7話
了承したら、うわぁ…と少し引いた顔をされた。いや、ロサから言ったんじゃん?
「…即答。俺が言うのもなんだけど。もうちょっと考えろよ。」
「…えー。何で?」
「い、いや、ほらもしかしたら、お前に不利な契約かもじゃん!?」
「えぇー。ならそん時は、指さして笑えばいいよ。」
ニコリと笑って言えば、うわぁーイカれてる。好きー。可愛い! おバカじゃん。なんか馬鹿にされてない?
「はわわわぁぁぁぁぁ。」
「いや、何その声。」
最終的に口に両手当てて変な声出すからちょっと引いた。なんで少し顔が赤いんだ?
「いや、悪い悪い。契約の話しな。」
「いや、本当にね!?」
私が言うとコホンっと軽く咳をして再度契約の話になった。ちょっと誤魔化したな?
「夕夜としてる現状契約は、”死契約”な。んで、俺がしたいもう1つの契約は”聖愛契約”つのがしたいんだけど。…多分、大丈夫だと思うけど最悪死ぬ。」
どうする? そう言いう声は楽しそうだ。
「おっけい! バッチ来い!」
「はぁ。…あのなぁ。どんな契約かぐらいは聞いてくれよ。てか、最悪死ぬつってんだろ。」
いいから聞けよ。と言われてもなぁ。今更じゃね? とか思うのは、きっとロサも想ってるだろうか。うん。黙っておこう。…でも、さぁ。本当に、今更騙そうとしてもあんまり関係がないって言うか…。ここまでロサが言ってくれてるのは、優しさってのもあるだろうけど、私への”好意”があるからでしょう?
多分まだ”愛”までは、無いと思う。好きはあると思うけど。だから、私の、メリット、デメリットを言ってくれるんでしょう? ぶっちゃけ、ここまで来たら私的にはどうでもいいんだよなぁ。ロサの事好きだし。一目惚れって凄いなぁ…。でも、まぁ、ロサも私に惚れてる時点で、かなりのヤバさだと思うけど…。だから、信じてるとか信じてないとかじゃないんだよ。これはね。ロサ。私が、ロサを勝手に信頼してるの。だから、気になんてしなくてもいいんだよ?
「えぇーいいよ。後でで、1つしたら、2つも一緒でしょう? だから気にしない! それに、ロサの事信頼してるからね!」
ニコっと笑ってロサを、そのエメラルドグリーンの瞳と目線を合わすと、何かを探る様に私を見て、いきなり爆笑した。しかも途中で咽た。のに、やめないのは凄いな!?
「ふははは。あっははは…! げっほ、けっご! ふはは。いいね。本当に、最高だ。」
「お褒めに預かり光栄だよ。」
ロサは私の前に手を出して掌をこちらに向ける。乗せろって事かな? 私も手を出しロサの上に掌を乗せた。その瞬間、身体中に熱い何かが駆け巡り、首を一瞬するような感覚になる。
『ーーーー』
ロサが何かを呟いた。私には聞こえない言葉? すると、ロサの口から言葉の様な黒いうにゃうにゃした形の何かが、ロサの首を一周すると、首に薔薇と棘の模様が浮かび上がる。契約の証かな? 一瞬気が抜けると同時に、夢の中で熱くなった背中から痛みが走る。痛くて、足から力が抜けると、慌ててロサが支えてくれた。
「大丈夫か?」
心配そうに言ってくる声が優しい。大丈夫だよ。心配しないで…。
「っ…だい、じょーぶ。」
「わかった。」
小さく頷き私を抱きしめて再度、私には聞き取れない言葉で囁く。段々と私の背中が熱くなり、じくじくと痛みが増す。まるで、背中の皮膚がゆっくり剝がされて、その上から新しい何かを貼られている感覚がする。しかも一度ではなく何度もされる感覚だ。初めは、チリっとする痛みだったのが、回数を重ねるごとに痛くて、しかも熱くなる。
「…っ!」
熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い…。アツい、アツい、アツい、アツい、アツい、アツい、アツい、アツい、アツい、アツい、アツい、アツい。あ、ああああ、痛い? 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い
イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…イタい…
『ーーーー』
さっきとは違う音がする。でも、意識が遠のく…何かに捕まってないと…。
いつの間にか掴んでいるロサの腕に爪を立てる。でも、気になんてしていられない。ギチっと繊維の破ける音が遠くで聞こえる。それでも、痛みで掴む手を緩める事が出来ない。知らなかった…。私って結構力強かったんだなぁ…、熱さと痛みでやられた思考で考える。現実逃避ってやつかなぁ…。暫くして、ふわりっと頭を撫でられる。ああ、ロサ? いつの間にか瞑っていた目を開くと笑っているロサが居た。心なしか疲れている。そのまま暫くすると首と背中の痛みと熱が消えた。終わった?
「ん。お疲れ、これで終わり。」
ロサを見ると笑って頷かれた。 成功ってことかな。良かった。死んでない!
「…は、ひ、は…ぁ。はぁ…。っふ…はぁー。」
ゆっくり息を吐いて目を明けると綺麗な青みがかった緑が私を映す。色が濃いなぁ。はっはは。
「これで、夕夜は俺ので、俺は夕夜のだよ。」
にっこり笑った、ロサの首元には、最初に見えた真っ黒な薔薇の花が描かれている。
「あーあ。わたしから見えないのは残念。ロサと私のは一緒なの?」
「ああ。」
なんでも、私とロサの契約証は背中と首に現れるらしい。って事は、私にも出ていると!? え? 何それ見たい!
「んで、契約ない様な?」
「…あ、うん!」
「もぉ。お前ねぇ。」
すっごい苦笑いしながら私をベットに座らせてその隣に座る。
「ありがとう。」
「へいへい。んで、”死契約”は簡単に、俺と夕夜の死を同じにするんだ。だから、簡単に言うと、同じ時間を生きるって事だな。俺が不死に近いから、夕夜も不死に近いし、俺は怪我とかも一瞬で治っちまうから、実質あれだ、不老不死に近いな。それと、俺か夕夜のどちらか片方が死んだらもう片方も死ぬ。だから、代償は”2人の死”だよ。」
「私とロサの生きる時間が一緒になる為に、2人の死が必要って事? その上、どっちか死んだら強制的もう片方も死ぬって事?」
「そう。ただ、俺は実質”不老不死”に近いからそうそう死ぬことはねぇよ。…でも、イレギュラーは存在する。例えば、理や因果に干渉出来る奴が現れたら、考えたくはねぇーけど、死ぬ場合が多いな。」
結構軽く言ってらっしゃいますけど…。そんな簡単に契約しても良かったの!? いや、まぁ、聞かずにいいよ! って言った私も私だけど…お、重いな!? でも、ちょっと嬉しいと薄暗い感情が喜ぶ。
「知り合いに居るの?」
「…まぁ、一応? でも、そうそう現れねぇから大丈夫だよ。んで、次な、”聖愛契約”は簡単に言うと、”愛”の契約。」
「…あ、愛?」
「おう。」
内心動揺している私を余所に説明してくれる。
「話の続きな? ”聖愛契約”ってのは、俺と夕夜の”行動、思考、風景”を共有できるって事だ。考えてる事も見てる景色も行動も把握できる。全て手に取る様に分かるって事。まぁ、その分”代償”がやべぇんだけど。」
「へぇ。どんな?」
「…契約した相手以外に、好意や愛情の感情が、契約者よりも上回った瞬間、契約者とその相手を1週間かけて目の前で殺される。裏切られた相手は”殺す”以外思考を奪われる。その上、眠れない。確か…あーっと、72時間くらい続く。んで、2人の死を見届けたら、思考は解放されて、正常に戻る…らしい。けど、正常と呼べるかは分からんともう。で、生き残った方は一生他者を愛せないんだよ。…ここまでで、質問ある?」
「え、あうーん。そーだい…だなぁ。」
え、やばぁ。”死契約”って名前からも大概だったけど、内容もヤバいって思ったのに…。”聖愛契約”の方がヤバいのでは?? ちょっと、斜め上に行ってますが、 ”聖なる愛”って書くのに? いや、でも、待って、これって裏を返せばロサがそれだけ、私の事を好きって…好きって事だよね!? あ、愛も入ってるのか!? え? どうなんだ!
「え、好き!」
「ん? あ、ありが…と、う?」
今、言う要素あったか…? そう戸惑うロサを見ながら、私もいつの間にか口から出てた言葉を戸惑いながら受け取ってくれた。好き!! まぁ、取り敢えず、ロサって結構私の事好きだね。って事だけわかったよ。それにしても、死契約は”死”が代償で、聖愛契約は”愛”が代償って事だよね? てか、聖愛契約作った人、ヤンデレだったよね? は! もしや、ロサは実はヤンデレとかなのか? だって、終始いい笑顔で私に、この契約の話してるんだもん。めっちゃいい笑顔だね?
「あー。うーん。ロサって、私の事大好き?」
「そーだなぁ。契約して、夕夜と一緒の時間を過ごしたいって思うぐらいは好きだな。」
それって結構…かなり私の事大好きだよね? 後、ロサって結構束縛と独占欲があるね? ちょっと、いや、かなり嬉しい。
「”死契約”は、背中だから、脱がされないければ大丈夫だ。風呂とか隠せるから大丈夫か。”聖愛契約”はどーすっかなぁ。」
「おしゃれです! って言えばいいの?」
「いや、知ってる奴は知ってるからな? 一緒に居る魔法使いは知ってるぞ。バレたら怠いなぁ。」
あーやっぱりサルクスさんってこー言うの詳しんだ。
「だろうな。」
「…ロサ。私の思考を勝手に読んで、コメント言わないで。声に出してる方にコメントして。ちょっとあやしくなるから!」
「そっかぁ?」
「そーだよ。って、そう言えば、契約印って同じ絵柄なの?」
「そうだな。同じ柄だな。見えてると思うが、死契約は真っ黒な薔薇と同じく黒い蔦が首に一周巻き付いてる。」
私の首元を見ながら、自身のシャツを指で軽く下に引くと白い首が晒された。あー首元の少し上にあるんだ。白い首には似つかわしく無い小ぶりな真っ黒な薔薇の花が散りばめられている。その上、薔薇と同じく黒い蔦が首に巻きついている。え、えっちだなぁ。って思ったら、伝わったんだろう少し顔が赤くなってチョップされた。可愛い。まぁ、最悪襟で隠れるからいいか。リボンでも巻く?
「んで、聖愛契約は、愛だからなぁ。真っ赤な薔薇か深紅色の薔薇? の大輪が背中全体に書かれてる筈…。見ねぇとわかんねぇけど。」
「それって、私とロサは”同じ契約印”が、あるって事?」
「ああ。そうだなぁ。どうかしたか?」
私を見ながら言うロサに笑って言葉にする。私の今の気持ちを。
「ん? 単純に、嬉しかっただけだから。」
ニコニコしながら言うと頭なでられたのが嬉しかったので、大好きと言っておいた。
「そうだ、この契約って、2人、いや3人に言うんだけどいい?」
多分、確実に、絶対! サルクスさん怒られる…。いや、キレられるだろうなぁ。リースは精霊だからギリ関与してくれるかも知れない! エルダさんは、正直割り切りそう…てか、分かんないんだよなぁ…。てか、ロサ自体は割と軽いし…。私説明出来るかな? 心配だ…が、成る様にしかならん! よし! っと覚悟を決めた私にロサは面白さを含んだ声で言う。
「いいが、多分もうすぐだと思うぞ。」
そう言った瞬間扉が勢いよく開けられた…。バアァァァンって音したけど、扉大丈夫なんか!?
「おい! 何時まで待たせる気だ。テェメの所為で朝飯冷めただろうが。…って誰だそいつは。」
「あ、やばぁあ。」
覚悟を決めた瞬間に訪れる最大の危機! 多分まだだと思うけど、現状最大の危機に直面した私は…色々大丈夫なんでしょか? 泊らせてもらった部屋に昨日まで居なかった”男”を連れ込んだ、女って現状、全て白状したら勝てるかな??
取り敢えず、修羅場決定。
夜中のテンションで書いてるので! 何も言わないで下さい!
行動=発信機、思考=盗聴器、風景=カメラって思いながら書きました。思考だけ常に共有してますが、ちゃんと、オンとオフは出来ます…多分!
後、次回! 修羅場パート入ります! 今回入んなかった…。