3話
「教会?」
教会って、あの教会だよね? 私が知ってる教会だよね? 迷える子羊を神様が救ってくださるとか言う。神聖な場所だよね。この国の教会ってヤバいの? でもなぁ。ぶっちゃけ私がいた世界でもそこまで関わんなかったから、世間一般としての認知しか知らないし。あの教会!? って言っては見ても関わんなかったから良くは知らないんだよなぁ。
「あー後、各国だな。国によって、思想や思惑はどこにでもあるからな。中でも、ヤ《・》バいのって、ここから南にある王都と隣国だっけ? まぁ、王都は2人も召喚に成功しいてんだし。隣国に緊張が走んのもわかる。」
そ、そんなに強いの? ま、まぁ確かに、漫画やアニメ、小説とかならすっごい力を秘めてるのが王道なんだけど、ここでもそうなの? え? 私出会ってワンパンされた一瞬でお空に行く感じ? いや、嫌なんだけ!? なんか、話の感じ教会は助けてくれなさろうだしな。
「そう…ね。だから、隣国は最近、”召喚”しようとしてたのね。でも、目前で作戦が頓挫したらしいわ。」
まぁまぁ、物騒な話である。その上、成功しなくて良かったけどな。溜息交じりに言うサルクスさんに首を傾げる。そー言えば”召喚”ってそんなに大変な作業なんだろうか。私は”穴”しか見てないし、しかもそれが未完成品を使わされた私としては、怖かった。その一言に尽きるのだが…。
なんかムカつく! 絶対見つけて一発ぶん殴ってやる! 2人が居る時にな! …誰だ、虎の威を借りる狐って言ったのは! しょうがないだろ、ぜったに相手は強いよ! 地面に”穴”作る奴だよ。くっぅ! 私にも魔法使えたらなぁ…。
「あーそれ、出たらしいぞ? 世界天災」
「…本当に?」
なんだ? お、お化けか? お化けのはなしか?
「…はぁ、それは今話しても意味ねぇーな。後で、考えよう。」
「そうね。」
そろそそ、私が会話に入ってもいい? 全然内容把握出来てないけど! ”アリス”とは一体誰なんだ! 話の流れ的には知り合い…とかでもなさそう。2人が嫌そうな顔をしてるから、きっと違うな。
「んでだ。”間抜けな”ユウヤちゃん。」
ニヤっと笑いながら口を開くサルクスさん。すっごい馬鹿にしてる!! うっわぁあああ!
「…ぐぅ。なんすか。サルクスさん。」
「はぁ。…お前はまず、国と教会には自分が異世界から来たってバレねぇー様にしろ。」
めんどくさそうに言うサルクスさんに頷く。捕まったらヤバいは何となくわかってる。話聞いたからね!
「…うぃっす。因みに、バレたどうなりますか?」
「…うーん。”魔法”を使える場合は、問答無用で、監禁して、洗脳、暗示、催眠を掛けられて、忠誠を誓わされる。かしら?」
「え、なら国に召喚された勇者様と聖女様はもう、ヤバいって事!? 私であった瞬間…お、終わる!?」
人権無いって事? いや、でも、そうなのか? てか、この世界にそもそも身分証とかあんのか!?
「あー、それは大丈夫でしょう。国が召喚したのよ? 多分国民も知ってるだろうし、何より、突然召喚されて何にも持ち合わせていたい”異世界人”に衣食住提供して、この世界の事を親切丁寧に教えたら、ユウヤならどうする?」
「あー。優しい人達って思う…かも?」
「でしょうね。しかも、好待遇でしょうね。」
そりゃそうか。いきなり召喚されたら、知らない人間、知らない土地で貴方は”勇者”です! 助けてください! とか言われたら、しかもそれが超絶美人か可愛い子に言われた挙句、歓迎会とか接待とか受けたら、信じてしまうかも知れない! これがいい大人なら裏か下心に気が付く可能性はあるけど、多分、私と同じぐらいの男の子だったら、信じるなぁ。って、なんかさっき聞きなれない言葉があったよね?
「…ねぇ。”異世界人”ってのは、私みたいな人の事?」
「あ、そうよ。”異世界”からやってきた人だから。”異世界人”よ。」
まんまだなぁ。もうちょっと捻って欲しかった。
「だから、”異世界人”ってのはバレんな。いいな。俺等にも迷惑掛かるから…な?」
「はい。」
最後のが本音だよね? ”な?”の力が強いですサルクスさん。
「そうね。それに、”異世界人”は”総じて、”無属性魔法”が使える事が多いの。勿論使えない可能性だってあるわ。でも、大体”魔法”が使えるなら、持っている可能性は高いわ。」
躊躇いがちに言うエルダさん。私のライフはゼロに近いです! 助けてぇエルダさーん。私の思いが伝わったのか、近くに着て私の手を握ってくれる。泣きそうである。
「そーなんですか。」
もうやだぁ。勝手に召喚されたのに、バレたら捕まるとか…リアル鬼ごっこかよぉ~。
「ええ。大丈夫よ。守るわ。心配しないで…ね。」
「エルダさーん。」
そうよね。追いかけられるのは嫌よね。よしよしっと私の頭を撫でてくれる。その上、紅茶を新しく入れてくれるとの事だ。しかも、お気に入りで、中々手に入らない少し甘めの紅茶。蜂蜜入りなのよ。蜂蜜この世界にあるんだ。少し落ち着いた私に、次は”無属性魔法”について教えてくれた。
「“無属性魔法”ってのは、まぁ、神様から貰う”祝福”って呼ばれてる。」
「祝福」
“無属性魔法”とは、どの属性にも当てはまらない属性。そのままだった。で、だから、無属性“らしい。持ってる人数がまず少ない。希少。それに、”祝福”と呼ばれるだけあり、自分の唯一の魔法と呼ばれている。なんでも、自分が欲しいと思った力が”魔法”になる…といわれている。
「まぁ、無属性魔法ってのは、結局何なのかってのは誰にもわかってね。ってのが現状。」
「自分だけの”魔法”…てか、この世界って”神様”いるの!?」
「はぁ? 居るだろ。お前のとこにも居るだろ?」
「え、た、多分? え? 待って、サルクスさんって神様に会った事あるの!?」
「…言いたくねぇ。エルダ。」
「私も、一応。あまりいい思い出は無いのよね。」
それ、会った事あるってことですよね? え? いらっしゃる!? この世界に?? うーん。そっかぁ。
「そうなんですねぇ。なんか、はい。あ! 勇者様は”無属性魔法”使えますよね? どんな魔法なのかって分かったりしますか?」
「ああ、後、ついでに、聖女様も使えるはずだ。」
聞いた情報でこれほど後悔したことは、元の世界で好きだった、アニメの物販の販売初日に行ったら一番欲しかったグッズが延期して来週販売になっていた時の次ぐらいの絶望だ。遠征だったから泣いたんだよな。ちゃんと調べておけばよかった…。通販とかも無かった。
「はぁ。勇者様ががすべての”自然魔法“と”無属性“持ってるし、聖女様も光魔法と無属性魔法って…」
っけ! チート野郎じゃねーか勇者様は! 聖女様も光魔法って…。レアじゃん! 勝ち組か! 2人そろって!
「妬むなよ。まぁ、勇者と聖女もここ最近は、魔獣討伐に駆り出されてるらしいから。せわしなく働いてるってよ。」
何の慰めなんだよ。大いなる力には…ってことか? これ、私にも魔法とかあればトントンなんだけどなぁ。どうせ捕まるなら最大限に抵抗はしたい!
「…そう言えば、ギルドの依頼も魔獣討伐が増えているわね。」
エルダさんの話によれば、ここ最近頻繁に“魔獣”が現れている為、勇者と聖女が駆り出されているらしい。それでも増える一方の魔獣…。
何でも“魔族”が関与して、操っているなど、関わっているとか何とか…人間はそう信じてるとの事。この辺はどうでもいい。
「魔族…っているんだね。」
「は? そりゃいんだろ?」
え、そんな当たり前みたいに言わんでも…私の世界にはいなんだからしょうがないじゃん! 何で神様が居た時と似た反応するんだ。
「なら、その”魔獣”とか魔族? とかを何とかする為に勇者と聖女を召喚したって事?」
「…多分な。1番初めに召喚の儀式を始めたのは、勇者が居る”王都”だ。」
増え始める魔獣を止める為に、”召喚”を行い、成功して”勇者”が現れた。そのまま現状を話、勇者に原因と魔獣の進行を止めてもらおうとしたが、数が多すぎた。食い止められない。そうして、再度”召喚”を行った。次は”聖女”が現れた。そこから、勇者と聖女は力を合わせて魔獣の進行を止めたり原因の追究をしているらしいが、間に合わない。王都で2度の”召喚”の成功だ。その所為で、他国でも”召喚”が行われているとの事だ。
「最悪」
その一言に尽きる。それでも、成功は半分だ。他にも、勇者や聖女に似た存在は確認されているが、中でも”無属性魔法”を使える者は少なく、”自然魔法”を使える人は多く勇者や聖女と同行したり王都や教会に属しているらしい。
「同意見。でも、召喚された側は何も持ってないし、何も出来ない。から、従うしかないってのも分かるな。だから、捕まるな。ここまで来たからには、守ってやる。エルダがお前に首突っ込んだからな。最後まで、お前が独り立ちしてもいいと思えるまでは守ってやる。」
か、かっこいい! え? サルクスさん…!! 隣で頷いているエルダさん。ちょっと泣きそうだ。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
なんかずっと主人公が脳内ツッコミしてる。