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僕を好きだ言ってたのに裏切った、最低の浮気女と間男を、協力者の女の子と一緒に、纏めて盛大にざまぁしてやった話

20作目になります。

17~19作目の短編の主人公視点になります。

「ずっと前から、ケン君が好きなの!……私と、付き合って下さい!」


 そう言って、僕こと『坐間 健斗』に告白したのは、幼馴染の友達である『香取 鏡花』だった。

彼女とは、小学生の頃からの付き合いで、当時は良く一緒に遊んでいた。

ある時何故か、僕にベッタリと引っ付くようになった。


 小学生の時は男の子みたいな恰好の彼女だったけど、当時の僕は何とも思わなかった。

なんか、良く隣に座るなーくらいの感覚だった。

そんな僕達も卒業し、中学生になった。

僕は嫌だった。

中学生になると、小学生の頃と違って勉強が難しくなるし、テストだって増える。

服だって、制服なんて時代錯誤な物を着なければならないし、立地は遠い。

本当に面倒臭い。

本当に憂鬱だった。


 そう思いながら、まだ着慣れていない制服に袖を通して、入学式に向かう。

その時、中学の制服を着た鏡花と会う。

鏡花は、凄く女の子っぽくなっていた。

ショートカットだった髪は、何時の間にか肩まで届きそうな長さになっていた。

何時もショートパンツやハーフパンツだったのに、今はスカートを履いている。

何だか別人になった様だった。


 実際、鏡花は随分変わった。

小学生の頃は男子に混ざって活発に遊んでいたのに、今は女子達といたりする。

時々、男子にも混ざって来るけど、以前とは違う感じだ。

まぁ、僕には相変わらずベッタリだけど。


 中学生になって、鏡花が女の子っぽくなったせいか、周りから揶揄われるようになった。

以前は別にそんな事無かったんだけど。

まぁ、何と言うか、鬱陶しい。

この前までは何にも言わなかったのに、面倒臭い。


 小学生の時からの友人が、『前々からずっと仲良かったんだよ』とか、『あんまりウザ絡みするなよー』とか言ってくれてるけど、効果は余り無い。

はぁ、イマイチ役に立たないよね。

一緒に遊んだりしてたけど、肝心な所で頼りにならない奴だった。

まぁ、仕方が無いね。


 外野がゴチャゴチャ言ってたりするけど、僕は僕なので、適当に流す。

一々反応するのもダサイし、こういうのは適当にスルーするのが賢いんだからね。


 そんな毎日を過ごしていたんだけど、中学二年上がった時に少しづつ状況が変わったような気がした。

鏡花が何だか凄く可愛くなっていた。

『女の子っぽい』から、如何にも『女の子』って感じだった。

成績もそんなに良く無かった筈なのに、何時の間にか全体の10位以内に入ってた。

元から運動神経も良かったけど、体育とかスポーツ大会で好成績を残すなど、目立った活躍をするようになった。


 そんな彼女だが、相変わらず僕に引っ付いていた。

最近は給食の無い日には、弁当を持って来てくれるようになった。

まぁまぁ美味しい。

時々、僕の嫌いな物が入ってたりしてたけど、それは残すようにしていたら、入れなくなった。


 鏡花が目立つ様になると、以前からあった揶揄いが、益々増えるようになった。

可愛くなって成績も良くて、弁当まで作ってくれる鏡花。

そんな彼女がずっと隣にいるんだから、どいつもこいつもゴチャゴチャ言っている。

外から言うだけで、僕には直接言わないけどね。

多分嫉妬だろうね。

情けない奴らだ。


 月日が経って、中学三年になった。

高校受験を控えている時期だ。

やっと中学生活に慣れて来たのに、この上高校があるなんて憂鬱だ……面倒臭い。

特に、受験勉強とか最悪だ。

そんな事を思っている僕とは別に、鏡花は益々綺麗になって行く。


 身長が伸びて、手足がスラっとして、体操着の上からでも分かるスタイルの良さ。

成績も一桁台になっている。

何だか遠くに行ってしまったような印象だ。

まぁ、相変わらず僕の近くにいるんだけど。

この頃になると、流石に僕でも分かるし自覚する。

鏡花は僕の事が好きで、僕も鏡花の事を意識しているって。


 周りから夫婦扱いされて、気恥ずかしいけど悪い気分でも無い。

寧ろ、優越感すらあった。

こんな可愛い幼馴染に、僕は好かれてるんだぞ! っと。

でも、君達にはいないよね?

そんな感じだ。


 中学三年にもなれば、流石に周囲もあまりガタガタ言う事は無くなった。

まぁ、何時もの日常だしね。

友人はなんか自分はやり遂げたって顔をしてるけど、多分君、そんなに役に立って無いよ?


 受験勉強は難航した。

基本的に僕のテスト勉強は一夜漬けで、それでもそれなりの成績を残してるんだけど、ちょっと色々忘れていた。

夏休みも終わって、いよいよ受験勉強に本腰を入れなければならない時期なんだけど、僕は苦戦していた。

本当に面倒臭くてイライラする。

鏡花や友人が、ノートや問題集を貸してくれたりした。

鏡花のノートは見易くて分かり易い。

友人のは……まぁ良く纏めているけど、鏡花に比べるとランクは落ちるな。


 全く、受験勉強なんて苦行、人生に必要なのかね? 馬鹿馬鹿しい!

それでもやらないと、ここら辺ではバカしか行かない底辺校になってしまう。

今目指している学校は、比較的近いしレベルも中々悪く無い所だ。

出来ればここに行きたい。

鏡花も行くしね。


 他に程々良い所だと、通学が面倒だし、県外じゃあ一人暮らしになる。

お金もかかるし、一人暮らしは自由があっても日常生活は不便になる。

だからって、寮生活とか息が詰まりそうだ。

結局、第一志望の高校が一番良い。

だからまぁ、結構頑張った。

そして、受かった。


 高校合格のお祝いに、家族でパーティーをしたりした。

鏡花も、結構勉強の時にお世話になったから、呼んだりした。

友人は……鏡花に言われるまで忘れていたけど、別に呼ばなくても良いかな? もう始まっちゃったし、今更来ても気まずいだろうしね。

あ、でもアイツも一応受かったんだっけ……失敗したなー。

呼んであげても良かったかも。


 こうして、やっと地獄の様な日々から解放されたある日、僕は鏡花から告白された。

勿論僕は受け入れたよ。

可愛いくて、僕の事を好きだって言ってくれる鏡花を拒否する意味なんてある?

僕だって、鏡花の事は好きだよ?

あれだけ一緒にいて、懐いてくるんだ、そりゃあ好きなるでしょ?

こうして僕達は、高校入学を機に、正式に恋人として付き合うようになった。

周りからは『え? 今更?』『やっとかよ~』って反応されたけど。


 友人からは、『そっか~、おめでとう二人共。お幸せに~って言うのも変か!』と一応、祝福された。

……まぁ、彼ともそれなりに長い付き合いだった。

高校も同じになったし、小中からの知り合いが殆ど居なくなるから、実質彼くらいしか残らないのか……。

まぁ、仕方が無いね。


 それから、高校生活が始まる。

新しい環境は正直ストレスだ。

鏡花や友人はそうでもないけど……案外図太いね。


 高校に入学してから、鏡花は注目の的だった。

成績上位者である事に加えて、あの見た目だ。

そして何人かの馬鹿な先輩が、鏡花に告白してはフラれたという事もあって、余計に目立った。

まぁ、僕の自慢の彼女だしね。

それは別の構わなんだけど、外野の声が五月蠅い。


 僕と鏡花が釣り合って無いだとか、そういう声だ。

ハッキリ言って、鬱陶しい事この上ないね。

お前達には関係ない話だろうに。

どうせ嫉妬だろ? 馬鹿馬鹿しい!

全く、下らない感情で喚き散らすなよ、見苦しい。

はぁ……本当に面倒だ。


 そんな声が出る度に、鏡花が釘を刺すし、友人もなんかやってるみたいだ。 

まぁ、騒がれているのは、鏡花にも原因があるから当然として、友人の方はどうだかな。

如何にもお前達の為にやっています、って感じなんだろうけど、あんまり効果が無い様で、一体何の役に立ってるのかな? って思う時がある。


 ある日、鏡花からクラスの友人達を紹介された。

正直、面倒臭い。

幾ら鏡花の友達だからって、クラスが違って普段から接点の無い相手と会ってどうするんだか。

鏡花的には、友達に彼氏である僕の事を、良く知って貰いたいって意図があるそうなんだが、僕は別に知りたくない。

面倒だし、どうせコイツ等も他と同様、僕と鏡花の事をゴチャゴチャ言ってるんだろ?

そんなヤツ等と仲良くする気なんか起きないのに。

まぁ、彼氏として一応、彼女の頼みくらいは聞いてやるさ。

嫌な奴等だったら、適当な所で関係を切れば良いし。


 そうして会った、鏡花のクラスメイトだが、意外と友好的だった。

てっきり、鏡花の彼氏である僕を値踏みして来るんだと思ったんだが、ちょっと肩透かしだ。

まぁ、悪くはないかなと。

それなら鏡花の彼氏として、僕も愛想を振りまいてやった。

最初は悪い関係にはならないかなと、そう思っていたんだが……。

何度か会ったりしている内に、何となく居心地が悪くなって来た。


 何と言うか、皆余裕があるというか、自身に満ち溢れている様な姿が、妙に癇に障る。

自分達は選ばれたエリートなんだ! って感じの雰囲気を醸し出していると言ったら良いのかな?

別にそんなにハッキリとアピールしている訳でも無いんだけど、何となくそう感じる。

何と言うか、ヤツ等からは僕と違う人種と言うか、何かそういった、隔たりを感じるんだ。

これは決して僕が、ヤツ等に劣等感を抱いたからじゃあない! 

何となく……そう、僕は嫌な物を感じているのだ。


 例えば、鏡花の友人Aなんかは、如何にも自分は『賢い男』だって言わんばかりの態度だし、友人Bは『健全な精神は健全な肉体に宿る』を自分は実践してまぁす! って感じだ。

友人Cなんかは『アタシ可愛いでショ?』を前面に押し出しているようで鼻に付く。

化粧や香水臭いし、鏡花を少しは見習えよ。

兎に角、誰も彼もが何だか癇に障った。

鏡花も良く友達やっていられるよ。

僕には無理だ。

だから僕は、色々理由を付けて、フェードアウトした。

鏡花は残念がっていたけど、仕方が無いよね。

僕が嫌なんだし。


 それから、外野の声が増々煩わしくなって来た。

本当に鬱陶しい。

仕方が無いので、友人に愚痴を溢しに行く。

こういう時に話を出来るのは、彼くらいしかいない。

あんまり頼りにならないけど、壁に話すよりかはマシかな。


 一通り、友人に愚痴を溢す。

友人は悩み相談みたいにしているけど、微妙に違うんだよな。

大体君、悩みを解決出来る様なアイディア、出せないでしょ?

と言うか、結構彼も面倒なんだよね。


 この前鏡花に弁当を貰った時だって、『今日も美味しかったよ』とか言ってやれとか、小言が一々ウザイ。

毎回の事なんだから、別に態々言う必要も無いのに。


 今回も、周りの嫉妬とかがウザったくて仕方が無いって事を愚痴ったんだけど、何故か友人は、


「鏡花に相応しい男に成りたい……ね」


 と、変な風に解釈した。

面倒だから、もうそれで良いや。


「うん。君も知っているだろうけど、外野の声が煩わしくてね。いい加減、どうにかしないと鏡花にも迷惑が掛かっちゃう」


 まぁ、実際の所、外野が五月蠅いと鏡花も大変だろうし、どうにかして黙らせたいのは本音だ。


「……やっぱさ、何かしらの結果を出すべきじゃないか? あんま言いたくないけどよ、鏡花に比べて、お前は何か特別な努力とかしてないだろ? 勉強でもスポーツ……部活とかに力入れてさ、頑張ってるとこ見せた方が、一番手っ取り早いって。だから……」


 はい、何時ものパターン。

何かある度に努力しろ努力しと来たものだ。

はぁ……本当に彼は分かっていない。

そんな誰でも考え付くような事、僕が分からないハズないだろ?


「それはそうだけどさ、そー言うんじゃあ無いんだよなぁ……」


 全く、僕は今直ぐにでも外野に黙って欲しい訳で、馬鹿でも考え付く当たり前のアドバイスなんて、無意味なんだよ。

それでも友人は面倒臭い説教染みた事を言って来る。

あーあ、またコレだ。


「別にさ、滅茶苦茶努力しろなんて言わねーって。ただよ、やっぱ何にもしないよりは、努力して結果出すしか……」


「そんな事は言われなくても、分かってるよ。でもさ、それだと時間が掛かるだろ? 僕としては直ぐに、五月蠅い奴等には黙って貰わないと、鏡花が可哀相だよ……」


 結局努力しろって結論だ。

それだと時間が掛かるし、その間も外野に好き放題言われるんだ、そんな僕の身にもなってくれよ。

ま、君には鏡花の様な彼女が居ないし、僕の苦悩なんて理解出来無いだろうがね……。


 このままいても時間を無為にするだけ。

はぁ、困ったものだ。


「何か無いかな……?」


 僕は無意識に首を捻りながらポツリと零した。


「あ、じゃあ、これはどうよ?」


 友人は何か閃いたようだ。


「ん? 何々?」


 一応、興味津々の振りをして聞いてみた。


「いや、さ。お前って結構顔はイケてるんだから、いっそ大胆にイメチェンしたらどうだ? 外見が変わるだけでも、結構周りからの評価は上がると思うぜ?」


「ええ……」


 期待した僕が馬鹿だった。

これまた、小学生でも思い付くような、浅いアイディアなんだから。


「ほらさ、この雑誌のモデルみたいな髪型はどうだ? お前、髪がボサボサだし、美容院とか行って、カットして貰えよ」


 そう言ってメンズ系の雑誌を持ち出してくる友人。

こんなの読んでるんだ……似合わないなー。


「んー……」


 一応、目を通したけど、駄目だな、全然ダメ。

僕の好みじゃない。

どのモデルも上っ面だけな感じで、全く格好良いとは思えない。

ガイアにでも囁かれれば? って感じだ。

友人の趣味が悪くて閉口する。


「眼鏡を辞めてコンタクトにするとかさ、化粧もどうだ? イケメンなメイクとか学んでみたらどうよ? 学校にはバレない様に注意してさ!」


 結構な妙案だ! って感じだけど、それもありきたりだし、メイクとか面倒臭い。

コンタクトだって嫌だな。


「ん~、でもなぁ……僕、あんまりこういうの、好きじゃ無いんだよな……」


 好みの合わないものを勧められるって、結構苦痛。


「外見変えるのが一番早いし、楽だろ。もう俺にはこれ以上のアイディアなんて出て来ねーよ」


 結局これで打ち止めか……全く、本当に頼りにならないな、君は。


「……うーん」


 一応、悩む素振りはするけど、却下。


「んじゃさ、何か良さ気なアクセサリーとかどうよ? さり気なく着けてさ、少しづつお洒落していくヤツ」


 そう言って友人は、アクセサリーを取り出した。


「ダッ……だからさー、そういうのはちょっと違うんだよね」


 思わずダッサって言いそうだった。

本当、センスがイマイチ過ぎる……。


「えー、マジで? もうホント無理だぞ。完全に俺は打ち止めだ」 


 どうやら本当にアイディアが出尽くしたようだ。

結局、何の意味も無い会話だった。

はぁ、愚痴だけ聞いてくれれば良いのに、変に絡むからこんな事になるんだよ……。

無駄に時間を使ってしまった事に、ゲンナリしちゃった。


 それから何時もの日常を送る。

鏡花が毎朝、僕の家にまで来て、それから一緒に登校する。

学校まで、何時も何かしら僕に話しかけているのだけど、僕としてはまだ眠いので、適当に相槌を打つ。

ハイハイ、ちゃんと話は聞いてるよ。


 お昼になって、鏡花がお弁当を渡しに来る。

そのまま適当な所で一緒に食べる。

時々、友人も混ざる。

まぁ、それはどうでもいいけど。


「はいコレ」


 そう言って食べ終わった弁当箱を鏡花に返す。

味は中々良かった。

昔に比べて栄養バランスも良くなった気がするし、僕の好物が多い。

母が何時も助かってるなんて言ってたっけ。

昼食の後、鏡花が色々話しかけて来る。

僕はそれに適当な相槌を打つ。

それが何時もの事なんだけど、今日はなんだか眠いので教室で寝る事にした。

なので、この場を解散し、僕は教室に戻った。


 その後、放課後に一緒に帰るんだけど、鏡花はやる事があるそうなので、少し時間を潰す事にした。

別にサッサと一人で帰っても良いんだけど、まぁ彼氏だしね。

帰っても特にやることが無いし、まぁ多少待つ事くらいなら、してあげても構わない。


 そんな訳で、僕は図書館に行く。

適当に時間を潰すには持って来いだ。

図書館を適当にうろついていると、女生徒が本棚から本を取り出そうとしていた。

背伸びをしているんだが、微妙に届かない。

僕はやれやれと思いながら、その本を取って上げる。


「はい、どうぞ」


 そう言って女生徒に本を渡してあげた。


「あ、ありがとうござます」


 そうお礼を言って、彼女は本を受け取り、司書の方に向かっていった。

その後、用事を終えた鏡花と一緒に帰る事になった。

鏡花は今日あった事などを話し掛けて来る。

僕はそれに、適当に相槌を打ちながら、帰路に着いた。


 期末試験が近くなり、憂鬱な気分になる。

鏡花が勉強を見てくれるって言ってたけど、彼氏としてなんだかそれは、情けない様な気がするので、遠慮した。

かと言って、友人と一緒にやるのもねぇ……。


「一夜漬けなんてやっても身に付かないんだから、毎日少しずつやった方がいいだろー」


 こう言って彼は僕を勉強に誘うけど、


「一気にやった方が僕は捗るんだよ」


 僕としては自分のペースでやりたい。

一気にやる僕と、毎日チョコチョコやってる彼とでは、ペースが合わないんだ。

それに……。


「んー、でもなぁ……そう言う君の成績自体は、僕とそんなに変わらないじゃないか。それで毎日の勉強って言われてもね……」


 そう、彼の成績は決して良い訳じゃない。

毎日予習復習をしているのに、一夜漬けの僕とそんなに変わらないんだ。

努力してこの程度なんだもん、努力が大事なんて言っても、説得力なんて無いよ。

部活だって、中学の時に二年生にレギュラーを奪われていたし、今だって補欠にも入れていない。

同じ一年生でも、補欠メンバーに入った選手はいるのに……。

克って字が名前にあるのに、負けてばかりじゃあないか。

そんな君が、僕に努力の大切さを説いたって、僕の心には響いて来ないよ。


 漸く、テスト期間が終わって気分がスッキリした。

その所為か、僕はある事が閃いた。

もう少ししたら、鏡花とは付き合って一周年になる。

つまり、その一周年を記念して、僕からプレゼントを送ってあげるのだ。

僕からのプレゼントだ、鏡花はきっと大喜びするに、違いない。

でも、ただ渡すだけじゃあ詰まらないな。

そうだ! サプライズにしよう!

ふふ、鏡花も驚くだろうな!


 ああ、ついでに友人にも僕の考えを伝えてやるか。

サプライズなんだから、鏡花にバレない様、協力して貰わないと!

こうして僕は、友人の元へ向かった。


「へ~、バイトか。良いんじゃないか? 付き合って一周年の記念とか、中々に気が利いていると思うぜ」


 どうやら友人も賛成の様だ。

ふふ、そうだろうね!

更に僕はサプライズでプレゼントすると伝えたんだけど……。


「サプライズプレゼント? いや、それはどうかな?」


「何でだい? どうせならただ渡すよりは、サプライズがあった方が良いだろ?」


「いや、それはそうかもしれないけど……」


「……何か不満でもあるの?」


 と、僕のアイディアにケチを付けて来たのだ。


「サプライズって、成功すればそりゃあ確かに良いけどさ、健斗からの最初の贈り物なんだから、別に隠す事は無いんじゃないか?」


 こんな風に僕のアイディアにケチを付けるのだ。

鏡花なら僕からのサプライズは喜ぶでしょ、そんな事も分からないの?


「そのお金で一緒にデートがてら、プレゼントを二人で決めたりした方が、良い思い出になると、俺は思う」


「そうかな? どうせなら驚きがあった方が良いでしょ」


 尤もらしい事を言うけど、それじゃあ驚きが足りない。


「ううーん……」


「何? 僕が考えたアイディアが気に入らないの?」


 折角僕が考え出したアイディアなのに、何が気にいらないんだか。


「いや、そういう訳じゃ無いけどさ……バイトしている間、鏡花はどーすんだよ?」


 鏡花がどうしたって?


「ん? 別にそんなに長期間やる訳じゃ無いし、鏡花には沢山友達が居るんだから、バイト期間中は、そっちと遊んでいればいいじゃん」


 そんなに長い事やらないし、別に気にする様な事でもないでしょ。


「いや、そういう問題じゃないだろ?」


「何の問題があるんだい?」


「何時も一緒なんだから、短期間でも離れたりするのは、不自然にならないか?」


「ちょっとの間くらいなら大丈夫でしょ」


「いや、でもなー。鏡花としては折角試験が終わって羽を伸ばせるのに、彼氏のお前と一緒に居られないのは、ちょっと不憫だし……」


「偶にはお互い自由な時間があっても良いでしょ。それに僕は、鏡花の為にバイトをするんだから!」


 少し会えない位で大げさな……。

それに僕は鏡花の為に、頑張ってやるんだよ?

君の好きな努力をしてあげるんだよ?


「それだったら、予め事情を話して、何なら鏡花と一緒にバイトとかどうよ?」


「それじゃ、サプライズにならないでしょ!」


 本当に駄目だな君は……僕からのサプライズだからこそ、感動があるんだよ?

何で分かってくれないんだ?

本当に、君のセンスは理解出来ないね。


「……分かった。健斗がそうしたいんなら、俺もこれ以上は言わない」


 やっとか。

全く、余計な手間を取らせてくれたね。


「そう、分かってくれたかい? じゃあ、鏡花には内緒で頼むね。……絶対にバラさないでくれよ?」


 ここはしっかりと釘を刺しておかないと。


「分かったよ。約束する」


「本当に絶対だからね! 台無しにされちゃあ、たまった物じゃ無いんだから!」


 ちょっと彼は頼りない所があるからね。

変なタイミングでバレちゃったら、たまった物じゃないからね。

念押ししないと。


「分かったって。お前がそんだけ真剣に考えてるんだ。俺も応援するよ。絶対に喋らないって」


 よし、これで話は通ったね。

それじゃあ、彼にも一肌脱いで貰おうか。


「うん……。でさぁ、短期のバイトだと何処が良いともう?」


「いや、決めて無いんかい」


「まぁね。やっぱり条件とか時間帯とかあるからね。直ぐには決まらないよ」


「で、俺からのアドバイスが欲しいと」


「そうだね。他人の意見も聞いておかないと、やっぱり」


 最初のバイトだからね。

一応、他人の意見を聞いてみないとね。


「あー、分かった」


 そう言って彼はバイトの求人雑誌やチラシ、ネット求人などを探していた。

僕も適当に漁ってみる。

探してみたけど、どれもイマイチかな……。

友人の見つけるのも、大して良く無い。

そうやって探していると、何だかやる気が無くなって来た。

そんな時、友人がある求人の広告を見つけ出した。

条件的には悪く無い。

早速応募してみた。


「あ、もう返信来た。履歴書持参で、日時は……うん、この日なら行けるね」


「そかそか、面接頑張れよー」


「そうだね。じゃ、僕はこの辺で帰るよ。あ、履歴書ってどこにあるんだっけ?」


「百均とか文房具屋に売ってるはずだよ。あー、ネットでもテンプレとかダウンロード出来たな。アプリでも作成出来るんじゃなかったっけ?」


「ふーん、じゃあパソコンで作るかな。手書きは面倒だし」


「……それで良いんじゃね?」


 こうして僕は履歴書を作って、バイトの面接に赴いた。

結果は採用。

他にも結構求人が来たそうだけど、受かったのは僕意外に数人だった。

ま、僕が真面目にやればこんな所だね。

こうして僕は、バイトに勤しむ事になる。

それが、あんな事になるなんて、思いもしなかったんだ。


 僕は結構器用な方だと思う。

だからバイトの事はすんなり覚えられた。

今では同期の子にも教えてあげている。


「あ、ありがとうございます。坐間君」


「いーよ、いーよ、気にしなくて。あと、同級生なんだから、別にそんな畏まらなくたって良いんだよ?」


「う、うん……」


 この子は『伊達 木乃香』さんだ。

友達からはキノちゃんて呼ばれているそうだ。

『このか』なのに、変なの。


 要領よくやれている僕は、雇い主からの評価が高かく、同期の子達の中でリーダーみたいな位置にいる。

別にバイト代が上がる訳では無いけどね。

そんな僕は、こうやって同期の子と一緒に仕事をしている訳だ。


「坐間君って凄いですね」


「うん? そうかな」


「うん。だって、私達の中で一番早く仕事覚えているし、こうやって教えてくれるんですから」


「あはは、ありがとうね」


「いえいえ、こちらこそ」


 こんな感じで仲良くやれている。

リーダーみたいな恰好でバイトを取り仕切るのは、ちょっと気分が良かった。

ここでは、ウザったい外野の声も無いし、小言が五月蠅い友人もいない。

鏡花もいないけど、偶には良いでしょ。

何時も一緒だし、このバイトが終わったら、何時も通りになるんだし。


 ここは給料を即日払いなので、助かる。

日を追う毎に、お金がどんどん増えて行くからだ。

……これだけあるんだし、まだまだ稼げるんだから、ちょっとくらいなら使っても良いよね?

そう思っていたら、思っていたよりも給料が目減りしていた。


「しまったな……思ったよりも使ってる。プレゼントが遠のいたな……」


 本来だったらもっとあった筈の給料が、少し減ってしまった。

バイト期間が延びるかもしれない。


「どうしたの? 健斗君」


 キノさんが声を掛けて来た。

彼女とは大分打ち解け、今では僕は彼女をあだ名で呼んで、彼女は僕を下の名前で呼ぶようになった。


「うん、彼女へのプレゼントの為にバイトしてるんだけど、目標額がちょっと遠くてね……」


「……そうなんだ? 彼女さんへのプレゼント……」


「うん。ここの給料も悪く無いんだけどね。中々目標達成が難しいかなって」


「……健斗君、あのね。知り合いの新聞屋さんの配達員の人が怪我をして、ちょっと人手不足なんだって聞いたんだけど……」


「! そうなんだ?」


 で、僕はキノさんから話を聞き、新聞配達のバイトを紹介して貰った。

朝早いのは面倒だけど、期間限定だし少しでも使った分を補填したいから、僕は新聞配達もするようになった。

それで朝、鏡花と一緒に登校する事は難しくなったけど、仕方が無いよね、僕は働いているんだから。


 新聞配達とダブルワークでバイトをしているので、結構疲れた。

夜家に帰ってからは、夕食を食べて風呂に入って直ぐ寝る毎日だ。

鏡花から連絡があったりするけど、面倒なのでスルーしたり、ちょっと忙しから連絡は控えて欲しいなど、伝えてあげた。

昼食も、弁当だけ貰ったらさっさと食べて寝る。

テスト期間も終わったし、授業を真面目に受けるのも馬鹿馬鹿しいから、寝てたりしていた。


 頑張った甲斐もあって、それなりに良い金額が溜まって来た。

キノさんから新聞配達を紹介して貰ったお陰だ。

配達員の方が復帰して、お役御免になったけど、その際、給料に少し色を付けて貰った。


 キノさんとは相変わらず仲良くやっている。

最近、キノさんは随分と垢抜けて来た。

以前は前髪で目元を隠していたけど、少し髪を切ったのかな? 顔が良く見えるよになった。

それに、前は眼鏡だったんだけど、コンタクトに変えたそうだ。

着ているのはバイトの制服だけど、何だかとても可愛くなって来た。


 合間に良く話すようになったんだけど、それでキノさんの事が良く分かるようになった。

実はキノさんは僕と同じ高校に通っていた。

クラスが違うから基本会わないし、学校では以前の様に目立たない格好をしているので、僕には分からなかった。

実は僕はキノさんと、学校で何度か顔を合わせていたらしい。

……知らなかった。


 キノさんが言うには、図書館でよく会うようだ。

まぁ、そこには僕も、放課後時間潰しに行くからな……。

話を聞くと、背が届かなくて取り出せなかった本を、無言で取って上げたりとか、図書館で騒ぐ輩に注意して追い払うなど、結構色々やっていたそうだ。

言われてみれば、そんな事をしたような気がする。

騒いでるバカ共に注意した記憶もあるな。

時間潰しに来ていたのに、横からギャアギャア五月蠅かったから言ってやった記憶がある。


 しかしそうなると、僕が鏡花との事で、謂れのない中傷を受けている事も知ってるのかな?


「クラスの男子が変な事を言ってるのはありましたけど、でも、実際に会ってみたら健斗君は凄く素敵だし、彼女がいたって全然不思議じゃないと思います!」


 そう、言ってくれた。

どうやら彼女はそこらのバカな外野共とは、一線を画すらしい。

全く、彼女のようなまともな人がいれば、僕も煩わしい思いをしなくて済むのに。


 ……彼女と話して、一緒に仕事をするのは楽しい。

ちょっとおっちょこちょいな所がある彼女を、僕がフォローしてあげたりするんだけど、その度に、


「健斗君は凄いですね」


「頼りになります!」


 そう、言ってくれるのだ。

こんな風に言われたら、僕もちょっと誇らしい気持ちになる。

何だかな……彼女といると心が安らぐのだ。


 新聞配達のバイトが終わってからも、僕は鏡花と一緒に登校する事は無くなった。

朝、もう少し寝ていたいからだ。

放課後はバイトもあるんだし、今までは特に忙しかったから、朝くらいはゆっくりしたいんだ。

母親が五月蠅く言って来るけど、仕方が無いだろう?


 それでも、学校に向かわなければならないのが、辛い所だね。

眠い目を擦りながら登校する。

キノさんとはSMSで挨拶する。

流石に一緒に登校なんてしたら、誤解されるからね。


 昼食の時間、最近鏡花とは一緒にお弁当を食べてないから、今日は鏡花の誘いを受けた。

鏡花は喜んでいた。

何時も通りの昼食だけど、鏡花の様子が少し違った。

何かを聞きたいような素振りだ。

でも、イマイチ踏み込めない……そんな感じだ。

付き合いも長いからね、流石に僕でもそれは分かる。

多分、余り会え無かったり、連絡とかも余りしない理由を聞こうとしているんだろうけど、サプライズがバレる訳には行かない。

僕は適当にはぐらかす。

それでもなお、食い下がるようだったから、少し不機嫌になる。

こうすると、鏡花は黙るんだ。

ま、もう少ししたらちゃんとサプライズしてあげるんだから、大人しく待っている事だね。


 長期休暇期間に入ってから、僕はバイトに精を出すようになった。

シフトを増やしたんだ。

学校がない分、バイトに入れる日が増え、そしてお金も貯まって行く。

そうなると、ちょっと使っても良いって思っちゃうよね。

新聞配達で幾らか取り戻せたし、毎日頑張る自分に、少しばかりご褒美をやっても、罰なんて当たらない。

と言うか、自分で稼いだお金なんだから、自分の為に使うのは、当たり前の話だよね。


 そんな訳で少しばかり、課金とかしちゃったりした。

鏡花から連絡があったりしたけど、午後からのバイトもあるし、日中は英気を養いたいから、昼間は用事があって忙しいって伝えた。

嘘も方便、折角の長期休暇期間なんだからね。

自由を満喫しなきゃ。


 そうして僕は昼間はゆっくり寝て遊んで、午後からはバイトに勤しんでいた。

何だかんだでキノさんがいるから、バイトは楽しかったりする。


 休憩時間中、キノさんと話しをしていたら、休みの日が被った事を知った。

だから、その日に一緒に遊ばないかと提案してみた。


「え!? 良いんですか? 彼女さんがいるのに……」


「鏡花の事なら大丈夫だよ。どうせあいつも、友達と遊んでいるんだしね。それに、友達同士で遊びに出掛ける事くらい、普通でしょ?」


「そ、そうですね! 遊びに行くだけですもんね!」


「あはは、じゃ、当日はよろしくね。キノさん」


「はい! よろしくお願いします」


 そう約束した。

家に帰ってスマホを確認したら、休みの日に鏡花から一緒に出掛けないかと連絡があった。


「残念。その日はもう予定が入っちゃったんだよね。もう、タイミングが悪いなー、鏡花は……」


 僕は断りの連絡を入れた。

鏡花からの返信があったけど、サッと目を通しただけで終わった。


 それから数日後、僕はキノさんと隣町まで遊びに行った。

話題の映画を見たり、ショッピングとか食事とか、友達らしい遊びだった。

鏡花とのデートと違って、キノさんと遊ぶのは何だか新鮮で、楽しかった。

何だろうね? 鏡花は一々デートプランを練ってくるから、型に嵌った行動しか取れないけど、キノさんだと色々と自由にやれてる感じがする。

開放感かな? そういうのがあると思う。


「今日は楽しかったよ、キノさん」


「はい! 私も楽しかったです!」


 結構色々歩いたから、少し疲れたけど、充実した一日だった。

名残惜しい気持ちだけど、キノさんと別れて僕は帰路に就いた。

スマホに鏡花からの連絡が入っていた。

『今度、何時会えるかな?』ってあった。

まだバイト期間中なので、『分からない』と返信した。


 それから、キノさんとはバイトが始まる前に会ったりした。

どうせ午後から一緒に入るんだから、少し早く会っても問題は無い。

バイトまで少し時間がある時は、何処かの店で暇潰しをしたりしている。

そういう事がそこそこあったので、少しお金を使っちゃったけど、リカバリー出来る範囲だから問題ないね。


 毎日が楽しい。

それはきっと、充実してるからだ。

気心の知れたキノさんがいて、お金が貯まって行く実感もあって、煩わしい奴らがいない。

ああ、つい最近友人からまた小言が入ったな。

鏡花との時間を作ってやれとか。

本当に余計なお世話。


 しかし、楽しい時間は、あっという間に終わってしまうものだ。

長期休暇期間も、いよいよ終わりに近づいてきたし、アルバイトの期間も、もう直ぐ終わる。

予定外の出費はあったけど、プレゼントに十分な金額は貯まった。

やっとサプライズが出来るな。


 バイトも最終日を迎え、最後の給料を受け取る。

やっと終わった……終わってしまった。

短期といってもそこそこの期間はあった。

やり終えた充実感と、終わってしまった喪失感に、ちょっと感傷的になる。


「今日で、終わりですね……」


「うん、そうだね……」


「「……」」


 少しの間、無言になる。

このバイトを通して随分と打ち解けたキノさんとの関係が、終わる……終わってしまう。

別に同じ学校だし、新学期が始まったら普通に会えるんだけど、そうじゃあない。

僕には付き合っている彼女がいる。

それなのに、学校でキノさんと親しくしている姿を見られたら、また無責任でバカな外野共が騒ぎ立てるだろう。

謂れの無い誹謗中傷を受けるなんて、嫌だ。

全く、本当に存在自体が害悪だ。

アイツ等がいなければ、キノさんとは学校でいつでも会えるのに……。

最初からキノさんがボクの彼女だったら、どんなに良かっただろうか……。


 このバイトを通してでしか、僕はキノさんと一緒にいられないのだ。

キノさんも、それを分かっている。

お互いに何かを言おうとしていたが、結局何も言えなかった。

こうして、僕達は何時もの日常へと戻るのだった……。


 次の日の朝、僕はどうにも起きれなかった。

開放感と喪失感、それとこれまでの疲れもあったのだろう。

トイレと食事以外は、一日中部屋に篭っていた。

スマホに鏡花から『会いたい』って連絡があったんだけど、何もする気が起き無いので、適当に無視した。

……そういえば、鏡花へのプレゼントを買うのを忘れていたけど、別に明日で良いや……。


 一日ゆっくり休んだ事もあって、今日は体調が良いや。

お昼を過ぎてるけど、そこはご愛嬌で。

僕は早速鏡花へのプレゼントを買いに出掛けた。


 ジュエリーショップで物色しているんだけど、悩むな……。

デザインもそうなんだけど、やっぱりお値段が……。

これだ! って物になると、明らかに予算オーバーだ。

桁が一つ違う。

価格が手頃な物はイマイチなデザインだ。

これじゃあ、映えない。


 何店舗か周ってみて、店は絞れた。

あとは、プレゼントそのものなんだけど……予算との兼ね合いを考えると、中々難しい。

使ってしまった分を合わせたら、選択の幅が広がったんだけど……いや、アレは仕方が無い。

必要な出費だ。


「はぁ、面倒臭いな……失敗したな。こんなに悩むんだったなら、鏡花本人に選ばせれば良かったよ。でもそれじゃあサプライズがな~」


『そのお金で一緒にデートがてら、プレゼントを二人で決めたりした方が、良い思い出になると、俺は思う』


 友人の言葉が頭を過ぎる。

はぁ、もう少し素直に、彼の意見を聞いておくべきだったかな?

それとも、今から鏡花を呼んで、サプライズだって言って、好きな物を選ばせてやるか?

……駄目だな、それは。

折角ここまで来たのに、最後でそれじゃあサプライズの感動が薄れる。

あくまで、僕が選んであげるから、鏡花は喜ぶんだから……。

ん? そうなると、別にそこまで高い物である必要は、無いんじゃないか?

僕が鏡花の為に頑張って、鏡花の為に選んであげるんだ。

だったら、そこまで値段に拘る必要は、無いんじゃあないか!


 そう思った時、何だか霧が晴れたような感覚がした。

大事なのは僕からの気持ちなんだから、それで良いじゃあないか。

ハハ、僕とした事が、変に考え過ぎたな。

そうして僕は、手頃な価格の無難なデザインの商品を購入した。

店員にラッピングをして貰い、それを受け取った。

外に出る頃には、随分と暗くなっていた。


「もうこんな時間か……今日は良いかな、もう」


 そして僕は帰路に就く。

明日、プレゼントを渡してやろう。

鏡花はきっと、喜んでくれるだろうな。

ま、僕がバイトまでしてプレゼントするんだから、当たり前だけどね。

色々あったけど、これからはいつも通りの日に戻るだろう。

この時の僕は、そんな風に思っていたんだ……。


「うわ……もうこんな時間か……」


 起きたらもう、正午を過ぎていた。

スマホには鏡花からの着信やメッセージが何件か着ていた。

バイト中ずっとマナーモードにしてたから、今でもそのままの設定だった。

だから、これまで鏡花からの連絡があっても気が付かなかった事が多かった。


 鏡花からのメッセージは『会って話がしたい』だった。

丁度良いなかと思ったけど、まだ起きたばかりで頭が回らないから、もう少しゆっくりしよう。

鏡花には後で連絡すると返信しておいた。


 朝食兼昼食を取って、シャワーを浴びる。

その後部屋で、どういったロケーションでプレゼントを渡すかなと思案していたら、いつの間にか寝ていたようだ。

すっかり外は暗くなっていた。

ちょっとやる気が削がれたけど、あんまり引き伸ばすのも良くないな。

どうしようかと思ったけど、やっぱり今日渡そう!

場所は……と、思ったら鏡花から連絡が来た。

うん、良いタイミングだ。

僕からも話があるから、どこかで会わないかと返した。


そうすると、直ぐに返事が来た。

『何時も遊んでいた、あの公園で待ってる』と。

あそこか……懐かしいな。

昔よく一緒に遊んだ所だ。

一応、思い出の場所だし、うん、悪くないな!

僕は内ポケットにプレゼントを入れ、思い出の公園へと赴いた。


 公園へ向かう途中、僕は鏡花がプレゼントに、どんな反応をするか想像していた。

喜んでくれるのは確定として、もしかしたら……と思う。

もう、付き合って一年が経つしね。

そろそろ、僕達も『次の段階』に進んでも良いかもしれない。

今までもちょっと良い雰囲気になったけど、家には親がいるからな……。

夏の間も一緒にいたけど、お互い家の予定とかあったし、お泊りデートしようにもそれをするお金が……。

鏡花も夏休みの部活とかで、予定が合わない事もあった。

もっと早く、バイトとかしていれば良かったな。

ま、今はお金があるし、何処か良いホテルとか探してみようかな……。


 そして遂に公園に着いた。

鏡花は先に来ていたようだ。

流石にしっかりしているね。


「待たせたね、鏡花……」


 久しぶりに合う鏡花は、相変わらず可愛かった。

キノさんも凄く可愛いけど、やっぱり鏡花も良いな……。

暫く顔を合わせなかったこともあって、何だか新鮮な感じがする。

見慣れちゃっていたけど、こうして見ると、やっぱり自慢の彼女だよな~。


 そんな風に思っていたら、いつの間にかは分からないけど、見知らぬ誰かが鏡花の横に立っていた。

誰だ? 僕と鏡花の邪魔になるんだけど?

その男は、雑誌の爽やか系モデルとかで売ってそうな、そんな見た目の男だった。

僕のあまり好きではないタイプの男である。


「鏡花、その人は誰? 知り合い?」


 折角のサプライズプレゼントに、余計なノイズがある事に少し苛立つ。


「ケン君……この人は……学校の先輩で……」


 鏡花が言い淀んでいる。

僕は、何か嫌な予感がした。


「初めまして、座間君。僕は『名護 清仁』と言います」


「はぁ……」


 ナゴキヨヒト? 知らない、誰だよ。

いきなり訳の分からない男の登場に苛立つ。

何なんだ? この男は!


 この時、鏡花とナゴはお互いに目配せしていた。

そして、鏡花は意を決したような表情で僕に告げる。


「ケン君……ごめんなさい! 私と……私と別れてください!」


 別れの言葉を。


「は……? な、あ……」


 驚きで声が出ない。

別れてくれ? 鏡花が? 僕と?

意味が分からない……サプライズプレゼントを渡してやるはずだったのに、何で僕は鏡花に別れを告げられるんだ……?


「本当にごめんなさい……でも、もう私、ケン君に付いて行けない!」


 僕に付いて行けない? 何を言ってるんだ鏡花は!


「意味の分からない事を言うな! なんだよそれ! 僕と別れるとか、ふざけた事を言うな!」


 僕は普段、物静かなタイプだ。

所かまわず騒ぎ回るバカ共とは違う。

だから、大きな声で怒鳴るなんて事は、普通はしない。

そんな僕ですら、思わず大きな声を出す程、おかしな事を鏡花は言った。


「ッ!」


 鏡花との距離を詰めようと前に出たら、ナゴとか言う男が出てきた。

邪魔だよ! どけッ!

そう思って押しのけようとしたのに、ビクともしない。

なんなんだコイツ? クソッ! 邪魔なんだよ!

全然動かない……ゴリラかコイツ?

流石に不毛なので、僕は一歩下がった。


「理由を聞かせてよ、鏡花!」


 理由……そう、理由だ。

なんで僕と別れたいんだ?

それになんだよ、このナゴって男は!

僕の問い掛けに、鏡花が答える。

それは、本当に意味の分からない事だった。


「だって、ケン君は、私の事をちゃんと見てくれなかったじゃない!」


 ……はぁ? 見てくれていない? 僕が鏡花を?

何を言ってるんだ?


「私さ、ずっと頑張って来たんだよ? 学校の勉強やスポーツだけじゃない。色んなファッション雑誌を読んで、可愛くなろうとしたんだよ? 髪を伸ばして、可愛い髪形にして、メイクも学んで、服やアクセだって、可愛いって言われる様に色々調べて、料理だって出来るようになった!」


 それがどうしたんだ?

僕の為にやっていたんだろ?

そんなの、当たり前の事じゃあないか!


「ケン君といっぱいお話が出来る様に、ケン君の好きな事を学んだりもしたよ!」


 だから何?

さっきから、当たり前の事しか言っていない。

まぁ、毎日飽きもせずよく喋っていられるとは、思っていたよ?


「でも、ケン君は私の話をあんまり聞いてくれたかったよね! ケン君から私に話しかけてくれることも全然無かった!」


「……」


 一々反応してられないよ! 面倒臭い。

それに、話はちゃんと聞いていただろ。

態々僕から話す事だって無いし、本当に何を言ってるんだよ、鏡花は!


「毎日、ちゃんと見てくれれば分かる様にお洒落してるのに、ケン君は全然気付いてくれない。ケン君に褒めて欲しいのに、何も言ってくれない!」


 毎日? そんなの分かるかよ……気付けって方が無理だ。

それに、褒めて欲しいだって?

僕は鏡花を綺麗だと、毎日『思っている』んだよ?

それくらい分かれよ! 何年一緒だったと思っているんだ!


「お弁当だって、毎日一生懸命作ってるのに! 美味しいって、いつもありがとうって言ってくれない! ねぇ、私のお弁当は美味しく無かったの? 本当は迷惑だったの?」


 最初は微妙だったさ……いや、ハッキリ言って不味かったのもあった。

僕の嫌いな食べ物とかね!

でも、ちゃんと出来る様になってからは、全部食べてあげているよね?

それで分からないのか?


「だ……だったら! 言ってくれよ! 僕に褒めて欲しいなら、そう言えよ! 何にも言わなかったら、分かる訳ないだろ!」


 本当に何を言っているんだ鏡花は!

僕に褒めて欲しい?

だったら最初からそう言えよ!

言われなかったら、分かる訳ないだろ、普通は!

僕はエスパーじゃないんだぞ!


 そんな当たり前の事を言った僕に対して、鏡花は得体の知れない何かを見るような表情になる。

ナゴという男も同じような表情だった。

何なんだ? コイツ等! 僕を頭のおかしい奴だと思っているのか?

どう考えても、おかしいのは鏡花だろ!


「……座間君、少し良いかな?」


 ナゴが口を挟んできた。


「……」


 さっきからいるコイツは、一体何なんだ?


「僕は香取さんから、君との関係について、何度か相談を受けていた」


「……で?」


「ここ最近、君は色々と理由を付けて、彼女と会わないようにしていたね?」


 それはサプライズの為にバイトをしているからだ。

鏡花の奴、少し会えないくらいでこんな男に相談していたのか?

恥ずかしい真似をして!


「何時もの日常についてもそうだけど、君の態度に、香取さんは随分悩んでいたよ。連絡をしても梨の礫でね。自分のどこかに、至らない所があったのかなって」


 僕は急がしい日々を送ってたんだ、連絡が付かない日があっても仕方が無いだろ!


「朗らかで明るい香取さんは、日に日に憔悴して行ったよ……僕はそんな彼女を見るのが、忍びなかった」


 だからなんだよ、少し会えないくらいでなんて様なんだよ、鏡花は!


「僕や周りの友人達で、彼女を元気付けようとしたさ……本当は寂しいのに、僕達に気遣って、それに応えようとする彼女は、本当に綺麗だった」


「……」


 イライラする。

何を言いたいんだ、この男は?


「……僕は、そんな彼女に惹かれたんだ」


「はぁ?」


 何だコイツは? 間男か何かなのか?


「座間君。君には本当に申し訳ないけど、僕はこの気持ちを抑える事は出来ない。僕は彼女に告白した。彼女もそれを受け入れてくれた」


「!?」


 は……? 何だよそれ! それじゃあ浮気じゃないか!

ぼ、僕を裏切ったのか! 鏡花!


「ああ、勘違いしないで欲しい。僕が告白をする前から、彼女は君と別れる事を決意していた。より正確に言うならば、君と今日お別れをして、ケジメを付けてから、改めて僕と付き合う……そういう話なんだ。これからは、僕が彼女を守る!」


 知らないよ! そんな事!

僕と別れて直ぐに他の男と付き合う? なんだそれ! 僕に対する裏切りだ!


「ふざけるな! 順番がどうとか! 関係ない! お前達のやった事は浮気だ! 裏切りだ! 信じられない、最低だ! 最悪だ! このクズ共がぁッ!!!!」


 信じられないよ、僕が忙しく働いていた間に、鏡花はコイツと会っていて、心変わりしたんだろ!

それで告白する前から僕と別れる気になっていたとか言っても、完全な浮気だ!

裏切り者、裏切り者! 裏切り者!!


「鏡花! お前は最悪の裏切り者だよ! 浮気なんてしやがって! このクズが! 最低最悪のゴミカスが! このっ……」


 ありったけの罵声を浴びせようとする僕の前に、鏡花と同様のゴミカス割り込んで来た。


「そこまでだよ。座間君。悪いのは僕であって、彼女じゃない……さっきも言ったけど、彼女は既に君と別れる覚悟をしていた。そんな彼女の心に付け入るような事をしたのが、僕だ!」


 邪魔なんだよ! 腐れ間男が!

格好良いところ、見せてるつもりか? クズの分際で!


「君が怒るのは無理ないよ。でも、これ以上、彼女を傷付ける様な事は、控えてくれないかな? 恨みや憎しみは全部、僕にぶつけてくれ」


 さっきから、一々癇に障る。

何が僕に……だ! スカしやがって! クソカスのクズ男が!

色々言ってやりたいけど、コイツの言う通りにするのも、ムカツク!

その時、内ポケットに、固い感触があった。

これは……プレゼントだ。

今日の為に用意してやった。

今日の、為に……。


「……僕はね、今日の為に頑張っていたんだ。鏡花に、プレゼントを渡す為にッ!」


 そう言って僕はポケットから、プレゼントを出した。


「僕はこれを鏡花に渡す為に頑張って来たんだ! なのに、そんな僕を裏切って、こんな男なんかと浮気しやがって、このサイテーのクソ女がッ!」


 この日の為に、一生懸命バイトを頑張って来た。

そんな僕を尻目に、コイツ等は浮気なんてしていたんだ。

本当にバカみたいだ、僕はこんな特大のゴミカス共の為に、頑張っていたんだから!


 プレゼントを鏡花に投げ付ける。

クズ男が出て来たんでソイツに当たった。


「くれてやるよ、クズ女! 手切れ金変わりだ! 適当に換金でも何でもしろ!」


 もう、あんなプレゼントなんて僕にとってはゴミだ。

鏡花同様、何の価値も意味も無いゴミ!


 もう沢山だ! こんな所、一秒でも長くいたくない!

僕は走ってその場から離れた。


 あれから僕はずっと走った。

今まで抱いた事のない怒りと憎しみに支配された僕は、それを持て余していた。

近くのゲームセンターに入った。

パンチングマシーンにコインを入れ、思いっきり何度も殴った。

手が痛くなっただけで、ストレス発散なんて出来ない。


 イライラが止まらない。

憎い……臍の下からグニュグニュとした何かがうねっている。

アイツ等……許さない!

ゴミめ! クズめ! カスめ! 裏切り者! 最低の浮気者共! 生きている事が許されない! その臭い口を閉じろ! 二度と息をするな!

あらゆる罵詈雑言が浮かぶけど、それでも全く足りない!

それぐらい、罪深い!


「クソクソクソクソクソクソクソクソッ!!!!」


 家に帰ってからも、怒りが収まらない。

ヤケ食いみたいな真似をしたけど、胃がもたれただけでスッキリしない。

シャワーを浴びても、ゲームをしても、布団に籠って、何をやっても駄目だった。

全部忘れて寝ようとしても、目を閉じるとあの光景が蘇る。

クソ、何処まで僕を苦しめるんだ!


 結局、朝になっても僕の状況は改善されなかった。

ただ、寝不足で体調不良になっただけ。

本当に最悪だ。


 僕は考えた。

この僕の怒りを、憎しみを、悲しみを、どうすれば晴らす事が出来るのか!

……復讐だ。

そうだ! 復讐だ!

あの、最低の裏切り者に復讐だ!

そうだよ! 悪いのはアイツらなんだ! その報いは受けるべきだ! 僕には復讐する権利があるんだ!

ハハハハ! まったく、僕とした事が、なんでこんな当たり前の事を、直ぐに思いつかなかったんだろう……。

それだけ、ショックが大きかったという事か。

やるべき事を理解した僕は、少しだけ、気分が前向きになった。


 さて、復讐をするのは良いけど、問題はどうやってやる……か。

正直、僕一人では手が足りないと思う。

ただ、アイツらが浮気した事実を訴えたとしても、周りのバカ共には響かないだろう。

本当に腹立たしいが、鏡花は学校では人気者だからね。

恐らく、あのナゴとかいうクズカス間男も、そうなんだろう。

確かに二人共、見た目だけは良い。

中身は最低のゲロカスだけど。


 話を戻して、いくら僕が真実を伝えても、あまり効果が無いだろう。

『たかが浮気ぐらいで大げさな』とか言って来そうだ……頭が悪い連中だし。

それに、周りのバカ共は僕等の事に文句を言ってたからね……。

腹立たしいが、普通にあのクズ共に味方しそうだ。

だから、ただ真実を訴えるだけじゃあ弱いんだ……。


「クソ! どうすれば? やる事が分かっても、今のままではあまり効果が期待出来ない!」


 何か……アイツらの悪事を証明する、決定的な証拠が欲しい。

……色々あって煮詰まっている僕には、良いアイディアが浮かばない。

一旦休んで、少し冷静になる時間を作るべきか……。

いや、今のままじゃあ、とてもそんな余裕は無い。


 どうすれば良いか、悩んでいると、ふと友人の事を思い出す。

正直、あまり期待は出来ないけど、今のまま一人で悩んでいるよりはマシだろう。

それに、彼にも教えてやらなければならないだろう。

鏡花の最低最悪な本性を。


 そう思って連絡しようとしたけど、ふと我に返ってしまった。

良く考えれば、分かる事だけど、彼は本当に当てにならない。

これまでもそうだった。

誰でも思い付くような、どうでも良いアドバイスをしたり顔で話したり、そして意味の無い説教が何時ものパターンだ。

今回の件でも、また何かを言って来るかも知れない。

もしかしたら、鏡花も悪いけど、僕にだって問題があったとか、そんな戯言を言って来るかも知れない。

普通に考えたら、あり得ない事なんだけど、彼だとそうしかねない。

復讐の計画に乗ってくれないかもしれないし、仮に乗ってくれても、碌なアイディアは出ないだろうし、下手をすると彼を通して計画が露呈しかねない。

……危ない所だった。

無能な味方なんて、敵よりも質が悪い。

彼は正しくそれだ。

はぁ、今の僕は本当に駄目な状態だ……。

友人なんかに相談しようなんて思う程に、今の僕は物事を、正常に判断する力が低下している。


 悩んでいる内に、お昼になってしまった。

こんな状態でも腹減る。

仕方が無しに家にあるパンや冷蔵庫あったソーセージなどを腹に詰め込んだ。

栄養補給をした所為か、少しだけ、頭がスッキリした様な気がする。

とは言え、状況は変わらないんだけど。


 復讐もそうだが、今の僕はメンタルが相当やられている。

一人で抱えているのには限界があるんだ。

だから、誰かに話を聞いて貰いたい。

でも、家族は駄目だ。

そう言う事はあまり知られたく無い。

それに、母は鏡花の事を随分と気に入っていた。

下手をすると、僕の方が悪者にされるかもしれない……悪いのは鏡花なのに。

友人は論外だし、クソ! 僕は周りの環境に恵まれていないな……本当にツキがない。


 とりあえず、スマホの連絡先を眺めている。

誰か相談出来そうな者はいないかな?

小中学校からの知り合いとは、高校に上がってから一度も連絡をしていない。

いきなり連絡をしたとしても、繋がるかどうか分からないし、彼等は鏡花とも友人だった。

そうなると、既に鏡花が手を回しているかもしれない!

クソ……何処までも僕の邪魔を……。


 今のクラスメイトも当てに出来ない。

何人かは親しい友人らしき者達がいるけど、人気者である鏡花にあやかろうとする、節があった。

だから、駄目だ。

八方塞がりだ。

誰かいないのか?


 半ば絶望的な気持ちになっていた時、その名を見つけた。

『伊達 木乃香』。

……そうだ! キノさんだ。

彼女は他のバカ共とは違うし、鏡花達とも接点はない、完全に中立な立場の子だ。

彼女は僕のバイト事で応援してくれた。

結果はあんな事になったけど、それについても報告しておく必要もある。

僕は、キノさんに連絡を取った。


「!? そんな事が……」


 キノさんは絶句している。

そうだろうね……彼女の為にバイトを頑張っていたのに、その彼女が浮気をしていたんだからね!


「酷い……最低だよ……健斗君は、あんなに頑張っていたのに……」


 やっぱりキノさんは分かってくれた。

彼女は他のバカ共とは違う。

僕の目に狂いは無かった!


「そう、だね……信じられないよ。僕は、彼女の為にやっていたのに、それなのに……」


 浮気なんてしやがって! 最悪の裏切り女!


「ごめんなさい。こんな時に、私、健斗君になんて言ってあげれば良いか、分からないの……」


「別にそれは仕方が無いよ。僕としては話を聞いてくれるだけでも、有難いんだよ」


 出来れば、復讐についても相談したいし、手伝って貰えれば……とも思っているけど。


「……それにしても彼女さん……ううん、元カノの人も酷いけど、先輩だって最低ですね! 彼氏がいる女の子にちょっかいを掛けるなんて!」


 本当にそうだ。

あの、ナゴとかいう腐れ間男がいなかったら、鏡花だって僕と別れる様なバカな事をするハズが無かったんだから!


「そうだね。鏡花も最低だけど、あの、ナゴって言う男も最悪だよ……」


 最低と最悪が出会った結果が、最低最悪の事が起きたんだからね。


「……ナゴ?」


 その名を聞いた時、キノさんは何か引っかかりを覚えたようだ。


「知っているの? キノさん」


 少し気になったので、聞いてみた。


「あの、その……そのナゴって先輩ですが、ナゴキヨヒトって名前じゃありませんか?」


「……!? た、確か、そんな感じの名前だったような気がする……」


 そう答えた時、キノさんは目を見開いた。


「『名護 清人』! やっぱり、そう! あの人が!」


 突然激高するキノさん。

その様子には流石に僕も驚いた。


「キノさん!? 落ち着いて! 一体どうしたの?」


「……あ! ごめんなさい。いきなり大声を出しちゃって……」


 ここはファミレスで、ピーク時間を過ぎているけど、まだそこそこ人がいる。

まぁまぁ五月蠅いので、キノさんの声は、周りには聞こえていなかったようだ。


「いや、良いよ。ところでキノさん。キノさんは、ナゴって男を知っているの?」


 僕の問いに、キノさんは少し迷ったような素振りを見せる。

まさか……あのナゴって男はキノさんの……?


「はい。そうですね。知っています」


 目の前が真っ暗になりそうだった。

まさかキノさんが、あのクズカス間男と知り合いだったなんて。


「ただ、私は直接の面識は無いんです」


 一瞬、暗澹たる気持ちになったけど、キノさんの言葉で、それは払拭された。


「面識がない?」


 会ったことは無いけど知っているって事か。

結構有名人なのか?


「はい。『名護 清人』は、その……私のお姉ちゃんの元カレなんです」


 姉の元カレ!?

そういう繋がりがあったんだ!

僕はキノさんに話を聞いてみた。


 ナゴとキノさんの姉は同中だったそうだ。

キノさんは一個下で、キノさんのお姉さんは、結構人気者で、クラスで一番の陽キャグループだったらしい。

そして、当時のナゴはあまり目立った存在では無かった。


 中学卒業後、キノさんのお姉さんは、別の高校に進学した。

そして、中学ではあまり目立っていなかったナゴは、高校一年から頭角を現し、サッカー部のレギュラーにもなっていたそうだ。

僕的にはどうでも良い話だ。


 まぁ、大体予想は出来たけど、有名になったナゴは、同中だったキノさんのお姉さんと付き合うようになった。

でも、その内飽きたのか、ナゴはキノさんのお姉さんをこっ酷く振ったそうだ。

大分酷かったらしく、そのショックで、陽キャ……というか、ギャル系だったお姉さんは、スッカリ地味な格好になってしまったそうだ。

……流石は最悪の寝取りクソ間男だ。

そりゃあ、彼氏のいる鏡花に手を出すな。

それに乗った鏡花も最低の浮気女だけど!


 話を聞く限り、何れは鏡花も捨てられるだろう。

それはざまぁない話だけど、ナゴだけが良い思いをするだけなので、それは許せない!


「……なるほどね。最低な話だ。悪かったね、嫌な話をさせちゃって」


「いえ、良いんです……」


 キノさんは優しいね。

あのクソ女は、キノさんの爪の垢でも飲んでろよ。


「話を聞く限り、ナゴは最低の男だし、鏡花も最悪の裏切り者だ」


「はい。私もそう思います」


「そんな奴等が、これから学校で大手を振って歩くなんて、酷い話じゃない? 理不尽じゃない?」


「はい。人を平気で傷付けるような人達が、自分だけ幸せになってるなんて、あり得ないです!」


「そうだね! 許されなよね!」


「はい!」


 キノさんの瞳に、闘志が宿ったのが分かる。

浮気した鏡花、寝取ったナゴ。

僕的には鏡花は許し難い大罪人だ。

キノさんにとっては、ナゴはお姉さんを傷付けた大罪人。

罪深きクズ共が、そのまま人生を謳歌しているなて許されてはいけない!

僕とキノさんで、然るべき罰を与えないといけないんだ!


 こうして僕とキノさんは、お互いの利害の一致もあって、協力する事になった。

万の味方を得た気分だ……恐らく、キノさんもそう思っているだろう。

僕達は早速、どうやってヤツらに罰を与えるか、相談し合った。


 やはりと言うか、ただ浮気したって事実だけだじゃあ弱い。

批判は少しあるだろうけど、ほとぼりが過ぎてしまえば、皆すぐに忘れるだろう。

それじゃあ、僕の気が治まらない。

何か、決定的かつ強力で、ヤツらこそが絶対悪である……それが証明出来るような、何かが欲しい。

ピーク時間が過ぎていても、長期休暇期間である所為か、大学生カップルっぽいのがチラホラいた。

難しい問題に悩んでいる僕達を尻目に、楽しそうだ。

イラ付く。

どうせ、この後は遊び回って、最後にはご休憩だろう。

本当、良い身分だね。


「……あ!」


 閃いた!


「どうしましたか? 健斗君」


 キノさんが聞いて来る。


「うん、少し閃いてね。あのさ、あの二人って浮気をする最低なヤツらだよね?」


「はい」


「特にナゴって男は、過去に女性に酷い事をした最悪の男だ」


「……はい、それは間違いないです!」


「鏡花はそんな男に、アッサリ靡いた浮気女なんだ、その二人が、何時までも健全な恋人関係を続けられると思う?」


「!? 確かに、それはあり得ないですね!」


 キノさんも察しが付いたようだ。

イイね。

ちゃんと分かってくれる。

友人じゃあ、『そんな事無いだろう』なーんて、ボケた事を言っているだろうね。


「ヤツらは残りの休み中に、絶対に超えると思う。新学期が始まったら、部活とかも忙しくなるし。ナゴはサッカー部だっけ?」


「はい。今年はもしかしたら、全国に行けるかもって言われています」


「ふん、全国ね……じゃあ、かなり忙しくなるね。今の時期を逃したら、後は3年が引退するまでは、お預けって訳だ!」


「その前に……ですね?」


「うん、最悪、後数ヵ月は覚悟するかもしれないけど、あのクズ共がそんな我慢を出来るとは思えないんだ」


「私も、そう思います」


「よし、じゃあ、明日から早速行動に移ろう!」


「はい!」


 そう言って僕達は、計画を話し合う事にした。

内容はこうだ。

あの二人は間違いなく、不純異性交遊をするだろう。

頭も股も緩そうな二人だからだ。

僕達はそれをしっかりと抑える。

そして、学校中に教えてやる。

それだけだ。

シンプルだけど、効果は絶対にある!


 こうして僕達は、残り少ない休暇期間を費やす事になった。

と言っても、面が割れている僕が二人を監視する事は出来ない。

その役目はキノさんが引き受けてくれた。

本当にありがたい。


「お姉ちゃんの、仇討ちにもなるし、健斗君を傷付けた事は許されないです!」


 そう、言ってくれた。

フフフ、本当に良い子だね、キノさんは……。

あの時、鏡花なんて放っておいて、キノさんと……いや、今更だな。

先ずは、しっかりと復讐しないと!

その後の事は、終わってから考えよう。


 それから数日、キノさんは鏡花を見張っていた。

一応、幼馴染だからね。

鏡花の家は知っている。

案の定鏡花は、毎日出掛けている。

ただ、ナゴだけでなく、どうやらクラスメイトとも一緒らしい。

チッ……さっさと尻尾を出せよ。


 クラスメイトと一通り遊んだ後、ナゴと一緒に居るが、そこら辺をフラフラしているだけで、最後に近くまで送って一日が終わる。

クソ……クズ同士、さっさと交尾でもしてろよ!

無駄に時間を掛けさせやがって!

そんな日が続いて、流石に僕もキノさんもウンザリしていた。

毎日尾行しているキノさんも大変だろうけど、僕の方も大変だ。

ずっと、まだかまだかと思っているんだからね。

気になって集中出来ないよ。

こんな事なら、キノさんと一緒に出掛けた方が、精神的にも安静なのに……。

まったく、手間取らせる。


 でも、漸くチャンスが転がり落ちて来た。

それまでも何度か二人っきりだったヤツら。

特に何も無く普通にデートをしていたんだけど、その日は違っていた。

キノさんによると、何時もよりも気合が入った格好らしい。

しかも、何時もはこの辺の繁華街とか映画館、ショッピングセンターなど、地元でのデートだったのに、今日は電車で市外に出ていた。

最近出来たテーマパークに来たらしい。

少し、ガッカリしたけど、天は僕達を見捨てなかった。

遅くまで遊んだ二人は、やがて怪し気なホテル街へと向かって行った。

何時もとは違う、少し遠い場所。

普段よりも気合の入った格好から見てもも、やっと動き出したようだ。

正直、複雑な気分ではある。

鏡花が、あの男と……そう考えると、腹の中からドス黒いナニかが溢れそうになる。

でも、復讐の為だ!

僕はそれを必死に抑えた。


 キノさんから、逐一報告と写真が送られる。

ホテル街を歩いている写真だ。

この写真だけでも疑いは持てそうだけど、やはり少し弱い。

決定的な場面が欲しい。

そう思っていると、二人がホテルに入った、決定的な写真が送られて来た。

横顔だけど、誰だかは分かる位には鮮明に映っている。

やった! やったぞ! ついにやりやがった! やっぱりヤツらはクズだ! 汚物だ! 本当にどうしようもないゴミ共だ!


 胸を過ぎる複雑な心境を、ヤツらの悪事を証明する証拠を手に入れた喜びで塗り潰す。

後は、この写真をプリントアウトして、大量に準備をしないと……。

そう思っていたら、キノさんから連絡があった。

もう少し粘って、もっと分かり易い写真を取りたいと言うのだ。

これまでも十分に役に立ってたけど、仕事熱心だな、彼女は。


 それから数時間後、二人がホテルから出て来る、これまで以上に強力な証拠写真が、キノさんから送られて来た。


 証拠を準備出来た僕達は、早速写真を掲載したプリントを作る。

今はデータさえあれば、写真屋を利用しなくても簡単に自分で作れる。

モノがモノだけに、他人にはなるべく見せたく無いしね。

折角写真が複数枚あるのだから、プリントも何パターンか作った。

あとは、これを学校中に広めるタイミングだけど……。

入学式は不味いかな。

バラ撒くタイミングが難しいかもしれない。

やはり、何時もの日常……誰もが弛緩している何気ない日に、やるべきだろう。


 証拠写真をどうやってバラ撒くかも考えないといけない。

高校はセキュリティは結構ザルだけど、夜中に見回りがある。

忍び込んで張り出すのはかなり難しい。


「最初から学校内の何処かに隠れて、夜の見回りが終わったタイミングに、掲示板などに張り出すとか、どうですか?」


「なるほど、忍び込むんじゃあ無くて、最初からいれば良いのか! 良い考えだね」


「えへへ、それほどでも……」


 いや、友人なんかじゃあ、絶対に思いつかない、大胆な考えだね。

ただ、問題がるとすれば……。


「僕は少し、難しいかもしれない。どうにも親の目を誤魔化すのがね……」


 鏡花との一件は、既に親にも知らされていた。

散々、色々言われたよ。

鏡花に振られたのは、お前が悪いってね。

バイトばっかで碌に会おうとしなかったから、そうなったんだってさ!

ふざけた話だよ! どう考えたって、浮気した鏡花が悪いのに! なんだってアッチに肩を持つんだか……我が親ながら理解出来ないね。

迷惑な事に、それから僕のやる事に口を出すようになって来た。

友達の家に泊まりに行くと言っても、恐らく簡単には信じてくれないだろう。


「それは……大丈夫です! 私が何とかします!」


「本当に? それは助かるよ」


「任せて下さい!」


 本当に凄く頼りになるね、キノさんは。

こうして僕達は、着々と計画を進めていった。


 新学期が始まってからは、案の定周りから色々と言われた。

僕が鏡花にフラれただの、間男と鏡花が付き合いだしたのだと、色々と騒がしかった。

何人かは僕に同情的な風だったけど、鬱陶しい。

僕を憐れむなよ。

君達がやるべき事は、鏡花の不貞の糾弾だろ?

なのに、誰もそんな事を言わない。

悪いのは100%、鏡花の方なのに!

ここ数日は、本当に嫌な気分にさせられる。

キノさんがいなければ、やってられないよ!


 放課後、僕達は人目を忍ぶように、図書室で会っていた。

計画の実行の為の打ち合わせの為だ。

それ以外にも、僕的には癒しになるから会っているんだけどね。

スマホでの連絡だけじゃあ、味気無いし。


「本当に、周りは酷い人ばかりですね……」


 キノさんは呆れた様に呟く。


「本当にそうだね……全く、無責任な外野は、好き勝手言ってくれるよ……」


 僕も、嘆息した。


「それで……準備の方はどうかな?」


「バッチリです! 」


「よし! それじゃあお願いするね。キノさんだけが頼りだよ……」


「! はい! 頑張ります」


 そして、遂に運命の日がやって来る。

因みに、この時に僕は、美容室で髪を切って貰う事にした。

どうせだったら、格好良く断罪したいし、キノさんが髪を整えたら、元が良いから凄く格好良くなるって言ってくれた事も後押しした。

実際、ちゃんと髪型を整えみると、中々に僕はイケていた。

折角なので、買ったは良いのだけど、一回付けてからは面倒になって付けなくなったコンタクトをしてみた。


 これは……自分で言うのもなんだけど、かなり良いんじゃあ無いか?

何だか生まれ変わった気分だ。

そうだ、僕はこれまでの忌まわしい過去と決別するんだ。

これくらいはやらないとね!


 その日、僕は何時もよりかなり早起きをして、直ぐに高校へと向かった。

鏡花に昨日の夜、改めて話をしたいと連絡した。

あの時は、混乱していて自分でも良く分からくなっていたから、改めてもう一度、二人に会って話がしたいと送った。

少し経って、返信が来た。

僕は時間と場所を伝えた。


 そして、今僕は校舎裏に来ている。

この時間は普通の学生はまだ来ていない時間だ。

いるのは、朝練をしている部員くらいだろう。


 サッカー部も、朝練をしている様だけど、あの間男は鏡花と来るそうだ。

よし、いよいよだ……僕は気合を入れた。


 キノさんが前の夜から張り出した証拠写真がそろそろ見つかるだろう。

また、朝の時間帯に、束になっているプリントをバラ撒くそうだ。

僕は、予め用意したクシャクシャな写真を手に持った。


 鏡花達が僕の元にやって来た。

手にはあのプリントらしき物があった。

どうやら良いタイミングだったようだ。


 息を切らして僕の元にやって来た二人に、僕は開口一番、大声を出した。


「これはどう言う事だよ! 鏡花! これは何なんだ!?」


 そう言って、僕はプリントを前に突き出す。

それは、二人がホテルから出て来た写真だ。

タダのホテルじゃあない。

ラブホテルだ。


「話し合う為に来て貰ったけどさ! これはなんだ? どういう事だ!?」


 如何にも今、知りましたという風に声を上げる。


「はっ! 何だよこの写真はよっ! 浮気して直ぐにベッドインか? この尻軽のクソビッチが!」


 そして、僕は鏡花の浮気と、そのクソビッチぶりを非難した。

付き合っていた彼氏がいるのに、浮気して、しかも直ぐに浮気相手と寝るなんてやらかす、その腐った性根を糾弾した。

そうだ、コイツらは性根が腐ってる!

どうせ、僕がバイトに勤しんでいる間に、やる事やっているんだろ? そうに決まっている!


「ふん! 僕という彼氏がいながら、浮気していこんな事までやってるんだから、ホント、最低だよ!」


 既に多くの野次馬達が集っている。

バラ撒かれたプリントや、僕の糾弾が効いているのだろう。

鏡花達の顔は真っ青になっていた。

ハハハ! 良い様だ!


 そう思っていると、ナゴが鏡花の前に出て来た。

チッ、邪魔だな……。

悪事を白日の下に晒された、鏡花の絶望する顔を、もっと見たかったんだけど……。


「あ~、何? ナイト気取り? こんな事やっといて、随分とカッコイイですね、先輩?」


 皮肉を込めて、言ってやる。

似非ナイト気取りが!


「……な、なんで、こんな事を……」


 絞り出すようにして声を出すクズ野郎のナゴ。

手に握ったプリントを前に突き出していた。

『僕が』バラ撒いたとでも、言わんばかりだ。


「はぁ~? 知りませんよ。僕はもう一度ちゃんと話をしようと思っていただけですよ? なのに、こんな写真が出回ってるんだから、僕こそアンタらはナニしてんだって話ですよ?」


 僕はあの夜の件を、もう一度話し合おうとしただけ、それなのに、こんな写真を見つけっちゃったら、そりゃあ激怒するよね?

そういう、シナリオだ。


「てかさー、信じらんないよ。僕がプレゼントの為にバイトをしていた時にさ、二人は浮気してさ、こんな事までしているなんて!」


 頑張っていた僕を他所に、浮気をする最低なクズ共め!


「待ってくれ、それは……」


「良い訳すんなよ! ヤリチンのサイテー男が! お前等が浮気してたのは本当の事だろう! 付き合ってる男がいるのに手を出してさ! 鏡花! お前もそうだ! ちょっと会えないからって、簡単に股開きやがって! 腐れビッチがッ!」


 見苦しい言い訳をしようとしたナゴの言葉をシャットアウトする。

お前に反論する権利はない。

その臭い口を閉じて、黙って僕の話を聞いてろ!

鏡花! お前もだ!


「ッ……」


 僕の言葉に鏡花は辛そうな顔をするが、何だいそれは?

加害者の癖に、まるで被害者の様な面だな!


「は? 何被害者みたいな面してるの? 浮気された僕の方が被害者なんですけど? ……薄汚い淫売の浮気女が! お前みたいな奴が、ワザとらしく可哀相なフリなんかするなよ! ホント、クズだな!」


 全く以て不快だね。

お前は自分が何をしたのか理解していないのか?

殊勝な態度をしていれば、まだ寛大な心で接してやれたかもしれないんだぞ?

なのに、自分は可哀相な被害者ですってか? 頭おかしいんじゃないの?


 ホント、さっきから笑えて来るね!

自分の立場をまるで理解していない、バカ共の滑稽な姿には!

まぁ、良いさ。

今の僕は非常に気分が良い。

お前達悪を、正義の名の下に断罪しているからな!


「お前の様なクズの最低女に、これまで付き纏われていたのは、本ッ当に不快だった! 僕の時間を返して欲しいよ! 毎回ゴミみたいな物を食わせやがって! アンタもだ! 何が優しい先輩だよ! タダのサルじゃないか!」


 今での思い出なんて、唾棄すべき代物だ!

今まで付き纏って来た癖に、アッサリと他の男に身体を許すとかさ!

汚らわしくて、仕方が無いよ!

そんなゴミ女が作った物を食わされて来た事も、耐え難い苦痛だ!

優しい先輩? 過去に女を弄んだクソザルじゃないか!


 それから僕は、これまで溜まっていた鬱憤を、話してやった。

気持ちイイね! これまで、僕が我慢してやった事を、盛大にブチ撒けてやったよ!

頭の先からつま先まで、痺れる様な快感があった。


 しかし、そんな時間ももう終わる。

騒ぎを聞きつけた先生方がやって来た。

友人の顔も見た気がしたけど、別に良いや。

流石にもう、終わりだ。

僕は踵を返すと、そこにはキノさんがいた。

あ、キノさんのお姉さんの事でも、ナゴのカス野郎を糾弾すれば良かったかな……まぁ、良いか。


 こうして僕達は、最低のクズ共を制裁してやったのだった。

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どうせ誰かと遊ぶからと決めつけてたが、過去にそれがあったからなのか?なかったらもう好きではなかったのだろう? デートつまらないと普通なら思わず、心は離れてしまったのだろうしやり捨てるつもりだったのかな…
2025/07/21 10:19 阪神最下位
主人公って浮気女の事、好きじゃなさそう。 キノちゃんとは普通に話すのに浮気女の時は、自分から話さずよくしゃべるなーと思い込むなんて普通なら、恋人が話してたらそんな事思わず、一緒に楽しそうに話すか自分か…
2025/07/19 06:56 阪神最下位
間男先輩を別れ話に同席させたのは、浮気女の完全なエラー。先輩も自己紹介や好きになった発言はダメでしょ。そりゃ浮気かとザマ君でなくても思うわな。このシーンがあるから主人公の復讐が逆恨みとは思えないし、別…
2024/10/20 20:36 阪神最下位
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