魔法
二話目投稿できました!
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………結果から言うと、読み切れた。
しかも、ほぼ全部、頭に入ってる。
というわけで――魔法について、簡単に説明します。
まず、魔法は「魔力」を使って発動する。
魔力は、自分の体の中と、空気中に存在している。
……ただし、地球には空気中の魔力がないらしい。ゼロ。
そして、使えるのは体内の魔力だけ。
使い切ると、魔力をためていた「枠」が空く。すると、自動的に周囲の魔力を吸い込んで、体内に補充される仕組み。
※地球で使い切ったら、体内で回復するのを待たないといけなく、めちゃくちゃ時間がかかる。
この「体内にためられる魔力の最大量」のことを――魔力量という。
で、なんと私たちは、その魔力量がとてつもなく多い。
特に私が一番みたい。
「良かった。あなたたちはみんな頭がいいから、読み切れたわね」
お姉ちゃんは、ニッコニコの笑顔。
……私たちは、げっそり。
『面白かった。でも、天花、読むの遅い』
天音も、にこやかに言うけれど――ちょっと不満げ。
……なにこの温度差。
夏と冬、いや、赤道付近と南極ぐらい違うんですけど。
「明日は実践ね。実践の方法も、魔法の種類も、初級魔法については全部、本に書いてあったでしょう?」
……と、お姉ちゃんがさらりと、新たな爆弾を投下してきた。
明日も昼ご飯、五分で食べなきゃいけないの?
……無理……。
そのあと、夕飯を食べて、寝て、朝ご飯を食べて――いよいよ魔法の実践開始。
…………結論から言うね?
あの分厚い本に載ってた魔法、ぜんぶできた。
……信じられない。
私たちは、お姉ちゃんが夕飯を作っている間、リビングのソファで屍と化していた。
「これ、毎日……?」
お兄ちゃんが、げっそりと、魂の抜けた声でつぶやく。
「た、多分……? でも、お姉ちゃんは、私たちを守るためにやってるから。」
心愛が、ちょっと引きつった笑顔でそう言う。
……うん、優しい子。わかってる、わかってるんだけどね。
「そうだね。がんばれば、楽な生活が手に入る!」
私はそう言って、自分に言い聞かせた。
それから、お姉ちゃんは、私たちに“守りの魔法”を中心に教えてくれた。
……気づけば、一週間も学校を休んじゃった。
(でも、明日! やっと学校に行ける! 理沙ちゃんにも会える!)
『よかったね。私もついていく!』
天音がそう言って、ふわりと一回転した。
◈◈◈◈◈◈◈
「おはよう、理沙ちゃん!」
私は元気いっぱいに手を振りながら挨拶した。
ちょうど登校中に会えたのだ。
「おはよう、天ちゃん! ひさしぶり!」
「ごめんね。ちょっと病気で、休まなきゃいけなくて。」
私は、理沙ちゃんにそう返した。
「そうなんだ。お見舞いに行こうとしたら、天ちゃんのお母さんに、
“天花の病気が移ると大変だから”って言われたの。
……お菓子、おいしかった?」
理沙ちゃんが、少し心配そうに言った。
(……まじでごめんなさい。家にいませんでした。病気も嘘です。)
「ごめんね、まだ食べてないの。ちょっと気持ち悪くて食べられなくて。
あ、病気でね。」
私はなんとか誤魔化した。
『理沙ちゃん、こんにちは!』
天音は、理沙ちゃんの顔を覗き込みながら言った。
……もちろん、理沙ちゃんには、天音の姿は見えていないけど。
じっと天音を見つめていると、理沙ちゃんが言った。
「どうしたの?」
「あ、いや、なんでもないよ。ひさしぶりだな~って思ってさ。」
私は笑ってごまかした。
(あっぶな……。天音は見えないんだよね、普通の人には。)
『そうだね。気をつけてよ。――あ、先に学校行ってるね』
天音はそう言い残して、すーっと学校の方へ向かっていった。
風も音もないのに、空気がそっと動いた気がした。
そして学校に着くと、クラスの子たちが口々に声をかけてくれた。
「月城さん、ひさしぶり! 大丈夫だった?」
「体調、もう平気?」
みんな、心配してくれていたらしくて、ちょっと照れくさかった。
「大丈夫だよ。」
「今は元気。」
みんなにはそう答える。
(………罪悪感がすごい。)
もう、だんだん苦笑いしかできなくなった。
『あ、やっほ。やっときた。』
先に来て、あちこちふらふらしていたであろう天音が、声をかけてきた。
(天音が早いだけだから。あ、ちょっと中にいてくれない?)
私は天音に言った。中とは、私の意識の中だ。
『分かった。』
天音が頷き、私の中に吸い込まれていった。
「おーい、席に着け!って、月城じゃないか。元気になったのか?」
タイミングよく、先生が教室に入ってきた。
「あ、はい、元気です。」
私は慌てて答える。
やっと、普通の日常(…ちょっと違うけど)が戻ってきた。
盛大なフラグですね。
やっと十話です!
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