表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

第三幕『老忍』

 夜中__ロゼレアは、謎の風切り音で目が覚めた。


「んぅ?」


 目を擦ると、隣で眠っていたはずのモネの姿がないことに気づいた。

 火の番をしているはずのバクターも、座って腕組みをしたままイビキをかいて眠りこけている。

 ヒュン、ヒュン、という音はそこから少し離れた場所から聞こえてくる。

 ロゼレアはモネのことが心配になり、バクターを起こさないようゆっくり寝床を抜け出すと、音のする方へと歩いていった。


「……!」


 木に隠れながら覗いたロゼレアは、思わず息を呑んだ。

 木々が少し拓いた場所で、一人の男性が槍の練習をしていたのだ。

 冒険者らしい男性はモネと同じ髪色をし、同じ装備と槍を持って、激しく舞うように演武を続ける。

 その男性の横顔は、何処となく__


「モネちゃん……?」

「ん?」


 男性がこちらに気づいて振り向くと、その姿はいつの間にかモネの姿に変わっていた。


「え……?」

「シスターロゼ? あ、もしかしてうるさかったっすか?」

「あ……い、いえ……」


 目を擦ってもう一度確かめてみるが、そこにはやはりモネの姿しかなかった。


「……夢だったのかしら……?」

「どしたんすか?」

「あっ! い、いえ……モネちゃんこそ、眠れないんですか?」


 気のせいだと自分に言い聞かせ、ロゼレアは切り替えるべく呟いた。


「ボクは元々睡眠が短いんすよ。バクターさんも寝ちゃってるみたいなんで、昼間のこともあるし、誰かは起きとかないと」


 槍を肩に担ぎながら、モネはそう言って笑った。


「シスターロゼも寝てて大丈夫っすよ。明るくなったら街に帰るっつっても、結構距離ありますからね」

「ありがとうございます。でも大丈夫。あっ、そうだ! せっかくですし、お茶にでもしましょうか」

「あー、良いっすね! ちょうど喉が渇いてたとこなんすよ〜」


 言いながら、二人は並んで焚き火の元まで戻っていった。


 翌朝__街まで戻った三人は、武器を聖別化させるために教会まで訪れていた。

 そこの、借りた一室。

 分厚いカーテンが引かれた場所で、蝋燭の灯りとそれに反射した武器の輝きが、三人の姿を照らす。

 朗々と聖句を詠唱するロゼレアの言霊を受けるたび、武器が僅かに澄んだ輝きを放つ。


「……これで、死者を攻撃できるようになったはずです」


 カーテンを開けながら、ロゼレアは言った。


「サンキューでーす」

「お疲れです、シスターロゼ」


 武器を納めながら、二人は呟く。


「じゃあワシ、いっぺん組合に行ってゾンビのこと報告してくるから。二人は適当にブラブラしててちょーだい。夕方くらいに酒場に集合しよっか」

「了解です」

「いってらっしゃい、お気をつけて」


 バクターを見送ったあと、二人は顔を見合わせる。


「じゃあ、わたくしたちはお茶にでもしましょうか?」

「そおっすねー、のんびりしますかー」


 モネとロゼレアは、バクターとは別の方向に進んで行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
修道女ちゃんもといロゼレアさんが仲間になって賑やかになりましたね(●´ω`●) モネちゃんの謎が深まりましたが・・・・(゜Д゜;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ