過去&現在
ひさしぶりに投稿しました。二話投稿できるかも。
お姉ちゃん=琴音さん
その人は、お母さんを背負って帰ってきた。 私は、お母さんの姿を見た瞬間、悲しみが込み上げてきて、泣き出してしまった。 そして……安心したのか、そのまま眠ってしまった。
目を覚ますと、自分の部屋にいた。 そこから、簡単に葬式を済ませて、お姉ちゃんが私たちの引き取り先を探してくれた。
正直、それがなかったら、私は今もベッドの中で泣いていたと思う。
◈◈◈◈◈◈◈
目を覚ますと……家族がいた。みんな、私を心配そうに見ている。 きっと、お姉ちゃんがみんなを集めてくれたんだ。 天音も、見えるようになっていた。
「起きた? 大丈夫?」
みんなが私を心配してくれて、それがうれしくて…… ポロポロと涙をこぼしながら、私は笑った。
「大丈夫だよ。ぜーんぶ、思い出した。ありがとう、お姉ちゃん。」
私がいうと、お姉ちゃんは、心から、救われたように笑った。
『良かった。やっと見えるようになった。……、大丈夫?』
天音が、そう言ってくれた。
私は、うれしくて、うれしくて、ずっと泣いていた。 ここが、私の家。私の家族。そう思ったら、涙が止まらなかった。
他のみんなも、同じ気持ちだったみたい。 妹と天音は、声をあげて泣いていた。 お兄ちゃんとお姉ちゃんは、そっと目じりをぬぐっていた。
やっと、再会できたんだ。 こうして、何もせずに過ごす時間も、きっと無駄じゃない。
私たちは、みんなが疲れて眠るまで、笑い合っていた。
◈◈◈◈◈◈◈
朝、目を覚ますと、階下からいい匂いが漂ってきた。
階段を下りると、みんながそろっていた。
お兄ちゃんの透、お姉ちゃんの琴音と、妹の心愛。
みんながそろっている場所って、なんて幸せなんだろう。
「おはよう!」
私が元気に挨拶すると、お姉ちゃんが笑顔で返してくれた。
「おはよう、天花。朝ごはんできたから、座って。」
お兄ちゃんはめんどくさそうに、
「おはよー、天花。」
とつぶやいた。
心愛は天真爛漫に、
「おはよう、天花ねえ!」
と言った。
みんなが席につき、朝ごはんを食べ始める。
すると、お姉ちゃんが口を開いた。
「ここで、提案があります。これから朝ごはんと夕ごはんの時間は、報告の時間にしませんか?」
「「「賛成!」」」
みんなが声をそろえて言った。
「じゃあ今日は、一日使って作戦を立てましょう。」
朝ご飯を食べ終えて食器を片づけると、みんながリビングのソファに腰を下ろした。
「それで、何の作戦?」
お兄ちゃんが、お姉ちゃんに真剣な表情で尋ねる。
「ちょっと困ったことになってね。まず――私たちの家族というか、一族?は、“私たちにとっての悪”と戦ってるの。で、その連中が、私たちの両親を……うん。で、様子を見てたんだけど、どうやら動きがあったみたいだから、こっちでも動きやすいように、魔法の世界のことを暴露したの。」
お姉ちゃんは困ったように説明した。
「琴ねえがやったの? すごい!」
心愛がぱっと顔を輝かせる。
……もう、ほんっとにかわいい!
「まあ、不法侵――じゃなくて、ちょっとお邪魔させてもらってね。
それで、私が 理世 ……お母さんと、奏人 ……お父さんの子どもだって説明する手紙を、セリオスさんに届けたの。」
お姉ちゃんが続ける。
(いやいや、今、思いっきり“不法侵入”って言いかけたよね! まあ、仕方ないけど。)
『不法侵入……まあ、仕方ないか。』
私と天音は苦笑い。あ、お兄ちゃんもだ。
「そうなの! 琴ねえ、すごい! ……あれ? どうしたの?」
唯一、心愛だけが、きらきらした目でお姉ちゃんを見つめていた。
私たちの視線に気づいたのか、首をかしげる。
……純粋だなあ。
きっと、みんな同じことを思ったに違いない。
「え? 何か、間違ったこと言った?」
心愛がさらに不安そうに首を傾げる。
「何でもないよ。心愛はそのままでいいの。」
私は優しく言った。
心愛のその純粋な心は貴重だ……守らないと。
「ま、まあ、それでね。あなたたちは魔法で身を守る方法を身につけてから、学校に行ってほしいの。」
お姉ちゃんが話題を逸らした。
(でも、間違ってはいない。私たち自身が自分の身を守れるようにならないと。)
『そうね。』
天音が静かに頷いた。
「だから、今日中にこれを読んでね!」
お姉ちゃんが明るい声で言いながら、どん、と四冊の分厚い本をテーブルに置いた。
……しかも、それを人数分。
「…………へ?」
思考が完全に止まった。
いや、無理じゃない? これ、人が一日で読む量じゃないよ。
『…………でもまあ、読めるでしょ。私だって読めてたし。』
天音は、当然のように頷いた。
(いや、それは“天音だから”でしょ! 私には無理!)
そう、天音は昔から本の虫なのだ。
「が、頑張ります! 琴ねえ!」
心愛は元気よくそう言ったけど……その笑顔、ちょっと引きつってる。
「……まじ?」
お兄ちゃんは、それしか言えなかった。
「早くしないと、時間がなくなるよ!」
お姉ちゃんの明るい声に急かされて、私たちは渋々、本を開いた。
お兄ちゃん(透)は、15歳(中三)、心愛は、11歳(小五)です。




