もない壁をぼんやりと見つめていた。
窓も、家具も、外の匂いもない。あるのは、機械だけ。
「…………」
声は出せる。
でも、出す理由がない。
(外の世界って、どんなところなんだろう。)
それだけを、永遠みたいな時間の中で考え続けていた。
◈◈◈◈◈◈◈(理沙視点)
「行ってきます!」
「いってらっしゃい。」
玄関で元気に挨拶して、私は勢いよく外へ飛び出した。
(あー、ほんと楽しみ!まさか自分に魔力があるなんて…まだ夢みたい。)
胸の奥がずっとぽかぽかしていて、気づくとスキップしながら歩いていた。
私が向かうのは、“魔法学園”。地球とは別世界だから、通学にはワープホールを使うらしい。でも、ワープホールってとんでもなくお金がかかるから、みんな寮に入るんだって。
(友達できるといいな♪)
思い浮かべるだけで、自然と笑顔が広がる。
新しい世界、新しい出会い、新しい魔法。
――だって今日は、ずっと夢見ていた“始まりの日”だから。
???視点は全て別人です。後々全員出てくる予定です。何人かはもうでてますよ。




