8話
すみません。
修羅場始まりませんでした!
「そう言うわけで、何やかんやで契約しちゃいました。てへ。」
「あ?」
「…う゛っぐぅ」
舌出したら頭叩かれた痛い。舌噛んだ。
「”何が”そう言う訳なんだ? あ゛?」
「うっへへへ」
完全な下っ端の笑いしか出来ない。そのぐらい怖いんだが!?
「なぁ、おい、聞いてんのかぁ? あ゛あ゛!?」
すっごいガン詰めされてるんだけど…? ねぇ、見て私の現状! 縄でグルグル巻きにされた状態で、2人の部屋に連れてかれて、しかも縄巻かれるのすっごい早かったんだけど!? そのまま引きずられて部屋の中に放り込まれたんだけど?? 酷くない?
「ふ、あ、はい…えっへへへへ。」
「お前の頭は空っぽか? あ?」
嫌だー!! 昭和のヤンキーみたいな話し方しながら私の襟ぐり掴んでくる。やめて! この制服が破れる! わーわー言っている様子を見ていたエルダさんが朝食を食べながら声を掛けて来た。
「まあまあ、落ち着てサルクス。」
「エルダさーん!!」
半泣きの私に近づいて縄を解いてくれる。女神よ!
「朝食を食べましょう? 朝、店番の娘さんが朝一で買ってきてくれたそうよ?」
ね? っと言われて仕方なく、渋々私の縄をと言いて席に座ったサルクスさんを見て私も斜め前に座る。まさかの部屋食なんだ。こー言うのって、下の食堂とかじゃないんだ。思っていると、騒がしいのは嫌いなのよ。サルクスっと教えてくれた。
「…っち!」
舌打ちしながらも席につく。
「さて、ユウヤが”契約”をしたと言う話を聞かせて貰いながら朝食を摂りましょうか。」
そう言って私の目の前に焼きたてのパンを置いていく。良い匂いなのに手を出すのが怖い…。
「…ひゃ、はい。」
笑ってるのに、笑って無い笑顔で私に優しい声で言うエルダさんを見て初めて、”優しい人は怒らせると怖い”の意味を知った。サルクスさんとは違った意味で怖かった。話しをする度に徐々に部屋の気温が下がっていくのが分かる恐怖って怖いね。隣のサルクスは優雅にご飯食べてた。私は目線を少しだけずらしたのに、合わせられる恐怖を味わいながらパンとスープを飲んでた。味しなかった。因みに、リースは大変じゃなっと言う顔をしながらフルーツ食べてた。可愛かった。
「い、以上です!」
「…。」
「あ、あのう…。」
「想像以上ね。はぁ。」
溜息吐かれた。うっそ。かなりヤバいの!?
「間抜けだとは思ってが、大馬鹿だった…とはなぁ。」
全て白状した結果、2人共、溜息と頭抱えてるんだけど…。
「”契約”したの仕方がないわ…ね。サルクスは今聞いた2種類の契約の事、聞いたことあるかしら?」
私は残念ながら聞いたことが無いわとエルダさんが腕を組みながら答える。
「あー。聖愛契約は、聞いたことあるな。確か、東の大国の国王が娘を嫁がせえる時に、契ったって聞いた。」
「へぇ。私達以外にもしたんですね。」
「よく自分の娘に、んな契約させたよなぁってあの時は、感心通りこして呆れたよ。けど、娘の方も少し魔法をかじってたらしいし。契約しとけば安全って思ったんだろうけど…。阿保だよ。契約ってのは魔法や魔術を使う奴にとっては重要で、危険なんだよ。」
簡単に言うと”娘は狂いながら死んだ”らしい。相手が契約を破ったんだ。阿呆だなとサルクスさんは鼻で笑う。
「ん? でも、使う本人は、相手にどんな契約をするのかは、説明したんですよね?」
「まぁなぁ。でも、相手の皇子。浮気性だったんだよ。」
「あー。そーれは…うん。説明した上で、破るなんて凄いですね。」
“愛”は盲目とは言うけれど…。その時は、件の皇子も娘だけを見て愛していたんだろう。でも、恋は熱くなりやいが、冷めやすいとも聞く。一概には言えないけど…。それに、浮気してても、全ての女性を愛すると豪語する男だって出てくるかも知れないし。
「結局そいつらが続いたのは約3か月…まぁ、浮気性の皇子にしたら持ったほうだって言われてな。」
ガチで一時期だった。けど、3か月…3か月かぁ。話の補足として、浮気性の皇子が惚れた娘が東の大国の何番目かの姫だった。そのまま2人は惹かれ合い、結婚までは秒読み。だが、彼女は心配だった。彼が、自分以外の女を好きになるなんて考えたくも無かった。だから、彼女は昔目にした”愛の契約”を彼に迫った。彼も可愛い彼女の為に快く快諾した…が、3か月目、皇子は、自分以外女性と浮気をして契約が発動した。その結果、最悪なことに、2人共死んでしまったらしい。片方だけが生き残りよりはマシだと思うのは黙っておく。
「まぁ、そうなるわなぁ…。」
納得していると、前から凛とした声が私に向けられる。
「つまり、ユウヤは“危ない”ことをしたのよ?」
「…はい。すみません。でも、後悔はしてないですよ。」
笑顔で2人を見ると微妙な顔をされた。わからなくもない。
「はっ! お前の後悔はどうでも良いんだよ。んなことより、俺らの方が面倒臭いんだ。」
バンッ! っとテーブルに飲んでいたコップを置く。その様子見ながら…でしょうね。と内心思う。
「この際だから聞くんだけど、追われてるの?」
「そうね。まぁ? でも、ユウヤの方が大変よ。相手はきっと、人間じゃないわよ。人間もバレたら追われるけど。」
指を立てて言うエルダさんを見て誤魔化された。私はってことは、サルクスさんとエルダさんを追いかけてるのは人間ってことかな?
「国は関与してきそうだななぁ。」
「た、例えば?」
「それこそ、さっき話した東の国とか王国に、あっと…帝国。」
帝国? なんか増えたんだけど!?
「そうだな。魔法騎士団とか上位の魔法使いに魔術師には気づかれる可能性があるわね。」
「可能性っていうか、多分出会った瞬間…だな。」
この世界の人って優秀なんだぁ…。なんか知らない言葉増えたけど、気にしないで、ご飯食べようっと! わーい。このオムレツ見たいなの美味しいなぁ…ご飯入ってる! ご飯入ってる!? え? オムライスじゃん!? 1人全力で現実逃避をしている間に、2人の会話が進んでいる。最早右から左である。 ご飯本当に美味しんだけど?
「後は、上の連中だな。」
「うふぇ?」
「殴んぞ?」
サルクスさんの言っている意味が分からずサラダを口に頬張った瞬間反応してしまった。ごめんなさいって。取り敢えず、咀嚼して飲み込みながらエルダさんを見ると水を飲んでいたコップを机の上に置き口を開く。
「神と天使よ。」
「……え?」
「エルダ、まだいるだろう。魔族、悪魔もだ。まぁ、今のお前なら一瞬で灰か塵だな。」
そう笑った中で1番の笑顔で言われた。しかも、ここぞとばかりに、エルダさんに”あーん”して貰いながら言われても!! くっそ! イケメンだからちょっとイラッてくる。でも、ロサだってイケメンだし! 負けてないけど。って、待って上ってそー言う上? 物理的な上って事!?
「神様と天使って近くに居るの!? なんで!? 後、魔族と悪魔って何!?」
混乱しながら私が聞くと、サルクスさんが、心底めんどくさそうに教えてくれた。そんな嫌そうにしなくても。
「はぁ。……あいつら”天使”は、2つの任務がある。1つ目は下界…つまりこの世界の監視な。それを”神”に報告と監視、2つ目が、世界に、神の愛し子が生まれた時だ。
「神の愛し子?」
神様に愛されてる子供? って事?
「そうだ。神子と呼ばれて、神の祝福を受けてるんだよ。」
「へぇ……ん? 祝福って…」
んん? おかしくない? それって、召喚者の特典じゃなかった? 思い浮かんだ瞬間サルクスさんが嗤いながら頷く。小馬鹿にしている…いや皮肉めいた笑みで答える。見る人に寄ったら極悪じゃん。
「誰も、召喚されたかった場合の”保険”」
保険…って何で必要? もしくは、国にとって”祝福”を持っている所有者が必要って事?
「…でも、それって天使が分かるだけで、人間には分からないんじゃないの?」
例え、自分の子供が”神子”だとしてもバレなきゃいいんじゃないの? だって、バレようがないのだから…。そう思っている私を嘲笑う様にサルクスさんは口を開く。
「そのための”天使”だよ。天使が神に報告して、神は、”教会”を通じてありがたい”ご神託”として仕えてる教会に人間に…教会の奴ら、”使徒”に伝えるんだよ。んで、神子様をお迎えに上がって教会にお連れして崇めるんだよ。」
あのイカレ野郎どもはどこまでも追ってくるから面倒くさいんだよなぁ。遠い目をするサルクスさんの隣でエルダさんが頷いている。
「使徒って何…?」
「教会に仕えてる信者。金持ちから貧乏人までいる。毎日1000人は入門してるんだよ。取り敢えず、衣食住は提供されるからな。まぁ、その分、禁欲もあるけど。」
「ふぇー。その”神子”さんはどうやって決まるの?」
もしかして、天使の匙加減? この子いい子だから、神子になって貰おう! みたいな?
「”神”か”天使”の力が体に宿っている事だ。」
「つまり、”ハーフ”って事?」
「そう―言う事。って言っても、アイツ等”混じってる”のは仲間として認めねぇーから。」
なんか不浄と交わった、面汚しらしいぜ? 面白いよなぁ。仲間じゃねー。って言いながら、神子が功績上げりゃあ、笑って仲間扱いするし、掌返しが早い事早い事。ケラケラ笑うサルクスさんの顔が本気で嫌そうな顔だ。笑ってるのに目が死んでるのは逆にすげぇな。てか、絶対にひと悶着あったんだろうなぁ。
話はそれっきりになり朝食を食べ終わり、ご飯を片付ける。その後、エルダさんに呼ばれて椅子に座る様に促されたので、腰掛ける。
「さて…と、これから魔法の戦い方を教えるつもりだけど。残念ながら私は、接近戦の方が得意だから魔法はサルクスに教えてもらって。」
「わかりました!」
つっても、何の基礎も分かりませんが! 女子高生だったもんんで! 基本体力も中の下です! そう心の中で思うと、クスっと笑う声が聞こえる。おいおい…。
「彼は、とても優秀だから心配ないわよ。」
ニコっと笑顔で教えてくれた。
「だから、まず、ユウヤにとっての”魔法”を教えて欲しいの。」
「ん? どういう事?」
「この世界とユウヤが居た世界では、常識の認識が違うでしょう?」
「あー。」
つまり、私の世界での”魔法”はファンタジー…”現実ではありえない”や空想や想像だけど、この世界では普通って言う、認識や意識の違いで代わって来るって事かな? 漫画やアニメ、小説でもあったけど…やっぱりそー言うのじゃないし…。その常識を覆すのって、私には出来るあなぁ…いや、出来るか…。見て来たしなぁ。
それから、泣きながら…基礎体力と基礎魔法の地獄のトレーニングが始まった…。
私…頑張れ!
次、多分! 修羅場の冒頭始まります!
魔法出したいので、魔法でバトルします!