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天才と脳筋は紙一重  作者: たんすちゃん
《第三章》-王立学園編-
78/100

78.選抜試験を終えて!

「時間だ。終わりだな」

 ゴール地点で試験エリアをモニターしていたアルバートが告げる。


「そんな……。それではアイギスさんは……」

「あんなに頑張って俺とクリスのために戦ってくれたのに……」

「師匠……天晴(あっぱれ)でした」

 テティスやイオ、クリスは試験の最後までゴールを目指して足掻いた少女を見て、複雑な気持ちを抱いていた。


「やれやれ。勝ったね、結局。ルナは。どこまで見えないんだ?彼女の底は」

「ルナは情報屋の私でもよくわかんない子だからね! ニーシャの魔法も不思議だけどさ!」

 ルナと仲の良いニーシャとイズはそこまで気負ったような様子はなく、良くも悪くもいつも通りの感じであった。


「じゃあこれで試験は終わりだね! えーっと生徒を移動させてフィールドを閉じてーっと……」

「あの、シャノン先生! 俺を不合格にしてアイギスを代わりに合格にしてくれませんか! このままじゃあいつが報われない!」

 試験を終わらせて切り上げようとしたシャノンに、背後からイオが提案する。

 自分が今ここにいるのはルナのおかげだ。ルナ一人ならもっとずっと前にここにいたはずだ。足を引っ張ったのは間違いなく自分……。

 そう思ったイオは進言したのだ。最初こそ出会わなければ一人でゴール出来ていた可能性もあったが、万が一のこともあった。それを迷うこと無く助ける選択をしたルナには返しきれない恩がある。


「残念だけどイオくん。それは出来ないなあ。ゴールに辿り着いた時点でその子はもう選ばれてる。試験に合格してるんだ。権利の譲渡は認められない」

「そ、そんな! でもあいつは俺のために――!」

「何を勘違いしてんだイオ。シャノンはアイギスに権利の譲渡はできねえ……いや、必要ねえって言ってんだ」

 食い下がろうとするイオを止めるようにアルバートは告げる。


「? それは一体……」

「なるほどな、俺にはわかったぞ!」

 アルバートの言葉の意味がテティスには分からないようだったが、クリスはなぜか理解出来たようであった。


「この試験はゴールしたヤツは問答無用で合格だが、他にも抜け道がある。

 俺がこの試験の説明の時に、"出口は二箇所ある"って言ったの覚えてるか?」

「……そういえば」

「フィールド各地を探索した感じではあの水色のゲート以外のゴールは見つかりませんでしたが……まさか」

 たしかにアルバートは試験が始まる前、()()()()()()出口が二箇所存在し、そこを目指し辿り着くことができれば先着7名までが暁光祭に出場できると言っていた。

 そこまで聞いてテティスは理解したようにハッとする。そしてシャノンが説明を継ぐように続けた。


「この試験、フィールドにはゴールのゲートは一つしかないんだ。ゴール自体は二つあるんだけどね……先輩があえて説明しなかったみたいで、ごめんね?」

「バカか? それ説明しちまったら試験じゃなくなるだろうが。 そう言っといた方がガキ共も必死になるだろってよ」

「誰がバカですか!! 天才S級魔術士ですっ!」

 どうでもいいところにシャノンは食いつくが、未だにアルバートの説明を聞いてもイオだけはピンと来ていないようだった。


「えっと……つまりどういうことですか?」

 イオが訊ねるが、代わりにイズとニーシャが答える。


「要はゴール……っていうか、合格になる手段は二つあったんだよ。一つはゲートをくぐり、ここ、ゴール地点に辿り着くこと。そして……」

「先生の評価……といったところだろうね。二つ目は。先生達はここからエリア各地をモニターし、つけていたんだ、評価を」

「そうそう、流石早々にゴールした子達は理解が早いね! あたしの次の次くらいに天才だね!」

 二人の言うことは正解だったようで、シャノンはイズとニーシャ、そして理解を示したテティスを褒めちぎる。

 そして未だに唖然とした様子のイオはゆっくりと理解し始めた。


「じゃあつまり……」

「アイギスのヤツは合格さ。お前が譲らなくともな」

「!」

 他人を助けようとする思いやりの気持ち。戦うメリットのないデスペラードと戦う勇気。シャノン達が本気で作った処刑人達と渡り合うどころか単独で勝ってみせたその実力。

 ルナはその評価点となる全ての基準を満たしていた。


「良かった……って、最初からわかってたなら言ってくれよ!」

「キミだけさ。ずっと気づいていなかったのは」

「情報屋はそう簡単に情報を明け渡さないんだよ?」

「ふっざけんなーっ!」

 ニーシャとイズに小馬鹿にされたような態度を取られて憤慨するイオ。

 何はともあれ、これで暁光祭選抜試験は終了。暁光祭に出場するメンバーは決まった。


 ゴールしたのは6人。予定の7人より少ないが、5人より後はもしものための補欠なので問題はない。

 先にゴールした無事な者と先生はフィールドを閉じたシャノンの指示で試験フィールドでやられて伸されていた生徒達を起こしに、怪我している者は治療しに向かうのだった。


_

_

_


「なんか良くわからないけど暁光祭に選ばれたらしいです! 補欠だけど!」

「そう。ルナが補欠とかちょっと意味わかんないけど、もっと意味わかんないのは試験の内容よ!」

「そうですわ! あのシャノン先生がそんな無茶苦茶な試験与えるはずないですもの! きっとその精霊寮の先生が悪さしたに違いありませんわ!」

「まぁまぁ……無事選ばれたならそれで良いじゃないですか」

 翌日の放課後。いつものようにルナ、マナ、カトレア、クロエの4人は校庭の一角に集まって互いの近況報告を交わしていた。

 今はちょうどルナが選抜試験で起きたことを話したところである。


「マナちゃんとカトレアはそう言うけど、皆の試験はどんなだったの?」

 ふと気になったルナが訊ねる。


古竜寮(リンドヴルム)の試験はまぁ"クソ"だったわね。クラス内での武器、魔法自由のバトルロワイヤルをさせられたわ。当然、勝ち残ってやったけど♪」

魔狼寮(フェンリル)は先生との1対1をしましたわ! いい経験にはなりましたけど、基準が先生ですから、少々メンツが偏りましたわね……選ばれましたけど」

聖獣寮(ユニコーン)は平和に訓練場を借りて、魔法適性試験の時みたいに全力の一撃を先生に見せることでメンバーを選抜してました! 一応僕も選んでもらえました!」

 どうやらルナだけでなく、マナ達3人も皆暁光祭の選出メンバーに選ばれたようだ。尤も、ルナと違って補欠ではなくちゃんとしたメンバーであるが。

 確かにそれは凄いことではあるが、推薦入学する生徒は毎年非常にいい成績を残しているという。ルナ達も例に漏れず、推薦入学者らしく優秀だったということだろうか。


「古竜は最上級魔法とかばんばん使えちゃうすごい人達ばっかりだし、魔狼はすごい剣技とか武術を使う人がいっぱいで、聖獣も綺麗でかっこいい魔法とか使う人がたくさんいたし……そんな中で選ばれるなんて皆すごいね!」

 貴族であるマナやカトレアは勿論のこと、アルという偉大な師匠を持ったクロエも才能ある貴族が多くいる中で選抜メンバーになったのはルナにとってとてつもなく凄いことに思えた。


「ふん、当然でしょ♪ 私は誰にも負けないぐらい努力してるんだから! 今までも、これからもね」

「伯爵家の娘として、亡くなられたお母様や弟のため、この程度は何の障壁にもなりませんわ!」

「僕は良い師匠を持ったから……僕だけだったらきっと今頃ここにはいないよ」

 三人はそれぞれの夢、目的、想いがあれど、共に肩を並べて歩く冒険者。自信はたっぷりといった様子だった。


「三人とも自信家で憧れちゃうなぁ……。自信だけじゃなくてちゃんと実力も伴ってるし。皆がだんだん遠くなってく感じがするや……」

「「「………」」」

 ルナの自嘲気味な態度にマナ達は顔を見合わせ、口を揃えて答える。


「「「それはないでしょ」」」

「えっ」

 マナ達にとってルナは強くなる上での目標の一つであり、あまりにも自覚のない発言に肩を竦めて呆れてしまったようであった。

 まぁもう、言うだけ無駄である。


「ていうか……補欠なの私だけっ!?」

 ふと思い出したルナは驚いたような顔で言葉を漏らす。


「まだ出れないと決まったわけじゃないけど……」

「この4人で暁光祭で競い合えたら良いですわね」

「入学前よりずっと強くなってますから! 負けませんよ!」

 学園に入学してから数ヶ月。序盤こそは冒険者業もチームで兼ねて続けていたが、今では時間が合わないことも増え、個々で活動するようになっていた。

 故にお互い実力を見せる機会はなく、今お互いがどれだけ強くなっているか、彼女たちには分からないのだ。それが暁光祭では明らかになる。だから楽しみなのだ。


 すでに出場がほぼ確定している3人は余裕のある様子で、マナの言う通りルナにもまだチャンスはあるが、ルナはなんともいえないもどかしい気持ちになる。


「うー、私も出たいーっ!」

「出れるといいわね。私もそれを祈ってるわ」

 マナに慰めの言葉をかけられつつも、キリが良いところでルナ達はその日の近況報告の会を解散とした。


 暁光祭まで、あと10日。それまでの期間、学園内では各寮がそれぞれの目的のため燃え上がるのであった。


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