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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第三章》-王立学園編-
96/100

96.暁光祭、そして第五種目 1

「いよいよ暁光祭も佳境を迎えます! 第五種目、知恵と勘を活かせ! 『センスラビリンス』です!」

 会場に集まった選抜生徒達を前に、リオンが次の競技の説明を始める。

 それに合わせるように、観客席からシャノンが杖を振ると、会場は大きく震動し始めた。


 これでもう何度目か。皆、流石にもう慣れたようで、またか、と生徒達がざわついていると、会場の中央には巨大な葉の壁で出来たダンジョンのようなものが生成される。

 どうやらこのダンジョンは迷路になっているようで、複雑に道が入り組んでいるようだった。


「こちらの迷宮が本種目の舞台! 『センスラビリンス』。その名の通り、内部が入り組んだ迷宮となっていて、中には行く手を阻むトラップやモンスターが待ち構えています。それらを持ち前のセンスで乗り越えてください!」

 リオンは声高らかに種目の内容を話し続ける。

 迷宮に蔓延るモンスターは選抜試験の処刑人のように、非常に凶悪な敵となっており、シャノンお手製だという。


 種目の内容はシンプルなもの。ゴール地点を目指し、順位を競う。順位が高ければ高いほど得る得点も増える。選抜試験と同じようなものだ。


「しかし第五種目ともなればそれだけでは終わりません! 迷宮内では、倒した生徒の学年に応じた得点が入ります!」

 入る得点は3年が30点、2年が20点、1年が10点と高学年になるにつれて点数が高くなっている。

 順位で入る得点は1位が30点から10位で5点。それより下の順位になると入る得点は1点となってしまう。


「得点を稼ぐには、いかに他寮の高学年を多く倒し、自分も高順位でゴールできるかが重要となってきます!」

「説明もそこそこに、そろそろ始めましょうか」

「ですね! 制限時間は1時間、第五種目『センスラビリンス』開始!」

 リオン、キルベルトの掛け声と共に、シャノンが杖を振る。

 すると、説明を聴いていた出場生徒達の姿はその場から一瞬のうちに消える。


 ――次の瞬間、ルナが目を開けるとそこはすでに迷宮の中だった。転移したのだ。


「……選抜試験の時もこんな感じじゃなかったっけ。まあいっか」

 ぬるりと始まった第五種目に、どことなく強い既視感を感じつつも、何はともあれ競技は開始した。気持ちを切り替えたルナは動き出す。



「さぁということで始まりました第五種目! 種目の数は残すところ僅かですが、上位の寮は油断せずにこのまま、下位の寮は逆転目指して頑張ってもらいましょう!」

「各生徒達はそれぞれ全くランダムの場所へと転送されています。どの生徒もゴールからの距離は一定で、有利な寮は一切存在していません。罠やモンスターなどの壁を乗り越える本人の力が試されます」

 リオンとキルベルトは試合が始まると意気揚々と実況を始める。

 空中には魔道具によって巨大な映像が映されており、観客席は揃ってその中に映る自分の寮の選抜生徒達を応援していた。


_


「ゴールに辿り着けばいいんだよね……内容自体は選抜試験と似てるよね……」

 ルナは特に指標もなく、ふらふらとゴールを目指して迷宮を進んでいた。

 一見一本道に見える道だが、同じ景色に見えても、よく見ると色々な方向に向かって道が伸びている。きっと上空から見下ろした時、まるで蟻の巣のようになっているだろうということが何となく予想できた。

 すると早速迷宮内に動きがあった。近くか遠くか、はっきりとは分からないが戦闘音が聞こえ始めたのだ。


「音……戦いの……方向は、東側? でも距離がよくわかんないな……」

 ルナの背丈よりもずっとずっと高くそびえ立つ壁のせいか、耳の良いルナであっても正確な距離、方向は分からなかった。



「探索阻害の魔法も掛けてるからね~、んふふ♪ そう簡単にゴールには行かせないぞっ」

「本当に何でもアリだな、お前の魔法」

 各自、生徒達がゴールを模索するために手探りし始めた頃。観客席ではシャノンがアルバートの隣で自信満々に呟いていた。



「この壁は壊せるのかな? ふんっ!!」

 ふと思い立ったルナは、力の限り拳を葉の壁に向けて振るってみる。

 しかし、ドゴォッ! と鈍い音が響いただけで葉は一枚たりとも散ることなく、ビクともしなかった。


「か、硬い……」

 ヒリヒリとする感触に顔をしかめながら手を擦る。

 全力、というわけでもなかったが、そこそこの力で殴った。そこらの建造物の壁くらいの硬さなら多少なりとも変化はあるはずだ。

 しかしこの迷宮の壁は全くもって変化はなかった。やはり抜け穴を探すのは容易でないらしい。


「上はどうだろう? ぱっかり空いてるし」

 ルナは空を見上げる。この迷宮には蓋や天井などがない。上からなら脱走を図れるのではないかと考えたのだ。

 壁をよじ登るのもいいが、もっと手っ取り早い方法がある。ルナは足に力を入れ、思い切り屈んでみせる。そして――。


「飛べぇ!」

 次の瞬間、その小さな体躯は上空目掛けて大きく跳んだ。


「あだッ!?」

 と、同時に、ルナの頭は見えないなにかにものすごい音をたててぶつかった。

 そしてベチャッと床に落ちた。まるでハエたたきをくらった羽虫のように。


「ひぃぃぃっ……! 痛い痛い頭ぶつけた……! 見えない天井があるなんてきいてないよぉ」

 頭を擦りながら、これを作ったであろうシャノンに小さく恨み言を呟くルナ。

 とはいえ、これで検証は済んだ。ズルをしてゴールする抜け穴はない、ということだ。



「アイギスでも一筋縄じゃいかないみたいだな」

「ええ。対策はバッチリですよ~、例えアイギスちゃんだとしても、ね♪」

 シャノンほどの魔術士の魔法でしっかりと対策されているのならば、流石のルナといえど、抜け穴を作ることは難しいだろう。



「きっと迷路のゴールを探すだけなら、選抜試験の時ほど難しくないはず!」

 選抜試験はとてつもなく広大なフィールドで、たったひとつしかないゴールのゲートを見つけるというものだった。それも無数の処刑人の目を掻い潜りながらという環境下でだ。

 あのときはイオがいたからこそ見つけられた。もう一つのゴールの存在があったおかげで結果として試験は通ったものの、ルナはゴールには辿り着けなかった。

 それくらい、あの試験の内容は難しいものだった。だが今回の種目は内容自体は似ているが、競う相手がいる。処刑人のような障害物だけでなく、対戦相手がいるのだ。

 その相手は才能豊かな貴族達。それらとゴールを奪い合うような種目で、試験の時ほど見つけにくいのでは、種目がそもそも成り立たないであろう。


「ま、根拠はないけどね」

 要は勘である。いつものやつだ。


 そうして暫く進んでいると、代わり映えのしない景色にようやく変化が訪れる。


「あ」

「あーん?」

 ようやく出会ったのは古竜寮の制服を着た生徒だった。見たところ、2年か3年生だろう。


「確か上級生を倒すと点数高いんだっけ。じゃあ得点みっけ!」

「上等だ1年坊。精霊寮の分際で……得点になるのはどちらか、思い知らせてやるよ!!」

 指を差し、相手からは挑発としかとれないような発言をしたルナに、古竜寮の生徒は顔を引き攣らせながら近づいてくる。

 そして――。



「おーっと! ここでついに得点に動きが出た! 精霊寮の1年生と古竜寮の2年生がエンカウント! しかし決着は目を見張る瞬間すらなく一瞬の出来事!!」

 結果は、ルナの圧勝だった。観客席も、あまりにも一瞬の決着に呆気にとられているものがほとんどだった。



「よしっ! これでえーと……20点かな? 次いかなきゃ!」

 2年生の攻撃をするりと避け、一撃で地面に伸してしまったルナは気にした様子もなく、流れるように次の獲物を探しに迷路を進んでいく。

 今ルナが遭遇したように、他の場所でも戦闘が起こり始めていた。


_


「その制服、聖獣か。俺は魔狼の3年、ビックス・フォン・アルベロイド。見たところ1年だな? 俺を倒せば30点入るが、本当にやるつもりか?」

「……聖獣寮1年。クロエ・ミールです。聖獣寮が勝つために、先輩。貴方の胸をお借りします」

「面白い――」

 ふと笑い、臨戦態勢に入るビックス、そして刀を構えるクロエ。ルナの知る顔も、本種目には参加しているようだった。


 また、別の場所にはすでに武器を交えるシトラスとカトレアの姿もあった。


「正直、驚きましたわ。ほとんど魔力のないあなたが暁光祭のメンバーとして選抜されているだなんて」

「ふふっ☆ こう見えても武術には長けてるんですよっ!」

 カトレアの繰り出す連撃は、あいも変わらず目にも止まらぬ剣速だったが、それをシトラスは剣先を拳で弾き、軌道を逸らすことで直撃を避けていた。


 魔狼寮と聖獣寮の二人がぶつかり合っているように、他の場所でも寮同士の戦いは始まり、会場も盛り上がりをみせていた。

 古竜の3年と魔狼の3年の戦いや、魔狼の3年と聖獣の2年の戦い。特に貴族同士の戦いは注目を浴びているようだった。


「私も参加したかった……」

 そんな中、観客席で退屈そうに呟くのはマナだった。

 ルナにカトレア、クロエにシトラスと、知り合いは軒並み出場しているのにも関わらず、マナの出番はさらにこの次の種目だと告げられたのだ。

 尤も、平民と銘打って在学している身なのに、プライドが高く貴族絶対の精神である古竜寮で選抜生になれていること自体が、非常に驚くべきことなのだが。


 そんなことはマナにとってどうでもよく、友人がほとんど参加している中で自分だけが輪に入れないというのは何となく疎外感を感じて淋しくなる。つまり――。


「私も戦いたかったな……」

 ……結局はそういうことである。


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