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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第三章》-王立学園編-
92/100

92.暁光祭、そして第四種目 1

「『寮別代表選抜リレー』は寮毎に学年別で二人ずつ代表を出して順位を競います! ルールは単純! 1人が200メートルを走り、6人で計1200メートルをいち早くゴールした寮順に得点が入るリレーです!

 もちろん魔法の使用も可能で、選手同士の魔法での妨害も可能! 合計『6人x各寮』の24人での大所帯な競技です!」

「個々の足の速さや、妨害を避ける身のこなしが特に重要ですね」

 リオンとキルベルトが次の種目の説明をする中、ルナ達はそれを聞きながらどうするか考えていた。


「私とテティスの予想通り、魔法も妨害もアリみたいだね。やっぱり普通のリレーじゃないみたい。でも、これくらいなら私でもやれる!」

「相性はいいからね。イズの魔法なら。逆にいえばここ以外無さそうだ。出番は」

「言い返したいけど何も言い返せないのが悔しい……戦闘面じゃ役立たずでごめんよ~」

 イズは第三種目のように、魔法での戦いなどが苦手だ。しかしイズの魔法はこと競争においては非常に有利といえた。故にそれを知るメンバーからは否定的な意見は出なかった。


「ですがもう一人は? 二人ずつ選出するんですよね?」

「やはりルナだろう、足の速さなら。私はそもそも論外だ」

「師匠は何をやらせてもクラス一だからな! この程度の種目、造作もないだろう」

「んー? かけっこなら負ける気しないけどー……」

 クラスで一番足が速いのはルナであり、逆に一番足が遅いのはニーシャだ。クリスが信じて疑わないように、二人目はニーシャの言う通りルナが適切といえた。

 しかし――。


「いいや、出るのはクリス。お前だ」

 ルナ達の背後から、クリスの肩に手を乗せながら現れたのはアルバートだった。


「なっ!?」

「あ、先生」

「なぜここに?」

「次の種目からはいよいよ選抜生徒の出番だからな。お前らの意見は汲んでやるが、誰が出るのか決めるのは担当教師である俺だ」

 今までの三種目は学年ごとの種目であり、ここからは毎種目、アルバートが選抜生徒の中から誰が出場するのかさらに選抜するということらしかった。


「納得できません! なぜ俺なのですか! 俺より師匠が出たほうが確実のはずだ!」

「ああ。だろうな。だからお前なんだ」

 当然、ルナを慕っているクリスからは反対的な意見が出る。しかし、アルバートもそれは分かっているようで、考えがあるようだった。

 そこでイズが訊ねる。


「理由があるってことですか?」

「ああ。暁光祭のルールにあってな。選抜生徒は一人2回までしか種目に出れない」

「つまり、アイギスさんの出番はここじゃない2箇所にある……と」

「理解が早いな。そういうことだ」

「……んー?」

 ルナだけはきょとんとしていたが、その言葉でそこにいた全員は理解した。それと同時に、この種目の他にあと2つの種目がある、ということも判明した。

 種目の数や内容などは言ってはならないルールらしいが、うっかりなのか、わざとなのか……。


「……」

「アイギスの出番はまだってだけだ。なんでお前がそんなに慕ってるのか知らねぇが、気合入れてお前の()()の役に立ってこい」

「やむを得まい! 騎士として、課された役目は然と果たそう」

 そうしてアルバートに言いくるめられるようにクリスがやる気になったところで、第四種目はイズとクリスが出ることになった。


_


 例に漏れず、シャノンの手によって形成されたフィールドに、出場する各寮の生徒達は集まっていた。

 第四種目は200メートル一周のコースを6人でバトンタッチしていき、最後の1人がゴールした順位を競う競技だ。1位の寮は50点とかなりの点数を貰えるため、現在連敗続きでビリの精霊寮はここらでそろそろ順位を上げていきたいところだ。


「ところで、アルバート先生はなぜシュヴァリエさんを指名したのでしょうか? アイギスさんを出さないのは戦力温存のためとはいえ、魔法が使えないシュヴァリエさんよりも、私のほうが良かったのでは……」

 足が遅いニーシャや戦力温存のルナはともかく、魔法などでの妨害が許可されている本種目において、魔法が使えない……というより一切使わない……剣一筋のクリスよりも、最上級魔法などを会得している自分のほうが適任だったのでは、とテティスは考えていた。


「この種目は捨てか、イズや先輩に託したということかな。先生は。脳まで筋肉でできていそうな彼が活躍出来るとは思えない」

「ニーシャってクリスくんには凄く辛口だね……。でもきっと大丈夫! クリスくんは二人が思ってる以上に凄い人だよ!」

 どこか信用しきれていないテティスやニーシャと違い、ルナはイズとクリス、そして先生の采配を信じていた。

 それは持ち前の直感が告げていることもあったが、ルナ自身、イズやクリスとは暁光祭前に特訓をしたのだ。その実力は知っているつもりだった。

 だが、魔法が使えないクリスに不利な種目であることは間違いない。それをどう切り抜けるのか。それはクリス本人次第である――。


_


「君らが1年生の選抜生徒か?」

「如何にも。シュヴァリエ家が長男、クリスだ!」

「えと、イズです」

 第四種目の準備時間。精霊寮の制服を着た、背の高い生徒達がやってきて、クリス達に声を掛けてくる。恐らく3年生であろう。


「シュヴァリエ家ってたしか……伯爵家じゃないか! そんなエリートが精霊寮にいるとは思わなかったよ。今年の1年は凄いって聞いてたけど……頼もしいな」

「情けない話、俺達上級生は今まで良いとこなしだからな。選抜試験を突破した者として、活躍したい。クロスさんにも言われてるしな。一緒に頑張ろうぜ」

「クリスがエリートとは思えないし、私も自信ないですけどね~……」

 イズ達が精霊寮の上級生らと話しているように、他の寮も同じように自寮生徒同士で作戦会議をしていた。


「見ろよ、あの何の覇気もない弱そうな連中」

「伯爵家とか言ってたぜ?」

「え~見えな~い!」


くすくすくす……


 ふと周囲からの視線と聞こえるようなひそひそ話が耳に届く。

 そちらを見ると、古竜寮の生徒達だった。


「む?」

「うわ、嫌な感じ……」

「……すまん。俺達が今まで結果も残せず不甲斐ないせいで……」

 3年の先輩が申し訳無さそうにイズに謝るが、先輩は何も悪くはない。悪いのは嫌味ったらしく陰口を叩く貴族達である。

 しかしそれに反抗しようものなら痛い目を見るのは力のない精霊寮。故に先輩達はこうして今まで居た堪れないポジションにいたのだが……。


「なんだ貴様ら? 貴族ならば面と向かって話しかけてこい。腰抜け共が」

「はっ……はぁ!?」


「大体、親の後光を受けているだけというのに、まるで玉座にふんぞり返ったような態度なのは何故だ? 自分が偉いとでも思っているのか? 勘違いするな、偉いのはお前ではなくお前の先祖だ」

「あぁ!?」

 まさかのクリスからの超辛口のダメ出し。自分が圧倒的地位にいると信じて疑わない古竜寮の生徒は、反撃を受けるとは思ってもみなかったようで意表を突かれていた。


「「「「ブフッ!」」」」

 その後ろでイズも含めた精霊寮の先輩達は小さく吹き出しながらも必死に笑いをこらえていた。

 つい、『よくやった』だとか、『ナイス』だとかを言ってしまわないように……。


くすくす……


 すると横耳で聞いていたのか、魔狼寮や聖獣寮からも小さな笑い声が聞こえてくる。

 それに気付いた古竜の生徒達は顔を真っ赤にしながらクリスに歩み寄る。


「調子に乗りやがって1年が!」

「ふざけたことを抜かしてんじゃ……ッ!」


「そろそろ準備もできた頃でしょうか! 間もなく第四種目を開始しますので、順番が決まった寮は1番の方から位置について並んでください! 枠順は現在の得点順に内側でお願いします!」

 古竜の上級生がクリスの胸ぐらを掴んだ辺りで、タイミングよくリオンが種目の開始が近いことを告げる。


「だそうだ。騎士ならば、正々堂々試合で決着をつけるべきということだ。聡明な貴族ならば理解出来るはずだが?」

「……チッ。いちいち癇に障る1年だな……!」

「運に救われたな下民が! あと俺は騎士じゃねーよ!」

 真顔で告げるクリスに、ピクピクと青筋を立てつつも渋々引き下がる古竜生徒達。流石の彼らも試合開始前に問題を起こせば不利になることぐらいは理解しているようである。

 そして先輩から開放されたクリスの元に、後ろで内心ヒヤヒヤしながら見ていたイズ達がやってくる。


「クリスってばちょっとぶっちゃけすぎてたけど、なんかスカッとしたよ!」

「何やらかしてんだ! ……と言いたいとこだが、正直よく言った!」

「今年の1年は凄いってクロスさんの言葉……まさかそういう意味か?」

「……? 俺はただ思ったことを言っただけだが……」

 皆から褒められ背中をバシバシと叩かれるクリスだったが、自覚のないクリスはただ不思議そうな顔をしているだけだった。

 そうして話は次に、走る順番へと変わっていく。


「お前たちが何を言っているのかよくわからんが、ともかく俺は1番手で行かせてもらおう。啖呵を切ったのは俺だ。先陣を切るのも俺が適任だろう」

「分かった、異議はない。なら2番手、3番手は2年が、4番手5番手は俺とこいつにまかせてほしい」

「うんうん、なるほど~……って私がアンカー!? なんでさっ!」

 先輩がトントン拍子で決めるので思わず納得しかけたが、途中で気付いたイズが素早く指摘する。


「すまん、正直俺達じゃアンカーは務まりそうにない」

「クロスさんの言葉を信じて、お前たち1年坊の力を信じることにした。てか信じさせてくれ!」

「大きな差は作らず、必ず君に繋げるから!」

「えー……私も自信ないって言ってるんだけどなぁ。…………まー、わかりました。それだけ言われたらやれるだけのことはやってみます!」

 先輩達の押しが強く、渋々引き受けるイズ。正直なところ自信はないが、これだけ期待してくれているのだ。応えてあげたい。それに、自分も精霊寮の役に立ちたいと思っていたところだ。第三種目では何も出来ていなかったので。


「ちゃんとリードをするなり距離を縮めるなりして繋げてくださいね! 負けても恨まないでくださいね!!」

「任せてくれ!」

「善処する!」

 斯くして、精霊寮の順番はクリスが1番、2年が2、3番、3年が4、5番、イズがアンカーという形で落ち着いた。

 話を盗み聞きしていたのか、先ほどの古竜寮の生徒達は、『俺が1番に走る』『いや俺が!』『私!!』などと、争っていたが。よほどクリスに腹が立っているのだろう……。


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