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5話


「だ、れ…?」

 優しい声が目の前に居た()の声だと認識する。そのまま、口を開けて私を見て()を出す。

 異様な光景だ。話掛けてきた人は、首を首輪の様な物と鎖で繋がれて、手は体の前でクロスさせられており、左の手の甲と右肩を一緒に銀色の杭で打たれ、片方も同様に杭を打たれている。首輪から伸びた鎖と二の腕のにある枷が繋がり身動きを取れない様にしている。下半身は両太ももから両足首にかけて枷が少しの隙間さえ許さない状態でがっちりと繋がれている。その姿はさながら囚人の様だ。

「ん? 僕は、うーん。そうだなぁ。簡単に言えば、”魔法(まほう)”だよ。」


()だけだ…それだけ、のはずなのに…

 それだけなのに…私の脳が()()()()と訴える。体全体から、鳥肌が止まらない。心臓の音が大きくなる。だから…。この(魔法)は…怖いな…。


「ねぇ…。可愛いお嬢さん。僕と”契約”しない? 何でも願いを叶えてあげる。」

 憂いを帯びた笑みで、それでいて、うやうやしくお辞儀をするイケメン…。繋がれているのに、器用だなぁ。

「…っ。」

 え、やっば。サルクスさんとは別軸のイケメンだ! いや、すっごい、綺麗なんだけど。赤い髪に緑…いや、エメラルドグリーンの瞳…薔薇の化身って言われても納得の姿だ。マジで薔薇の花が似合いそうだなぁ…。

「警戒…は大事。いい子だね。可愛い」

 警戒心の強い猫みたいで可愛いねぇ。私は人間ですけど? 猫ではないんです! って面と向かって言えたらいいのに、チキンな(ハート)ですので、言えません!

「は、はぁ。ありがとぅ…ございます。ははっははは…」

 …って、違う! 怖! 目の奥、光無いんだけど!? え? コワイって…。つか、ここどこ? てか、マジで、何この人。ヤバイ。何がヤバいのか分からないけど…ヤバイ…コレ確実にヤバい…。語彙力がなくなるってこういう事なんだなぁ。かっこいい見た目で、騙される…はっ!

「ホスト!」

「は?」

 は、怖すぎて混乱しすぎて変な事口走ってる…あわあわわあわあわ…

「あ、ちがった。すみません。…えーっと、…どなたですか? てか、貴方様はどなたで、何上私に、契約を持ちかけているのですか?」

 緊張し過ぎて変な言葉になった。やっば、恥ずかし! いや、ここって…夢だねここそうだよね。だって真っ白い世界に居るし…私、ちゃんとベットに入って寝たし! 

「あははは、普通に話しかけてきた。面白いね。そんなの決まってるじゃん? 可愛い君が気に入ったからだよ。」

 笑う彼は銀色鎖で体を固定され状態で、器用に笑う。カラカラと、ガシャガシャンっと音が鳴る。

「は…ぁ。」

「てか、それ以外に何かある? それに…さぁ。()()()()()だから…かな?」

 カニバリズムは求めてません! 目がマジじゃん! 私の事めっちゃ見てるぅぅぅぅ…。うん。無理、絶対無理!。

「え、遠慮します!」

「えぇーなんでだよぉ。()と契約したらなーんでも願い叶えられるぞ?」

 おい! 僕から俺になってるぞ! ブレんのが早いって!…なんか近くない!? さっきまでの距離が無い…。お買い得だよぉ~って言いながらこっち来るなよ! やめて、辞めて!?

「だって、”契約”したら私の事食べるつもりでしょう!? いや、だから、すみませ…ん? って近い近い何で近づ居てくるんですか?」

 丁寧に頭を下げ帰って貰おうとしたのに、顔上げたら思いのほか顔が近っかた。えぇ、何センチよキスできそうな距離なんだけど? この人…人か? 魔法か…パーソナルスペース狭くない? 初対面ですけど?

「うん。良いから、俺と”契約”してよ。てか、俺がこれだけ()()()()()お前何も感じないんだろ? 普通は、これだけ近づいたら良くて死ぬんだよなぁ。悪くて、意識持った状態で自分の体がボロボロになっていくのが分かんだけど…。」

「こっわ! 離れてよ! って、くっ付か居ないで…って羽!? 羽でくるまないでよぉ~!」

 離れようとするが、いつの間にか背中からだした4枚の羽根で私を器用にくるんで抱きしめる。わぁ~羽ふかふか、寝そう。…じゃないくって!

「ははは…マジかよ。いいなお前。イカれてるな。」

 さらに近づかれた…え、顔近い、え? 視点が会わないと思ったと同時に、一瞬の柔らかい感触を感じ、チュっと軽いリップ音が聞こえた気がしたと思ったら、お兄さんの顔が離れたて、あ、キスされたとわかった。それぐらい、目の前の”魔法”は楽しそうに笑っている。

「っ!? な、何するの…私のファーストキスだったのに。はぁ、悲しいような、いや、嬉しいような。あー、何か冷めてる自分が再発見されて辛い。まぁ、キスされてのはいい。多分、いや駄目だけど、この際イケメンさんだし、事故って思えばいいか。よし!」

意気込んで目の前の”魔法”に向き直ると、とても笑顔で毒を吐いてきた。

「うん。馬鹿だね。何か、馬鹿だと思ってたけど、ここまで馬鹿とは思わなかった。俺と()()しても大丈夫なんてさ。うん。益々気にいた。なぁ、」


”夕夜”


「…っぇ。な、ん」

 その()()を…、その()を聞いた瞬間、私の思考は止まった。

だって、そんな事ってある? 目の前にはとてもいい笑顔で笑う”魔法”が私を見つめる。でも、今ので私の思考が凍り付くには簡単だった。だって、何で?

「何で? 貴方が知っているの? 私の()() 何で? 」

 どうして、私の名前の()()()()()を知ってるの? 私がこの世界に来て一番驚いたのは、()()()()()()()だ。いや、マジで、驚いた。

 異世界なのに言葉分かるってことに。…でも、言葉が通じても私を助けてくれた2人は、私の()()()()()できなかった。名前だけが()()()()()()()()。だから、警戒が強くなる。この人は、”魔法”は、駄目だ。危険だ。

 再度、出会った時の警戒心がぶり返す。さっきまで、あんなに、ノリが良くて話しやすいのでつい忘れてた。ここはこの”魔法”が連れて来た空間…。つまり、この世界の支配者。

 でも、今更かなぁ。逃げろと体が言うのに動かない。何か今気付いたけど後ろ壁だし。さっきまで、ただの空間だったじゃん! 羽で抱き込まれてるもふもふが私を阻むんだけど!? ああ~嬉しくない。目の前には、獲物が餌を見定めている目をしてる。綺麗だけど。詰んだな。

「貴方は”何”?」

 覚悟を決めて問いかけると、蕩ける様な笑みで私を見て、羽で優しく私の頬を撫でながら同じく蕩ける瞳に私を映しながら口を開く。

「嬉しいよ。俺に興味持ってくれて、俺は禁術魔法書(きんじゅつまほう書)だよ。よろしくね。」

「あんまりよろしくしたくない…なぁ。…」

「だ、め?」

 首を傾げて私を見る人の形をした”魔法”は、瞳に涙を溜めて私を見上げる形をとる。…あ゛あ゛あ゛! 可愛いぃぃぃ! ああー、私の目には、頭に犬の耳が付いて、お尻に尻尾が…ああああ。可愛いねぇ。いや、流されるな! 私! ここで、ここで頷いたら、アカンぞ!

「へ、へぇ。で、でも、禁術って事は、危ないのはないのかなぁ?」

「うーん。まぁ、普通は危ないけど。夕夜なら大丈夫だよ。」

 危ないんかい! なんで私なら大丈夫なの!? でも、何より気になるのはあるんだけど…。

「そんなに、私に興味ある?」

「もっちろん!」

 即答じゃん。

「な、んで?」

「そんなの決まってる。俺は、”夕夜”だからいいんだ。夕夜しかいらない。」

「全然分からないだけど…。」

 そうだなぁ。ニッコリ笑って目線を空に向けると鏡の様な平らな空間にサルクスさんとエルダさん、リースが映し出される。

「例えば、今の俺でも、この位置から、()()2()()()()()()だけ、その瞬間ひき肉になる。今、夕夜の隣で寝てる人工精霊の()()()()()()()、ガラクタみたいに壊れる。バラバラになる。なぁ、意味わかるか?」

 嗤って、哂って、わらって、私に問いかける。

「俺の魔法(呪い)()()()()夢の中でも相手を呪い殺すし、壊す。偶に、夢で大丈夫でも直接会ったら、次の瞬間肉団子悲しい。でも、きっと、夕夜は大丈夫だから。だから、俺は夕夜が好き…ああ、こー言うのを、一目惚れって言うんだろ? それとも”運命”って言うのか?」

 悲しそうな顔をしながら、瞳は爛爛と嬉しさを隠せていない。そんな顔でも顔美人だね。でも、今のはまるで…

「脅し…かな。貴方が脅威なのは、私が知ってるのに? なのに、私の大切な人を殺そうとしてるね。止められないのに?」

 ゾクリと体を駆け抜けるのは、恐怖なのか高揚感なのか今の私には分からない。でも、それでも、この”魔法”は、私の事が()()なのだと確信があった。

「ねぇ。そんに私が良いの? そこまでして、私がいいの?」

「じゃねーと。夢の中まで来ねぇーよ。」

「ふーん。私と契約しても、貴方を縛り付けるよ。浮気とか許さないタイプだからね! それでもいいのなら、…私の”魔法”にしてあげるよ。ただし、一生一緒だよ。死ぬ時も、生きてる時も。」

 私って、結構重いよ? 多分!

「あっは。勿論。俺も縛るしいいよ。夕夜以外の物に何て絶対にならない。夕夜がいい。俺は夕夜以外いらないから、それぐらい愛してる。一目見て惚れた。だから俺をお前の”魔法”にして、さぁ、俺に()()()()()()。願いを言って。契約と盟約をしよう。」

嬉しそうに笑いながら、これまた物騒なことを言う。ふっは? さすがは、禁術魔法書だね。壊れてる…。私と同じだ…。

「ふふふ、そうなの。分かった。嬉しいよ。あー嬉しいなぁ。私も愛してる。」

 こんなに、求められたのは初めてだなぁ。歓喜ってこー言うのをいうのかなぁ…。あーっははっははは、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい嬉しい、嬉しい、嬉しい嬉しい、嬉しい、嬉しい…ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ、ウレシイ…うれしい、うえれしい、うれしい、うえれしい、うれしい、うえれしい、うれしい、うえれしい。

「って事で、名前つけて。俺に。」

「名前ねぇ。私ネーミングセンスないんだけど。」

 初めて見た時、凄く綺麗な赤い薔薇に見えた。ローズ…赤薔薇。うーん。あ、”ロサ”ってスペインだっけ? あったよね。

「”ロサ”は、どう? 薔薇の花って言う意味だよ。」

「ロサ…うん。()()()()だ。うれしい。これから末永くよろしくな。俺の()()()()

「こちらこそよろしくね。ロサ」

 そう言った瞬間、私の背中が()()()()

 え? 熱い…っ、熱い…声を出す前に、私の唇に柔らかい感触がした。驚く私を無視していつの間にか鎖が外れたロサが私を抱きしめてキスをする。声も空気も奪う様にまるで食べられる様なキスをされると、同時に背中に回ったロサの手が、私の背中をゆっくり撫でる様に一周する。

「…っはぁ。」

「あっは。可愛い。夕夜。これで、夕夜は俺ので、俺は夕夜のだよ。」

「っはぁ。はぁ。」

 息しづらい、はぁ。ゆっくり瞼が閉じる。体に力が入らない。倒れる前にロサに抱き留められる。そのまま、瞼、頬、鼻、口と啄むようにキスをされてる。

嬉しいな。名前が手に入るなんて。あー大好き。愛してるよ夕夜。じゃあ、もう朝だから、起きた方がいいな。()()()()()俺の可愛い“ご主人様”。」

 声と顔で幸せそうに微笑むロサが、私の手にキスをしするところで私の意識は暗転した。



やっと、”魔法”が出てきました!

お読みいただいた方はわかったと思いますが…。

夕夜はヤンデレ気味の独占欲強めの子です。でも、ちゃんと線引きして、線の内側を自ら入ってきたら独占欲が発動します。相手の確認は取りますので! そこまでは我慢できますよ。後、面食いだと思う…。


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