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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第三章》-王立学園編-
79/100

79.ルナ、先生になる!?

「「「「アイギスーッ!!!」」」」

「「「「ルナちゃーんっ!!!」」」」


「「「「俺たちを鍛えてくれ!!」」」」

「「「「お願い! 魔法とかおしえて!」」」」


「なんでこうなったの……」

 試験の翌日、いつものように自習となった授業中。校庭に集まっていた精霊寮の生徒達はワラワラとルナを取り囲んで盛り上がっていた。


「俺、試験でお前の戦いを見たんだ! すげえ迫力で、男の俺なんかよりずっと豪快でよ!」

「あたしも! 逃げ疲れてヘトヘトだったところでルナちゃんが処刑人と戦ってるのを偶然見て……」

「僕もだ!」

「わたくしもです!」

 どうやら試験中、各地で伸されていた生徒達や、疲労困憊になりながらもゴールを目指していた生徒達は、ルナの戦いが目に入ったらしい。


「いつも授業でめちゃくちゃするからスゲーとは思ってたけど、改めてあんな化け物とやりあえるなんて感動したぜ!」

「みんなあなたの勇敢な戦いっぷりを見て触発されてやる気が出てるのよ!」

 わちゃわちゃと好きに語る生徒達の中で、一人の女子生徒がルナの手を握って笑顔で話す。

 ……まぁ、要はクラスの誰もが敵わなかった処刑人(デスペラード)を何体も倒してしまったルナに、直接教えを請おう……ということであろう。


 実質自習である精霊寮は、授業中各々の好きなように勉強したり訓練しても問題はない。教師であるアルバートがそういう方針にしたのだ。

 そんな彼は前と違って、理由は分からないが暁光祭のためにやる気を出しているらしく、今日は自習にして生徒に任せっきりにしてしまっているが、それはサボっているわけではなく、今頃は生徒達の授業メニューなどを考えているのだろう。

 と言ったところで、クラスメイト達の言いたいことはつまり、ルナに先生の代わりをしてほしいということである。


「いや無理だよっ!? クリスくんに戦い方を教えるって約束したばっかだし、こんな大人数相手に先生みたいに偉そうに講釈垂れたくないよ!?」

「偉そうにって……結構ひどいこというね。フフッ。先生が聞いたらどう思うんだろ?」

「別に講釈垂れる必要もないしね……友達だし。普通に教えてくれれば……」

 ルナの無理だと否定する言葉に女子生徒達からツッコミの声が上がる。


「あ、そうなの? 先生って偉そうに教えるのが義務なのかと思ってた……」


「「「「ないない!」」」」

「あってもそれは一部の性格悪い先生か教師としての威厳を見せるためだよ!」

 とぼけた顔で間抜けなことを言うルナに、女子生徒達は笑って声を揃えて否定する。


「おいお前達! 師匠が困っているではないか! こんな大人数相手に出来るわけなかろう! それに今日は俺に戦い方を教えると約束があるのだ!」

 ルナを取り囲む生徒達の間に割って入るクリスが説得するように諭す。彼にしては珍しく、ただ正論と事実を述べているだけだ。……矢先。


「羨ましかろう!? 俺は試験中、いち早く師匠のセンスに気づき、弟子入りを志願し一番弟子となったのだ! お前たちは横から俺と師匠が訓練しているところでも見ていればいいさ! フハハハハ!!!」

「なんで煽るのクリスくんッ!?」

 気遣いなど一切遠慮のない性格であるクリスは堂々と生徒達に向けて自慢気に笑い飛ばす。

 こうは言っているが、クリス自身に嫌味な気持ちは一切ない。クラスメイトも嫌いというわけでもない。純粋にただ、ルナに弟子として訓練してもらうことが嬉しいだけであった……。

 ……が、彼の性格上嫌味な感じはしないが悔しいのは事実。生徒達も牙を剥く。


「ふざけんなよクリス! 俺らだって戦い方教えてもらいてーんだよ! 暁光祭も近いんだぞ!選抜メンバーは勿論、それ以外の選ばれなかったヤツらだって出る種目があるんだよ!」

「あなただけズルいです! 私も魔法の訓練をしてほしいのに!」

「約束は約束だ。順番は守ってもらおうか!」

 クリスに食って掛かる他生徒達。確かにルナに教えを請ったのはクリスが最初ではあるが……。


「あわわわ……! 喧嘩にはならないでね……?」

 そんなクリスと生徒たちのやり取りをルナは恐る恐る後ろで見ていた。


「急に大人気だねぇルナは! ニーシャも混ざらないの? ルナだったらニーシャにも凄い魔法とか教えてくれるかもよ?」

「……イズ。思っているのかい、本気で? この私が割り込めると。ああいった暑苦しい青春のような友人関係の中に」

「たしかに……愚問だったか~!」

 話の輪の外では、少し後ろでイズとニーシャが野次馬で囲まれて困っているルナを見物しながら話していた。

 そんなイズ達の横には彼女たちと同じで少し後方から様子を眺めていた生徒がいた。


「……はぁ。やれやれ。キリがありませんね」

 背後で一人呟いた水色の髪の少女……テティスは回り込むと、後ろからルナにそっと小さな声で話しかける。


「アイギスさん……」

「あ、テティスちゃん……」

「もし貴女がやりたくなければ、今からする話は無視してもらって構いませんが、こういうのは如何でしょう」

 そう言ってテティスはルナに考えついた案を話し始める。


「戦い方を教えてもらいたい生徒と魔法を教わりたい生徒でグループをまず分けるんです。そうすれば互いに模擬戦のようなことも出来て訓練になります。

 次に、武器や魔法の種類毎にさらにグループを分けます。そして同じグループの生徒同士でアイギスさんの指示通りの訓練を模擬戦をしたり、生徒同士で交互に見合って案を出し合ったりする。そうすればある程度授業らしくまとまった動きが出来るのではないでしょうか?」

「えーっと……ふむふむ。……なるほど! 確かにそれなら普通の授業みたいに出来るね!」

 テティスの出した案はとてもわかり易く、ルナにも負担が比較的少なめなものだった。


「私はどうすればいいの? いちいち一人一人の相手とか……できなくはないけど時間かかるし」

「アイギスさんには訓練している皆さんの付近を定期的にぐるぐると見回ってもらいます。そうすることで通りかかったアイギスさんに生徒が質問を投げかけることも出来ますし、逆にアイギスさんがふと気になった生徒にアドバイスをしてあげることも可能なはずです」

「おおっ! わかった、じゃあそれで行こう! ありがとうテティスちゃん!」

「いえ……私がただ、アイギスさんにもっと魔法を教えてもらいたいというだけですから……」

 照れながら顔を隠すテティスだが、彼女の出した案は素晴らしく効率的でわかりやすかった。この短い時間で考えたにしてはかなり良い案といえた。


「みんなー! 聞いてー!」

 そうしてルナは、今テティスから聞いた通りの説明を、全て同じように集まった生徒達に伝えた。

 結果として反対者は出ず、それで良しとなったため、テティスのおかげで上手くまとまったと言えるだろう。

 精霊寮生も、何も自分だけが強くなりたいなどと思っているわけではないのだ。クラスメイト全員で切磋琢磨出来るのなら、そちらのほうがいい。


 こうして、ルナを教師とした各生徒によってそれぞれ異なる"授業"がその日から行われることとなった。

 一応授業であるため、あまり興味のなさそうだったニーシャやイズなども含め、生徒は全員参加である。クリスやテティスは当然熱心に参加している。


_


「あん? 授業内容を色々考えて来たんだが……アイギスが授業をしてんのか」

 教員室から戻ってきたアルバートは、校庭の一角で各自別々の鍛錬をしている生徒達を見つけ、その中心にいて各生徒を見て回っているルナに気づく。


「確かにアイギスの実力なら、俺が考えたもんよりずっといい授業になるかもな。あいつがそれでいいなら俺は気にしねェが……どれ、様子を見てみるか」

 そう呟いたアルバートは、久しぶりにしっかりと考えた授業内容が書かれた紙を懐に仕舞って、教え子達の元へと向かう。



「えっと、水魔法はこう……頭の中で水をぎゅっと絞るようなイメージをすると威力が高くなるんじゃないかな? 私なりの感覚だけど!」

「わかった、やってみる! ありがとうルナちゃん!」


「光魔法は癒しの力が強いから、攻撃に使うよりも補助の方を磨いたほうが良いってお爺に教わったよ!」

「そういや、今までずっと魔法で攻撃することばかり考えてたかもな。試してみるわ、ありがとな!」


「剣の使い方かぁ……私もまだまだ経験が浅いから教えられるようなことはないかも。でもクリスくんが剣術得意みたいだから、頼んでみて!」


「格闘術? それなら教えられるかも! あっちの子を見ないとだから、あとで相手になるね!」


 ルナは色々な生徒の元を巡り、出来うる限りのアドバイスや、その生徒の相談に適当に見合った生徒を充てたりなど、うまいこと指示を回して授業を成り立たせていた。


「ようアイギス、そのままこの学園の教師でも目指してみたらどうだ?」

「あっ先生! ごめんなさい、勝手に先生の真似事みたいなこと……」

 他の生徒の所へ向かう途中、アルバートに声を掛けられたルナは咄嗟につい謝ってしまう。

 皆から頼まれたとはいえ、精霊寮の教師はアルバートだ。自習なうえにアルバートがそう決めたため問題はないのだが、先生の立場を奪うようなことは、ルナにとっては気まずく感じた。


「別に構いやしねェよ。ガキ共も満足そうに取り組んでるしな。ただ、お前は良いのか? 他の生徒に教えるだけじゃお前の訓練にも勉強にもならねェだろ」

「私は大丈夫です! 誰かになにかを教えるって初めてだけど、意外と教える側も面白いし、学ぶことも多いので! 魔法はともかく、戦い方とか武器の使い方はあまり教えられないけど……」

「そうか。なら尚更、教師に向いてるかもな。……一応暁光祭に向けていくつか授業を考えてきたんだが、今のままの方が幾分効率が良さそうだ。せっかくだし暁光祭までの期間、そのまま続けてくれるか?」

 自分の授業よりも楽しそうに取り組んでいる生徒達を見て、アルバートはルナに引き続き教師の代わりを継続するよう頼む。

 アルバートにやる気はあれど、面倒くさがりな性格は変わらぬようで、ルナに立場を代わられても特に気にしていないようであった。むしろ生徒達がそう望むのであれば、そちらのほうが効率的だと判断したらしい。


「はいっ! まっかせてください! じゃあさっき呼ばれてた子がいるので、これで!」

 ルナは二つ返事で嬉しそうに了承し、再び生徒達の様子を見に、ぱたぱたと走っていった。


「アイギスが教師か……それも面白ェな。提案したのは誰だか知らんがナイスだ。試験でのあいつを見て、俺もあいつの中に輝く何かを見た……。そんなアイギスに鍛えられたガキ共が暁光祭でどうなることか……楽しみが一つ増えたな」

 アルバートが暁光祭に向けてやる気を出しているのは、ただ単純に古竜寮(リンドヴルム)……(もとい)、その担当教師であるクウィレムに一泡吹かせてやりたいと思ったからだ。性格的に生徒達に言うことはないかもしれないが。


「ま、何より俺が楽出来るってもんだ! 勝手にやってくれんならそれが一番だわなァ。頼られたら何か手伝ってやるつもりだが……クウィレムの野郎に一発かます為ならな」

 邪悪な笑みを浮かべて一人笑うアルバート。色々と考えはありつつも、実際の本音はただそれだけのようである……。


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