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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第三章》-王立学園編-
95/100

95.暁光祭、そして第四種目 4

「わわわわわわわぁぁぁーーーッ!!?」

「おおおおおおぉぉお!?」

「ぬおおおおおおおぉぉぉっ!!」

 ゴールテープを切った3人は、揃って雄叫びを上げる。


「「「止まらないいいいいぃぃぃぃ!!!!」」」


 白熱した第四種目の最後は3人の叫び声と共に、ドタバタガッシャンと途轍もない音を響かせて決着を迎えた――。


_

_

_


「えー、非常に白熱した第四種目ですが、判定の結果が出ました」

「ほぼ同着に見えた試合でしたが緻密に精査したところ、1位は――」

 会場に、選抜生徒達にも緊張が走る。そして……。


「魔狼寮!! おめでとうございます!! また、2位は精霊寮! 3位は古竜寮となりました!」


ワァァァァァァァ………!!!


「第四種目を終え、現在の得点は古竜寮168点、魔狼寮182点、聖獣寮86点、精霊寮82点となりました!」

「本種目の影響でついに順位に変動が起きましたね。魔狼寮が1位へ、精霊寮は離されていた点差を一気に詰めた形になります」

「古竜寮と魔狼寮の点差はまだ僅か。残りの種目でどうなるか、見ものです!」

 盛り上がる会場。その中には、落胆や怒り、喜びなど様々な感情が飛び交っていた。


「惜しくも力及ばず、かぁ……。でも、やれることはやったし、不満はないかな。精霊寮の皆には悪いけど……」

 リオンとアルベルトの結果発表を聞き、イズは悔しながらもやりきった顔で皆の元へ戻っていく。


「リリックめ、一度ならず二度までも負けるつもりはなかったぞ……それにあの精霊寮にまで負けるとは……皆の視線が痛いな」


「今年は去年よりも苦戦したな。特にあの精霊寮の1年……平民にしては中々どうして、驚くべき底力だった。だが、まぐれもそう続かないだろう。注意すべくは古竜寮なのは変わらず、だな」

 ヒュースやリリックは、イズの活躍には一定の評価をしつつも、意識するのはお互いの寮ということは変わらないようだった。


_


「た、ただいま~……私でもやれるとか言った手前、ギリギリ1位取れずに終わっちゃって本当にご――」

「イズ~!! 凄かったよ! 訓練の成果がちゃんと出てたね! 私も鼻が高いや!」

「イズさん、あの古竜を相手に勝つなんて素晴らしいです! これで精霊寮も目標に向かって大きく前進したことになりますね!」

「大したものだ。尊敬するよ。私じゃできないからね、足の速さで勝つことは。それも、手練れの魔法を回避しながらなんて、なおさらだ」

「お、おぉ……? なんか褒められてる……」

 イズが観客席に戻るなり、ルナから勢いよく抱きつかれ、皆から褒められて困惑する。周りの生徒達も近くにいた生徒から次々とイズに声をかけてくれた。

 それもそのはず。精霊寮はここまで4位、4位、3位と、思いの外手強い他寮に翻弄されていたが、4種目にして初の上位入りを果たしたのだ。

 結果として精霊寮は未だ4位のままだが、大きくついていた差はかなり縮まり、3位の聖獣寮にも手が届くといったところまで来ていた。イズが思っているよりも、この結果は大きいのだ。


「そっか。やれるだけのことは出来たってことか……良かったぁ~!」

 イズは皆の言葉と反応を見て、背中にかかっていた重荷が消え失せたような感覚を感じ、一気に緊張が晴れる。その顔は重苦しい責任から開放された疲労感と反して、達成感で眩しい笑顔をみせていた。



「よう、お前ら」

 ルナ達が話していると、後ろからアルバートがいつものふてぶてしい顔で現れる。種目も後半に入ったため、少し長めの休憩となったからだろう。


「先生! 初めての2位だよ!」

「ああ」

「しかも古竜寮よりも上! イズが頑張ったんだよ!」

「ああ」

「クリスくんも凄かったし、先輩達も頑張った結果だよね!」

「アイギス。わかったから、一旦落ち着け」

 古竜に対して初勝ち星を上げたことで大興奮のルナはグイグイと詰め寄るが、そんなことは分かりきっているアルバートは呆れたように落ち着くよう宥める。


「先生は何故ここへ? 休憩でしょうか?」

 その様子を見ていたテティスが、ふと気になって声をかける。


「それもあるが、次の種目について話をしようと思ってな」

「なるほど。次はいよいよ5種目……暁光祭ももう後半ですし、そろそろ点数が大きく動くような種目が来たりするのでしょうか」

「そもそも謎だがね。残りが何種目なのか。それくらい良いんじゃないか、教えてくれても」

「確かに~私も気になるなぁ」

 ニーシャ達の質問に、アルバートは少し考えたが、一息ついてから諦めたように話し始めた。


「あー……。ま、数くらいなら良いだろ。種目は全部で7つだ。つまりあと3つしか無え。残りの種目はテティスが言ったように得点が高くなってる。つっても、今までの種目と違って、順位を上げれば得点が大量に……とか、そう簡単なもんじゃねェがな」

「得点を取る手段は順位だけじゃない、と?」

「内容までは言えねェな。だが、俺が知ってるのは次の種目と6種目の内容だけだ。第7種目の中身は教師にも教えられてねえ。どうなんのかは俺にも分からねェ」

「教師すら知らない第7種目か……うーん、残りの種目はどれも気になるなぁ」

 得点は多くなるといっても、相手も条件は同じ。そのうえで残り3つの種目で古竜と魔狼の得点に追いつかなければならない。

 恐らくここから先、連勝して2位以上を取り続けることが出来なければ順位を捲ることは難しいであろう。


「次の種目は1年から2人出ることになってる。精霊寮はアイギスとアナスタシア。お前らだ」

「私か。引っ張ることにならなければいいが。ルナの足をね」

「お互い頑張ろうね!」

 ルナが指名されるのは先刻の会話から分かっていたことだが、相棒として選ばれたのはニーシャだった。

 やる気充分だったテティスは出番が遠のき、少し残念そうにしていたが、渋々受け入れていた。


「ようやく出番だからって張り切りすぎるなよ、アイギス。視野を広く持て」

「え? はい……」

 ルナにアドバイスをするとアルバートは戻っていく。

 ルナには言葉の意味がよくわからなかったが、次の種目の後も出番があるから気張りすぎるな的なことかな、と自分の中で解答に何となく当たりをつけた。


 そして時間は過ぎて休憩が終わり、ニーシャと共にフィールドへ向かっている途中。



「次はどんな内容だろうね?」

「つかないね、予想は。キリがないよ、考え出すと。だが何が来ても高順位をとらなければいけない。勝つならね。古竜寮に」

 ニーシャの言う通り、考えてもキリが無い。どのみち会場に出れば答えはわかる。自分達はそこで勝つだけだ。


「それに、これは精霊寮みんなの願いだ。先輩達や、テティス、医務室にいるイオもね」

「……イオくん」

 ルナの脳裏には包帯に巻かれた痛々しい姿で眠る少年がよぎり、思い出してしまったルナはぎゅっと小さく拳を握る。

 そんなルナを横目に、ニーシャは続ける。


「それと、恐らく先生もそうだろう。皆勝ちたいと願っている。どうだい? いっそのこと、古竜だけと言わず、全ての寮に勝ってしまうというのは?」

「全部の寮に?」

「きっと次の種目は得点が跳ね上がるんだ。先生の言っていたように。現状の得点差を詰めるには、それくらいの目標でいかないと勝てないと私は思う」

「たしかに……」

「それに、本来の目標を飛び越えて優勝してしまえば、イオも度肝を抜かれて目覚めるかもしれないよ。目標は高いほうがいい、という言葉もあるしね」

 ニーシャの言葉に、ルナは心が揺らぐ。あの時はじめて医務室でイオの姿を見た時は、その怒りからイオのための犯人探しや仇討ちをと考えたりもした。しかしそんなことをイオが望むのか。そんな感情に任せた想いで戦って古竜寮に勝っても、きっと誰も素直に喜べないだろう。勿論、自分も。

 皆で戦った暁光祭だ。バトンを受け取った自分達が皆のために戦い、皆のために勝つ。終わった時に皆が笑っていたほうがいいに決まっている。


 ニーシャの言うように優勝したとて、そう都合よくイオが目覚めるとは限らない。だが、年に一度しかないお祭りだ。邪な気持ちでやるより、気持ちよく終われたほうがきっと後悔しないはずだ。


「……そうだね。ニーシャの言う通り、優勝しよう! 絶対に! 眠ってるイオくんが起きた時、胸を張って"勝った"って言えるように!」

「ふふ。せいぜい努力するよ。足手まといにならないよう」

 おかげで色々と吹っ切れたルナは前向きにやる気を入れ直し、ニーシャと共に張り切って会場へ向かっていくのだった。


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