9話
修羅場1回目!
世の中、理不尽である…。そう思ったのは、この数日の体力作りと魔力量の増加の基礎トレーニングと称した…地獄のトレーニング!
「ま、マジで…し、ぬぅぅ…。はぁ、はあ、はぁ…。」
只今、どこかの草原で寝転がっております。体力も魔力も空っぽだし。動けない。体痛いよぉ~。わーん。あーもぉ! 鬼いぃぃ!! 今で、どのくらいなんだ?
「おい。生きてるか?」
「しん…ぐぶぶぶ…ごっげっほ!? し、死ぬんだけど!?」
「おうおう。生きてんなぁ?」
倒れてる私の上にいきなり水の塊落とす!? え? マジで、土の上で溺れるって何!? 人でなし! 鬼! マジで死ぬかと思った。本人大笑いなんだけど!?
「うっげぇ、びちょびちょだ。…って、けっほ。はぁはぁ…。普通! 水を倒れてる人の上に落とす!?」
「汗気持ち悪かったろ? 流してやったんだよ。有難く思え?」
「お、横暴じゃん…。」
いや、こんなに疲労してんのも、死にかけてんのも、全部サルクスとエルダさんの地獄のトレーニングの所為なんだけど? 私人生で山登って下るのを全力で死ぬ気で走ったの初めてだよ。歩いたら、後ろから悪魔…違う。サルクスが攻撃してくるし、体力の限界来たら、隣で並走してるエルダさんから瓶に入った回復薬なのか、ポーションを無理やり口の中に入れて飲まされて体だけ元気になるし…。これを1週間寝る間も惜しんで…、いや、寝た。多分。気絶してたからわかんないし。回復薬のおかげでちょっとハイになってるから昼夜問わず、鬼ごっこをしてたよ! でもね。これ、怖い話あるの。
「あれ? エルダさんは?」
「ああ。お前が次に行く山の掃除」
「へ、へぇ…。」
そう、何が怖いって、私が気絶してる時間に山に住んでる長が居るらしいんだけど、話を付けに行っているらしい。動物って喋れるんだって思ってたら。普通に力勝負してるって言ってた。弱肉強食じゃんって思ってるよ。
それでも、襲ってくる動物やら偶に現れる魔獣をエルダさんが息一つ乱さず倒していくので惚れ惚れする。しかも、村の道具屋さんで一番安い剣で倒してるし…。しかも、動物ならその日の晩御飯になる。因みに、一昨日は熊で昨日はイノシシだったよ。美味しかった。サルクスさんって料理作れるんだなぁ。エルダさんは、まぁ。うん。ノーコメントで。三菜とかキノコは分かるからちゃんと分担してんだよ。うん。
でも確かに、2週目入ってから魔法攻撃増えたし…。死ぬって思ったよ。ぶっちゃけ、隠れ鬼だからね!? 私未だに魔法使えなんだよ! って言ったら、大丈夫。あんなのはな。雰囲気だ、想像力だよ! って言われたよ。
「いい加減。魔法使いたい。」
「あー。危機感が足りねぇのか? それかもっと死に物狂いでやったら、覚えんのかな?」
「…なんで、サルクスさんのは死ぬか生きるかの0か100なの? あ、この世界にだって学校あるんでしょう?」
そんな感じで教えてよ! そしたら、今よりマシになるのでは!? 私! ここにきて閃いたのでは!? っと期待を込めた眼差しでサルクスさんを見ているのに何でそんな渋い顔すんの? え? そんなに追い詰めながらじゃないと出来ないっと!?
「あーあるにはあるんだけどなぁ。あれは、まぁ。めんどくさいんだよなぁ。」
「何が?」
「まず、基本が違うからな。俺には合わなかった。って、事で、死に物狂いで頑張れよ。」
「…まじっすか!?」
グボン!
変な音がした。音の方を見ると、土が抉り取られている。何個も何個も何個も…抉り取られた土がふわりっと浮いて、ゆっくりっとサルクスさんの周りに集まり、そのまま圧縮されて女性の拳の大きさぐらいまで圧縮される。え、待ってまさか!?
「さぁ。頑張って避けて受けろ?」
笑う顔は”魔性”だって、村の女性が言ってた笑顔だ呼ばれるぐらいの美しさがある。私には鬼畜悪魔にしか見えないけど!
「ぁああ!? くっそ悪魔がぁぁぁ!!」
基本って何!? 確かに人によって教え方は違うけども!? 死ぬ! このままここに居たら死ぬ! 全力で走っていると背後で音が鳴る。
ゴシュ…バキッン!?
足止めたら死ぬ! コレ、絶対死ぬ! そう思った瞬間私の顔の横を何かが横切った。
ビューッッン゛
足を止めて恐る恐る後ろを振り返ると地面に深くめり込んでいる。その更に後ろの土の塊の傍に倒れるのは大きな鳥…。10mはある…。えぇ、さっきの音ってコレ? てか、貫通してんだよねコレ…。すっごい綺麗に頭打ち抜いてるんだけど…。あーもしかして、私、空から狙われてた? え、気が付いて、頭を貫通させた土の塊が地面を抉ってる? ねぇ、貫通した土の塊、シュルシュルと回転し続けてるんだけど!?
「ヒィィ!!」
「あー。今日の晩飯にでもするか?」
「食べれる…と?」
「まぁ、イケんだろ?」
そう言って、サルクスさんは手を1回叩くと頭を撃ち抜かれた鳥は消えた。何でも、サルクスさんの独自の空間にしまっているらしい。何それ! アイテムボックスとか言うの!? って興奮気味に聞いた私を引いた顔しながら違うと言われた。でも、アイテムボックスとか言うのはあるとの事で、ファンタジーだなぁ。私も欲しいなぁっと言ったら、そこそこ大きな街に行ったらあるとの事で楽しめである。この地獄を生き抜けたら…エルダさんが頑張ったご褒美で買ってくれると言われて喜んだ。
「って、事で続けようか?」
そう、愉快そうに嗤うサルクスさんは、指を鳴らし何十個もの土のボールを私に向ける。ああ、これがマジもんの悪魔って言うんだ。いや、悪魔ってか、魔王じゃん!? 楽しそうにしやがってえぇぇ!
「くっそぉ! こんのぉ! 鬼畜男ー!」
「あっはは、ほら、逃げ回れ。」
言うが早いが、私が逃げ出した瞬間に土のボールを私に向けて放つ。あーもぉ、加減ぐらいして欲しいんだけど!?
「あーもう。魔法魔法って、どーやんのぉ! あーもぉ!!」
思った瞬間、土の球が消えた…。え?
『おせぇーよ。』
私の頭の中で響く声は久しぶりに聞く声だった。そのまま、サルクスさんの周りの土の球も消えた。
『よう。久しぶりだな。俺の可愛い可愛いお姫様?』
皮肉たっぷりで出て来たロサを久しぶりに見て抱き着いたのは言うまでもない。
「ロ、ロサぁぁぁ!」
真っ赤な髪が光に反射してより濃く赫く輝き、エメラルドグリーンの瞳で私を映し出す。太陽の下が似合うなぁと感じてしまう。薔薇の化身だと言われても納得する。いや、精霊か? 分からん。
『おうおう。なーんかやつれたなぁ。あっはは、どんな姿でも可愛いなぁ。お前』
汗と土汚れの姿の私を笑いながらも抱きしめ返してくれるロサは優しいよぉ。泣きながらギュッと抱きしめる。優しさが染みる。そんな私の姿を見ていたサルクスさんからの声が重い。
「おい、何だ? お前」
声が硬い。サルクスさんはゆっくりとロサを見つめる。何かを見てる? でも、雰囲気が暗い? 不思議に思ているとロサが私の頭を撫でながら私の前に出てサルクスさんから私隠す。
「ロサ?」
『何っと聞かれたら困るなぁ。なんて答えたら納得する?』
なぁ? 答えた瞬間、ロサの頭上に巨大な岩と氷が落ちてきたが、当たる寸前に砕けて消えた。
「なんだろうなぁ…。でも、”人”じゃねーな。」
『危ないなぁ。夕夜が居るんだぞ? 怪我でもしたらどうするんだ? なぁ?』
雰囲気が重く、暗くなる。ああ、怒ってる。声のトーンが変わらないのに。でも、雰囲気が一気に落ちた。
「そうだな…。」
『ああ、でも、まぁ、女の方もか。はぁ。出て来いよ。』
そう言うと、サルクスさんの後ろからエルダさんが現れて、目線をロサから外さず静かに見つめて手には剣に手を掛けている。雰囲気がいつもと違うのは分かる。でも、声を掛けれる雰囲気でもなくて、どうしたらいいのか分からない。
『はぁ。ちょっと待て。場所を変えよう。』
言うが早い指を鳴らした瞬間に私の視界が歪んだ。かと思えば、目の前には花畑が広がっている。え…花畑? 場所の移動と言うより、空間事別の場所では? どこまでも広がる花畑と少しピンクの世界が広がる。
「ユウヤ。何をしているの?」
名前を呼ばれて振り返ると、白い丸いテーブルに椅子が4脚は、同じく白い。その上にお茶のセットがあり、その上お茶菓子まで置いてある。既に、エルダさんは、お茶の準備をして、いつの間にかリースも居た。え? 先程の険悪な雰囲気はどこに? 3人と1体がお茶を飲んでいる光景…。え? どうなってんの?
「ユウヤ? どうかしたの?」
「え、あーううん。何でもないよ。ごめんね。」
慌てて、皆の方に行きロサの隣に座る。リースは机の上にあるお皿いっぱいのお菓子を食べ、ロサは、エルダさんが淹れた紅茶を優雅に飲んで何してんだ。…? 優雅に飲んでんの!?
「え? 一体何がどうなってんの?」
『まぁ、取り敢えず、お茶飲もうぜって事になった。』
「へ、へぇ…。」
意味がわからない。いや、だって、サルクスさんからの殺気がビシバシこっちに飛んできてますが!? ロサ!! ねぇ、めっちゃ真顔でロサの事見ながらお茶飲んで殺気飛ばしてますけど!? 器用か! てかこっわ!?
「…んで? テメェは何だ? 人でも神でも悪魔でもねぇーな。」
エルダさんが全員に紅茶を入れ終わった頃にサルクスさんが口を開く。雰囲気が一気に重くなる。私もクッキーの音を立たせない様に食べないと行けなくなった。美味しいのに! 因みにロサとリースは堂々と音をたてながら食べてたのはちょっとイラっと来たのは黙っておく。
『別に、お前等らと敵対したいわけでもねぇーよ?』
「なら答えられんだろ? お前は…何だ?」
『そうだな。答えるよ。でも、お前等の正体も明かせよ。』
ニコリとロサが笑う。
「俺等の正体…だぁ?」
ピシっとロサと私のティーカップにヒビが入る。え? 正体? 2人の正体って何!? 人間じゃないの!? いや、待って? 人間だけど、結構重要…は! 王族とか? 貴族様とかその辺?
『俺はだけなのフェアじゃねーだろ? それとも言えねぇっての?』
あっは? 少し馬鹿にした様な声で挑発するロサにどんどん雰囲気が悪くなるサルクスさんと心配そうなエルダさんを見る私と2枚目のクッキーに手を伸ばすリース。いや、リース! アンタはこっちに関心持ってよ。
「…つまり、お前は俺らの正体ってのを分かってるって言う事だな?」
『検討はついてるかな?』
「そうか。」
パチンっと音が鳴った瞬間世界が停止した。
「なら、死ね。氷塊雨」
時間が止まったと私が思った瞬間には世界が正常に動く。…と同時に、サルクスさんの抑揚のない低い声が響き、頭上に氷の塊が雨の様に落ちてくるのはわかった。あ、死んだ。そう思う事しか出来ない。ただ、スローモーションに氷の塊が私に近づいて、当たって…死
『危ねぇーな。俺のお姫様に当たりそうだろーが。』
緩いロサの声と共に一瞬で消え失せる。
「大地の怒り」
サルクスさん言葉にすると、ロサの立ってる位置から下にひび割れると同時に岩を盛り上げて襲い掛かるり、頭上から囲うようにロサを閉じ込める。
「太陽の輝き」
手を翳しオレンジに近い真っ赤な丸い球体を出しロサを囲っているであろう岩に向けて放つ。
「ねぇ、リース。」
「ん? なんじゃ?」
「何で2人はロサの事攻撃してるの?」
ひび割れた部分をよけて紅茶を飲みながら、お皿からクッキーを頬張る。サクサクで美味しい。
「それは、まぁ。危険だと思われたからじゃろなぁ。」
「へぇー。」
3枚目を頬張りながら私の疑問に答えてくれるリースを見ながら、はて? 危険とは?
「と言うか、お主は良いのか?」
「ん? 何が?」
「あの、ロサとか言う男はお主の男じゃろ?」
「…ぶっ! 直接的過ぎなんですが? ま、まぁ、そうですけど!?」
人口とはいえ精霊からの男って言う直接発言はちょっと、かなり嫌なんだけど!? 感性の違いなのかな…。怖い。
「なら心配ではないのか?」
「ん? 何で? ロサは強いからあのぐらいなら大丈夫だよ?」
そうか…。そう言って途中だった3枚目のクッキーを食べ始める。私も紅茶とクッキーを食べながら3人の戦いを見る。
「サルクス。」
「エルダ。まだだ。」
言った瞬間、燃えていた岩事消えた。
『すげぇな。』
「無傷の奴が何ってんだよ!」
『いやいや。マジで、さぁ。流石は”闇に生きる王”魔王だな。』
褒めてるんだよ。そう笑顔で言い放った。
ロサは『』で喋ってます。
出てこなかった時期は、ずーっと夕夜の中に居ましたから地獄のトレーニングも頑張ってるなぁって思いながらズタボロの姿も内心めっちゃ愚痴ってる姿もどんな姿も大好きなので、ニコニコしながら見てました。偶に、ヤバい時は内側から守ってましたよ。誰にも気づかれずに。
って事で、次も修羅場が続きます。
やっと出せた…魔法!!