第八章:『後輩たちの雪辱戦』 ー #5
非理歩魔廊(ひりぷ、まろう)は、その嗅覚で、すぐに情報屋の居場所を突き止めた。
中庭のベンチ。越妖紫門(おちょう、しもん)くんは、数人の生徒に囲まれ、いつものように、噂話を披露しているところだった。
後輩探偵団の三人が、真剣な顔で彼を囲む。
「…越妖先輩。ちょっと、お時間、よろしいですか」
非理歩が、低い声で、しかし、最低限の敬意は払って、そう声をかける。
越妖くんは、後輩探偵団の三人が、真剣な顔で自分を囲んでいるのに気づくと、ニヤリと笑った。
「おやおや、後輩探偵団のお出ましだ。どうした? 先輩たちに押し付けられた、あの難しい謎々は、もう解けたのかい?」
その、全てを見透かしたような言葉に、瑞真古(みず、まぶる)が、一歩前に出た。
彼女は、にこやかな笑みのまま、しかし、その瞳は、まっすぐに彼を射抜いていた。
そして、彼女は、こう尋ねたのだ。
「越妖先輩。鍵の在処を知ってる人を、ご存知ありませんこと?」
その、あまりにも奇妙な、しかし、完璧に計算された質問。
それを聞いた瞬間、越妖くんは、今まで浮かべていた軽薄な笑みを、完全に、消した。
彼は、数秒間黙って、目の前の編み物を持つ、小柄な少女を見つめていた。
そして、次の瞬間、腹の底から、楽しそうに、そして、どこか感心したように、大声で笑い出した。
「はっはっはっは! なるほどな、お嬢ちゃん。そりゃあ、いい『質問』だ!」
彼は、その笑い声で集まってきた野次馬たちには目もくれず、瑞真古だけを見ていた。
「俺が『知ってる』と答えても、『知らない』と答えても、あんたの勝ち、ってわけかい。…面白い。面白いじゃないか! あの先輩たちだけじゃない。この学園には、こんな面白い一年生がいたとはな!」




