異変と新たな仲間
冒険者組合は、昼時でもないのに何故かごった返していた。
「いらっしゃいませ! クエストの受注ですか? それとも、現在進行中のクエストの報告ですか?」
「あ、えっとね、遺跡調査の依頼受けとるんじゃけどね__」
バクターの説明を聞いていた受付嬢は、少し驚いた顔をした。
「実は今朝からゾンビの目撃談が後を立たないんです……もしかしたら、その遺跡が原因なのかも……」
「えっ……この辺にも出たの?」
「クエストに影響が出ているようですし……こちらから依頼主様に相談してみます」
ちなみに、と受付嬢は続ける。
「クエストは継続なさいますか?」
「ああ、うん。そうじゃねえ……倒せんわけじゃないから、続けまーす」
かしこまりました、と受付嬢は一礼したので、バクターはカウンターを後にした。
「ややや! もし、そこの御仁!」
突然、そう誰かを呼び止める老人と目があった。
「…………?」
背後を見るが、誰もいない。
「……ワシか⁉︎」
バクターは自分自身を指差して言った。
「そうです、あなたです!」
老人は、黒っぽい色合いの布鎧と、その下にチェインメイルを身につけ、頭には額当てが付いた頭巾を被っている。
それは第二次ラグナロクで滅んだ、ヤマトと言う国の『忍者』と呼ばれるアサシンの衣装に酷似していた。
「ゾンビを相手取ったにも関わらず、その余裕……見たところ、相当な手練の方とお見受けします!」
「はあ、まあ……並よりは腕は立つとは思っとるけど……アンタ、誰じゃ?」
「ややや! これは失礼! どうもどうも、某、名をゴンゾーと申します! ゴンちゃんとお呼びください!」
老忍__ゴンゾーはそう言って、気さくに笑う。
「あ、えーっと、ワシはバクターでーす。冒険者やってまーす」
じゃあそー言うことで、と言って足早に去ろうとするバクターを、ゴンゾーは再び呼び止める。
「なんじゃ? ワシ、忙しいんじゃけど?」
「バクター殿! 某とパーティーを組んで下さい! 某も貴方の向かわれるダンジョンに行きたいのです!」
「は?」
首を傾げるバクターに、老忍はこう続けた。
「某が聞いたところによりますと、なんでもそのダンジョンには『死者の書』と『生者の書』なる死人を蘇らせる書物があるとか……それさえあれば、我が国ヤマトは復興の一途を辿れるはず!」
ゴンゾーは、バクターの目の前で跪く。
「お願いします! どうか……どうか某を貴方のお供にッ!」
「わぁったったっ⁉︎ わかった、わかった! じゃからこんな人目のあるところでやめんしゃい!」
「ありがとうございます! ではさっそく参りましょう!」
結局、バクターは根負けした。